イタリアンレザーのすべて

2018/09/10

世界三大レザーの一つと言われる「イタリアンレザー」。世界の有名なハイブランドたちも、みな揃って取り扱うほどその高い品質は、長い歴史を持つ伝統製法により極められています。その特徴や成り立ち、名門タンナーや代表的ブランドを紹介したいと思います。
グッチ(GUCCI)画像

イタリアンレザーとは

世界三大レザーとして、イギリスの「ブライドルレザー」、アメリカの「コードバン」と並び称されるイタリアの「イタリアンレザー」。ただイタリアで作られている革のことを指すように思いますが、いったい「イタリアンレザー」とはどういうものであるのか説明していきたいと思います。
イタリアで古くから伝わる伝統工芸「イタリアンレザー」は、主にルネッサンス時代の中心地となったフィレンツェが有名なトスカーナ地方を中心に生産された皮革で、「ベジタブルタンニンなめし」というなめし技法やと独自のオイルを使った伝統製法で、主に牛革を用いたものになります。
現在では、トスカーナ地方に多く存在するタンナー(製革業者)の高い水準での品質を担保するために、ベジタブルタンニン100%でなめした事を認定する世界で唯一の機関「イタリア植物タンニンなめし革協会(ベジタブルタンニン協会)」が、国際基準よりも厳しい品質基準を定め、その基準に満たしたものだけを「イタリアンレザー 」として認定しています。

認定基準には以下の3点を遵守することが求めれています。
・定められたベジタブルタンニン(植物タンニン)なめしの製造工程を遵守する
・植物の抽出成分のみを使ってなめす
・主要工程をトスカーナ州内で行う

このような厳しい基準を満たした「イタリアンレザー」は、世界最高水準の品質を保ち、高級革として君臨しています。
フェンディ(FENDI)画像

イタリアンレザーの歴史

皮革の歴史は古く、ベジタブルタンニンによるなめし技法の歴史は、紀元前30世紀頃の古代オリエントまで遡り、紀元前8世紀頃には今のヨーロッパに伝わったと言われていますが、現在まで伝わる「イタリアンレザー」の歴史をたどっていくと、その始まりは14世紀頃に始まったルネサンス時代で、その中心都市であるフィレンツェが発祥だと言われています。当時の中世フィレンツェ共和国では、すでに皮革加工職人組合が結成され、その組合には商権的に多くの権限を与えられ、皮革製造に携わる者たちは経済面においても潤ったと言われています。
またこの当時、書籍の装丁や椅子などのインテリアに使われる金唐革(きんからかわ)と呼ばれる装飾用の革が生まれたり、打印・彩色などの装飾技法も確立され、たくさんの天才的な職人も誕生しました。
そのような中で、イタリアの伝統的な革製法「パケッタ製法」が生まれます。この製法は、植物性のタンニンで時間と手間をかけてなめし、天然オイルをたっぷりと浸透させることによって、柔らかく絶妙な艶感や滑らかさ、経年変化による美しさを再現し、今も伝わる「イタリアンレザー」の代名詞的な製法として受け継がれています。
16世紀になると、同組合はフィレンツェの実質的な支配者であるメディチ家の元で衰退し始め、皮革製造者協会として再編され、18世紀になると、フィレンツェの商工会議所に組み込まれました。
組合から始まったこの団体は、今なお世界的な名声を博している「イタリアンレザー」の歴史を語る上で、フィレンツェをはじめとするトスカーナ地方で、いかに重要な役割を果たしてきたかわかります。
また、職人の街としても知られるフィレンツェでは、職人たちの伝統技術を受け継ぐため、街の教会の一部を改装して、皮革職人の専門学校が19世紀に設立され、今も伝統ある職業訓練校として多くの職人を輩出しています。
フェラガモ(ferragamo)画像

「なめし」と「タンナー」について

前述から出てくる「なめし(鞣し)」ですが、一般的には動物の皮を皮革製品として加工することを指します。動物の皮を剥がしたままですと、固くなったり腐敗してしまうため、叩いたり、揉んだり、乾燥させ皮の繊維を分解し、再びオイルを含ませて皮を柔らかくして耐久性を持たせます。この一連の作業を「なめし(鞣し)」と言い、植物に含まれるタンニン(渋)でなめすことが以前は主流でしたが、多くの作業工程があり手間暇がかかるため、現在では化学薬品でなめす(クロムなめしなど)ことが多くなりました。
そんななか、今も「イタリアンレザー」の製造工程においては、伝統製法であるバケッタ製法はじめとした代表的なめし技法「ベジタブルタンニンなめし」を手間暇かけて行なっています。
トスカーナ地方の「ベジタブルタンニンなめし」は、その土地の土壌や水質から育った天然植物から抽出した他の土地では出せない風合いが出るタンニン(渋)でじっくりとなめす伝統的な技法で、30以上の作業工程を踏んでいるため、化学薬品を使ってなめすものよりも高価になりますが、使い込むほど艶が出て馴染み、型崩れしにくく発色が良いのが特徴です。

そして、そのような作業を行う職人・なめし革業者・皮革製造業者を一般的に「タンナー」と呼びます。
上質で優れた革を作り出すには、タンナーの技術力や歴史や伝統に紐づいた経験が必要になります。
革を作る作業レシピは、タンナーごとに違い、同じ素材を使っていても特徴や質感も変わってくると言われています。
トスカーナ地方、フィレンツェ近郊には、世界的なタンナーが数多く存在し、イタリアの革産業の発展を支えてきました。
そして多くの顧客やハイブランドに支持されるブランド革(銘革)も誕生しています。
ボッテガヴェネタ(bottega veneta)財布画像

代表的な有名タンナーとブランド革(銘革)

バダラッシ・カルロ社
イタリアのトスカーナ州で1967年に創業したタンナーで、イタリア伝統製法の「バケッタ製法」を行うタンナーとして有名です。
バダラッシ・カルロ社の銘革といえばミネルバシリーズの「ミネルバボックス」と「ミネルバリスシオ」になります。
「ミネルバボックス」は、別名「エム・ボックス」とも呼ばれ、「バケッタ製法」で生産されています。シボ(シワ模様)と呼ばれる革表面の模様と柔らかくしっとりとした手触りが特徴で、新品は少しマットな風合いですが、使い込んでいくごとに艶が出て経年変化を楽しめる名品です。
「ミネルバリスシオ」は、こちらも前述の「ミネルバボックス」と同様「バケッタ製法」で生産されています。リスシオとはイタリア語で滑らかやスムースといった意があり、その名の通りたっぷりと油を染み込ませた革表面の風合いは、滑らかで手に吸いつく手触りです。また、擦り合わせると「キュッ」と鳴くことから別名「鳴く革」と呼ばれています。

ワルピエ社
数多くあるトスカーナ地方のタンナーの中で、比較的小規模の老舗タンナーですが、世界的に有名な銘革「ブッテーロ」を生産しているイタリアを代表するタンナーです。
「ブッテーロ」は、雄牛一頭から採れるショルダー(肩)の部分を原皮とし、ベジタブルタンニンでなめしたタンニンレザーで、希少性が高い高級皮革です。革の表面にトラと呼ばれる首まわりのシワが多く見られる部位が残っており、一つ一つに個性的な表情が出るのが特徴です。また、花や樹の皮などの天然植物を染料として使い、艶やかな発色や光沢が魅力的で、使い込むにつれて光沢が増します。

その他のタンナーにおいても、イタリアンレザーの銘革は多く存在します。フランスの高級ブランド「ベルルッティ(Berluti)」のみで独占的に使用を許された門外不出の高級皮革「ヴェネチアレザー」などが有名です。
ベルルッティ(berluti)財布画像

イタリアンレザーにこだわるブランドたち

世界的に有名なブランドのバッグや財布、革靴などの革製品の多くに「イタリアンレザー」が採用されています。なかにはトスカーナ地方の業者と業務提携をしている、地元イタリアをはじめフランス・アメリカなどのブランドも多くあります。

そこで「イタリアンレザー」を愛する代表的ブランドを挙げてみます。
まずは、「イタリアンレザー」が花開いたフィレンツェにて1921年に創業した「グッチ(GUCCI)」です。創業者であるグッチオ・グッチは、皮革製品への強いこだわりと、品質の高さ、革新的で洗練されたデザインで瞬く間に人気のお店に成長させました。最近では、定番の「バンブー」はじめ、カラフルなイタリアンレザー を使ったコレクションも発表しています。
次に、毛皮のコートで有名になった「フェンディ(FENDI)」です。1925年にローマで創業し、現在は代表的なラインである「トゥージュール」や「バイザウェイ」「ピーカブー」などのバッグが人気で、カラフルな素材を用いたものも登場しています。
そして、レザー製品に定評があるボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)です。1966年にイタリアの美しい町並みで知られるヴィチェンツァにて創業。ブランド多くは創業者の名前から付けられていますが、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)は、「ヴィチェンツァの工房」という意味のブランド名で、伝統技術と手作業にこだわった職人気質が名前から伺えます。そんなボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)の代名詞といえば「イントレチャート」というイタリアの伝統的な革工芸技法です。卓越した技術で、革を短冊状に切って縦横に編みこみ作られたメッシュ地の財布やバッグ等は、耐久性も高く「イタリアンレザー」の持ち味を最大限に発揮しています。
最後に、前述で取り上げた、門外不出の「イタリアンレザー」である「ヴェネチアレザー」を独占的に使用を許されたベルルッティ(Berluti)は、1895年にフランス・パリで創業のブランドです。フランスのブランドではありますが、創業者であるアレッサンドロ・ベルルッティはイタリア人であり、のちに4代目として活躍するオルガ・ベルルッティも幼少期をイタリアで過ごしています。ベルルッティ(Berluti)といえば、独自のなめし技術により、しなやかさと密着感などの伸縮性に優れ、手染めによる加工で発色性にも優れた「ヴェネチアレザー」、その「ヴェネチアレザー」に施す特殊な染色技法である「パティーヌ」、革の表面に文字のようなデザインをする加工技術「カリグラフィ」が有名です。そんなこだわりと芸術性に優れた「イタリアンレザー」で作られた革製品は世界のセレブたちを魅了しています。

そのほかにも「イタリアンレザー」に対しこだわりがうかがえるブランドとして「プラダ(PRADA)」「ミュウミュウ(miu miu)」「フェラガモ(Ferragamo)」「イル・ビゾンテ(IL BISONTE)」などが挙げられます。
ぜひ一度は本物の「イタリアンレザー」を味わってみたいものです。
プラダ(PRADA)バッグ画像

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演
ゴールドプラザのコラム・ブログ・SNSにて情報を発信中

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