ジミーチュウ(JIMMY CHOO)について

2019/01/08

ジミー・チュウの歴史写真5
「魔法の靴」と呼ばれるジミーチュウ(JIMMY CHOO)の靴は、映画やドラマでも取り上げられ、世界中のセレブ達を魅了してきました。「奇跡のフィット感」と絶賛される機能性と、足を滑り込ませるとその瞬間からモチベーションが上がると言われる気品溢れるデザインセンス。そんな「ジミーチュウ(JIMMY CHOO)」のブランドストーリー取り上げてみたいと思います。

至高の靴職人 ジミー・チュウ

ハリウッド・レッドカーペットの常連として知られるブランド「ジミーチュウ(JIMMY CHOO)」ですが、その歴史は意外にも若く創業は1996年のイギリスになります。
マレーシア生まれの靴職人であったジミー・チュウと、英国版「ヴォーグ( VOGUE)」誌の編集者であったタマラ・イヤーダイ(後のタマラ・メロン)の共同創始によりスタートします。

創始者の一人であり、自身の名がブランド名にもなるジミー・チュウは、1954年にマレーシアで生まれました。
父親が靴職人だったこともあり、幼い頃から靴作りを学び影響を受けます。
11歳の時に初めて靴を作った際、「父の指導を受けながら、母にフラットサンダルを作りました。父は完璧なモノが出来上がるまで決して満足してくれませんでした。そんな父がいなければ今のジミー・チュウは存在しえなかった」と後に彼は語っています。
その後、親戚がいるロンドンへ移住し、靴作りに磨きをかけるためロンドン芸術大学ファッション科に入学します。
卒業後に、自身の靴工房をお世辞にも治安が良いとはいえないロンドン・イーストエンドのハックニー地区に構えます。彼は、靴作りに奮闘していましたが、なかなか芽が出ませんでした。そんな折に転機が訪れます。
「靴のロールス・ロイス」と言われたイギリスのシューブランド「マノロ・ブラニク (Manolo Blahnik)」が、英国版「ヴォーグ( VOGUE)」誌に掲載する靴を製作するため、カスタムメイドが出来る靴職人を探していました。そこに白羽の矢が当たったのがジミー・チュウでした。作った靴がヴォーグ誌に掲載されるとクレジットに彼の名が入り、ハックニーの工房にはヴォーグを見た読者が訪れるようになりました。
ちなみにこの頃、後にジミーチュウ(JIMMY CHOO)のクリエイティブ・ディレクターとなる、姪のサンドラ・チョイが工房で仕事を手伝うようになります。やがて、彼の靴は美しさと機能性、履き心地の良さが同時に叶う「魔法の靴」としてイギリスの上流階級の女性を中心に広まり、ファッション誌に特集が掲載されるほど人気を博しました。
そして、運命の時が訪れるのです。
イギリス王室から「ケンジントン宮殿へ足を運んでくれないか?」と連絡が入ります。依頼主はウェールズ公妃ダイアナ。
そう、あのダイアナ妃がジミーにカスタムメイドのシューズを依頼してきたのです。
その後、彼はいくつもの「魔法の靴」をダイアナ妃のために作り上げ、英国王室御用達にまでなりました。
そんなジミーの活躍と実力に注目していた、一人の女性編集者がいました。
それが英国版「ヴォーグ( VOGUE)」誌のタマラ・イヤーダイだったのです。
ジミー・チュウの歴史写真4

ブランド「ジミーチュウ(JIMMY CHOO)」誕生と4度の買収劇

もう一人の創始者であるタマラ・イヤーダイ(結婚後はタマラ・メロン)は、1967年にイギリス・ロンドンで生まれました。
彼女の父親はトム・イヤーダイといいヴィダル・サスーンの共同創業者で、母親のアン・イヤーダイは元モデルでした。
そんな生まれながらの環境や、幼少期にアメリカ・ビバリーヒルズで暮らした経験から、ファッションに対する美的センスや資質は磨かれていきます。
そして「VOGUE UK(英国版ヴォーグ誌)」で働いていた時に、ジミー・チュウに出会います。
そしてその実力に惚れ込み、職人としての腕は一流であるが経営はさっぱりであったジミーに代わり、商業的に成功させるため、1996年に共同創始でブランド「ジミーチュウ(JIMMY CHOO)」を立ち上げることになります。
創業当時は、タマラの父であり出資者のトム・イヤーダイと、ジミーが株式を半分ずつ保有し、トムはCEO兼取締役会長、タマラが代表取締役社長に、ジミーの姪であるサンドラ・チョイがクリエイティブ・ディレクターとしてスタートしました。

トムやタマラが経営の舵取りをはじめたことで、驚異的なスピードでブランド「ジミーチュウ(JIMMY CHOO)」は成長していきますが、次第にジミーとトム・タマラ親子の間で経営方針の違いから確執が生じていきます。
ジミーはもともと靴職人でありオートクチュール(高級仕立品)で、トム・タマラ親子はプレタポルテ(高級既製品)で事業展開を考えており、結果的にジミーが2001年にブランドを去り、その保有株50%を他社に売却することで落ち着きます。その間に挟まれたジミーの姪サンドラ・チョイはそのままジミーチュウ(JIMMY CHOO)のクリエイティブ・ディレクターとして残ります。
ちなみにその後ジミーは、オートクチュールのシューズ作りを続け、2009年には世界唯一の芸術専科の寄宿制インターナショナルスクール「ロンドン国際芸術高校 」の設立に携わりますが、自身の名がブランド名であるジミーチュウ(JIMMY CHOO)には以降関わりがなくなります。

その後、2度目の買収は、最高経営者のトムが亡くなったことで、新たな経営陣達との間に遺産や保有株の問題で売却が行われました。3度目は、タマラと1度目の買収時の来た経営者との経営方針の確執から、その打開策として再度売却に至ります。4度目は、ドイツの会社が買収し、その際に共同創始者であるタマラがブランドを去ることが、大きな話題になりました。また、サンドラについてはジミーチュウ(JIMMY CHOO)の経営陣に現在も名を連ねており、ブランドの顔として牽引しています。

近年では数々の有名ブランドが、買収されてオーナーが代わることは珍しい時代ではなくなりました。
ブランドとしてのジミーチュウ(JIMMY CHOO)もまた、度重なる新しい血の入れ替えとともに成長し、世界的ラグジュアリーブランドとしての地位を確立していったのです
ジミー・チュウの歴史写真3

世界中のセレブリティ達が愛するブランドへ

社交界でのドレスコーディネイトで、足元を美しく見せるピンヒールが女性に好まれますが、履き心地が悪く痛みを伴うものが多く、ジミーチュウ(JIMMY CHOO)のエレガントなデザインと、抜群のフィット感や歩きやすさを兼ね備えたピンヒールが登場したことで、瞬く間に世界中のセレブリティ達を虜にしました。
その愛用者には、ミシェル・オバマ夫人、アンジェリーナ・ジョリー、ニコール・キッドマン、ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、ジェシカ・アルバなど錚々たる人たちが名を連ねます。
英国王室のキャサリン妃がシャーロット王女を出産後、ジミー チュウのヒールを履いてメディアの前に現れたことも話題になりました。
またPR戦略にも長けており、アカデミー賞授賞式においては、大量に靴のサンプルを会場に持参し、女優達のドレスに合わせてその場で色やサイズを仕上げるパフォーマンスにより、授賞式で何人もの女優がジミーチュウ(JIMMY CHOO)の靴を履いてレッドカーペットを歩くというPR効果により、世界中で知名度が広がり人気が爆発します
ジミー・チュウの歴史写真1
さらに、ファッション誌の世界を舞台にした映画「プラダを着た悪魔」や、社会現象を巻き起こしたドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」にも登場し、人気は不動のものになります。
定番ラインとしては、「Studs(スタッズ)」、「CHOO 24:7(チュウ トゥエンティーフォーセブン)」「CHOO.O8°(チュウ・ポイント・オー・エイト)」、「Trainers(トレイナーズ)」などが人気ラインとして定着します。
ブランドの象徴でもある「Studs(スタッズ)」は、そもそも金属の飾り鋲のことで、ジミーチュウ(JIMMY CHOO)のラインでは星型の鋲で施された「スタースタッズ」が有名で、靴はもちろんのことバッグや財布までありとあらゆるコレクションに使われています。
「CHOO 24:7(チュウ トゥエンティーフォーセブン)」は、「24時間1週間(7日間)・どんな季節でも・どんな場所でも・どんなシーンでも対応できる」というコンセプトのコレクションで、場所やコーディネイトを選ばないワードローブとして人気が高いです。
「CHOO.O8°(チュウ ポイント・オー・エイト)」は、サンドラ・チョイが自身の体験として、忙しい中でも歩きやすく機能性に優れ、女性らしい美しい靴を履きたいという願望から誕生しました。名前の由来は、ロンドン市内にあるジミーチュウ(JIMMY CHOO)の施設の緯度から名付けられたそうです。
「Trainers(トレイナーズ)」は、名前の通りジミーチュウ(JIMMY CHOO)版の高級スニーカーになります。ハイカットとローカットのモデルがあり、シリーズの名前には「TOKYO」「MIAMI」など地名が使われています。

また、「メイド・トゥ・オーダー」という新しいサービスも始め、自分好みのシューズスタイル(形・色・柄・素材など)を既存の型からカスタムオーダーできることが特徴で、パンプスの『ANOUK(アヌーク)』、サンダルの「LANCE(ランス)」などの人気の型から選ぶことができます。
ジミー・チュウの歴史写真2
現在ジミーチュウ(JIMMY CHOO)は、メンズラインも始め、バッグや財布、サングラスや化粧品・香水などのアクセサリーや小物類にも商品展開し、ラグジュアリーブランドとして進化し続けています。
大英帝国勲章や数多くのファッション賞を受賞し、さらなる高みを目指すジミーチュウ(JIMMY CHOO)は、今後も目が離せません。