この世のダイヤを支配したデビアス(DEBEERS)
2017/07/06
手軽に持ち運べる資産ともいわれるダイヤモンド。
実はこのダイヤモンド。
ある一つの会社によってその価値観を支配されているのはご存知でしょうか。
「アフリカのナポレオン」
時は1866年。南アフリカ大陸において、ダイヤモンドの大鉱脈が発見されました。
それまではインド、ブラジルにおいてダイヤが発掘されておりましたが1860年代に入るとすっかり枯渇。
倒産、縮小に追い詰められていたダイヤ産業にとって南アフリカ大陸での大発見は一筋の光でした。
しかし、ここで予想外の事態に。
大鉱脈から発掘されるダイヤモンドの量はあまりに多く、その結果としてダイヤの価値が低くなってしまう恐れが出てきてしまいました。
せっかくダイヤ枯渇から脱出したにも関わらず、これでは元も子もありませんね。
その傾向にいち早く気づいたのが、セシル・ローズという男性でした。
「アフリカのナポレオン」と呼ばれ、学校の教科書には巨大な彼がアフリカ大陸を跨ぐ風刺画が掲載されております。
1881年、セシル・ローズはあの世紀の大富豪と呼ばれるロスチャイルド家から資金援助を受けデビアス社を設立。
多額の資金を得たセシル・ローズは数々のダイヤ鉱山を買収していきます。
ロスチャイルド家(影には大英帝国)の為にと、セシル・ローズはダイヤに留まらず南アフリカ大陸における鉄道、電信、新聞まで自分の支配下に納めてしまいました。
その後政界にも進出し会社の経営者から首相にまで登り詰めたセシル・ローズでしたが1902年にこの世を去ってしまいます。
会社のトップであった彼のいないデビアス社に更なる追い打ちが迫ります。
新たに大鉱山が発見され、続けて各地で次々とダイヤ産地が見つかりました。
世界のダイヤ9割を支配下に置いていたデビアス社でしたが新たな鉱山に追いつかず、遂には4割にまで落ちてしまったのです。
独創的であり厳密な支配
デビアス社が苦戦していた1917年、別の場所では金生産を生業とするアングロアメリカン社が設立。
現在でも世界最大と言われる大企業を創ったのがドイツ系ユダヤ人のオッペンハイマーでした。
アングロアメリカン社は南西アフリカで漂砂鉱床の鉱山を入手すると、弱まっていたデビアス社の筆頭株主となり、オッペンハイマーはデビアス社の会長に就任します。
会長となった彼は世界のダイヤを掌握しようと様々な案を打ち出しました。
一つ目はダイヤモンド生産組合を作り生産調整を行う。
二つ目はダイヤを全て買い占め、それを流通させるべくダイヤモンド貿易会社を設立。
3つ目は流通されたダイヤを販売する中央販売機構を設立。
つまり、発掘→流通→販売といった流れをデビアス社が一括することになったんですね。
特に三つ目は、生産量や実績によって価格を決めるといった所謂「相場」を作り上げ、一つの会社が世界のダイヤ相場を独占してしまいました。
ここで一つ中央販売機構で具体的にはどのように行われているのかご紹介します。
デビアス社が開いたダイヤ販売会に世界からダイヤを買う為に販売会社が集まります。
販売会が始まると各販売会社に一つの袋が手渡されます。
中にはダイヤがぎっしり詰まっています。
販売会社がダイヤを一つひとつ選ぶことは出来ません。
この場でダイヤを確認することは出来るので皆、自分に渡された袋の中身をチェックします。ここで彼らにある選択権は袋の中身全てを買うか買わないか。
中身を選別して買うのも認められないんですね。
ここで買わないと宣言し、別の袋を選ぶ権利はありますがあまり何度も選び直すと次回からその販売会社はデビアス社から呼ばれなくなってしまうのだそうです。
ちなみに、販売関係の話では「婚約指輪は給料の三ヶ月分」「ダイヤモンドは永遠の輝き」など数々のフレーズはデビアス社によって世界に広まったと言われております。
ダイヤを巡った国との対立
第二次世界大戦後、ユダヤ人は悲願であった自分達の国「イスラエル国家」を建国。
彼らは国の中心収益として選んだのは他ならぬダイヤモンドでした。
始めこそイスラエル国家のダイヤモンド輸出量は約500万ドルでしたが、30年後の1980年にはおよそ14億にまで数字を伸ばしたのです。
この数字の影には世界の資本を牛耳るユダヤ系による力が働いたと言われておりますが、やはり国民であるユダヤ人の確かな知恵があってこその結果でした。
やがて「第二のデビアス」とまで謳われるようになったイスラエル。
この勢いを抑えようと動き出したのが言うまでもないデビアス社。
自分たち以上に大きくなってしまうことを恐れたデビアス社はイスラエル国家に原石割当量の20%の削減を命じますが、イスラエル国家はこれを反発。
デビアス社は一国を相手に対立することに。
結果はデビアス社による国際金融界の圧力によりイスラエル国家のダイヤ産業は衰退していきます。
が、反発した際にイスラエル国家はダイヤを過剰に生産してしまった為、大暴落が引き起こされてしまったのです。
この大暴落はデビアス社によって正されましたが、今度は別の国が立ちはだかります。
アメリカ合衆国がデビアス社のやり方を強く猛抗議。
ダイヤモンドにおいて独占禁止法に触れているとアメリカは自国でのダイヤモンドの販売を禁じました。
これには勝てない戦だと踏んだのか、デビアス社はアメリカに和解金として2億5千万ドルを渡し販売禁止は免れたのでした。
日本円にしておよそ200億円の和解金。
デビアス社がどれだけの大企業なのかをあらわす数字ですね。
ダイヤモンドの価値はデビアスによって作られた
現在、新たな鉱山の発見や他の国々によるデビアス社を通さずにダイヤが流通されており、デビアス社の支配力は縮小しつつあります。
世界には、独占していた者が弱まっていくのに快哉を叫ぶ方も中にはいるかもしれません。
しかし、歴史を遡ってみれば始めに起こったダイヤモンドの過剰生産。
それを調整させたセシル・ローズ。
もし、彼らがいなかったら世界はどうなっていたのでしょうか。
もしかしたら、ダイヤモンドの価値は下がってしまい安価で価値のない石として扱われていたかもしれません。
あるいはダイヤモンドを我先にと争いが起こり、沢山の人が亡くなってしまった歴史の1ページとなってしまっていた可能性も。
仮に他の人間がダイヤを独占したとしてもここまで緻密に支配するのは難しかったのではないでしょうか。
様々な意見があると思いますが、現在ダイヤの価値が維持され、ダイヤこそ至高という価値観が共有され、われわれが楽しむことができるのは、デビアスという会社の最大の功績なのではないでしょうか。
Written by 上田勝太
上田 勝太
ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演