財布の歴史について

2018/04/11

財布の歴史-ルイヴィトンモノグラム財布画像
財布の歴史は、お金の歴史と密接な繋がりがあります。
お金を入れて持ち運ぶツールとして、私たちの日常生活になくてはならないものです。
そんな財布の成り立ちをお話します。

世界の財布ヒストリー

改めて財布とは、紙幣や硬貨などを携行するために用いるものであり、紙幣を入れるものですと「紙入れ」「札入れ」や「ウォレット」、硬貨ですと「小銭入れ」や「コインケース」などと呼ばれています。

世界における財布の始まりは、硬貨の歴史から始まります。
諸説ありますが、通貨を入れる財布としての記録ですと、その歴史は紀元前まで遡り、紀元前670年頃のアナトリア半島 (現在のトルコ付近)を中心に栄えた国家であるリュディアが、世界最古の硬貨(エレクトロン貨)を発行したことから、人々はその硬貨を革製の袋に入れて使っていたと言われています。

その後、時代は流れ17世紀になると、ヨーロッパ中心に紙幣の流通がはじまりました。当初は銀行が約束手形を発行していたものが、のちに交換手形として広く流通しはじめたものでしたが、国家の承認した紙幣が世の中に出回ることで、紙幣を入れるケースが重宝されはじめました。
ケースの素材自体は、貨幣時代と変わらず牛革や馬革をなめしたものが主流でしたが、形については、紙幣をそのまま折らずに入れられるタイプ(長財布)の原型も、この時代にできたと言われています。

そして、世界で流通経済がさらに発展すると、貨幣(紙幣や硬貨)中心の経済になり、大切なお金を持ち歩く財布は、人々にとって欠かせないものとなります。また、用途に合わせたものや縁起を担いだものなど、財布のデザインも多様化していきました。

用途に合わせたデザインでは、「ギャルソンウォレット」ように、ギャルソン(フランスでいう男性ウェイター)が小銭を出しやすいように口が広がるデザインの財布や、縁起を担いだデザインですと、「馬の蹄鉄の形は幸せを運ぶ」と言われ、馬蹄型にデザインされたコインケースなどがあります。両者共に現在まで引き継がれているデザインです。
財布の歴史-シャネル小銭入れ画像

日本の財布ヒストリー

日本では、平安時代までは物品どうしを交換する経済が主流でしたが、平安末期になると平家を始めとする時の権力者たちが中国等の諸外国と貿易を始めたことで、渡来銭(硬貨)が日本国内でも使われるようになりました。室町時代になると、渡来銭だけでは不足していたことから、自国内でも硬貨が鋳造されるようになります。この頃の硬貨は、真ん中に穴が空いており、人々はその穴に紐を通して束ねて持ち歩いていました。

江戸時代初期までは、硬貨を紐で銭を束ねていた人が多かったのですが、治安が安定するとお店も増え、硬貨の出し入れが頻繁になり、紐で束ねるスタイルは不便なため、いっぺんに出し入れできる「巾着(きんちゃく)」へと変わっていきました。倹約や節約を意味する言葉で、「財布の紐を締める」という言葉がありますが、この巾着を締めることが由来と言われています。
財布の歴史-ボッテガ小銭入れ画像
そして、江戸時代中期になり、幕藩体制が確立すると、自領内で流通する貨幣として各藩は「藩札(紙幣)」を発行し、紙幣を収納できる布製の財布、いわゆる「紙入れ」が登場します。この紙入れは、元来の「懐紙入れ」(懐紙という、現代でいうメモ用紙、ハンカチ、ちり紙などの用途で使われていた和紙を入れるもの)をベースに作られたと言われています。そして、お洒落にうるさい江戸っ子を中心に、紙入れ用のお洒落な留め金の細工なども出はじめ、デザイン性も豊かになっていきました。
また、小判を持ち歩くためのマチがある横長の三つ折りの財布なども、この頃に誕生しました。

明治時代に入り、欧米文化の影響を受け始めると、財布のデザインも大きく変化していきました。その代表が「がま口」です。いまでは和財布の代表とも言われるがま口ですが、実は明治初期に、ヨーロッパの貴婦人たちが舞踏会などに携えていたバッグなどの金具からヒントを得たもので、明治時代には日本で大流行しました。また、「がま口」の名前の由来は、一説にはガマガエルの大きく開く口に似ているからと言われています。いずれにせよ、ガマガエルは金運を呼ぶといわれることから日本人には親しまれてきました。
財布の歴史-プラダ小銭入れ画像

現代の財布とブランドの財布

ここまで財布の成り立ちについては、世界でも日本でも、その時代の流通貨幣によりそのデザインや用途が変わってくることを述べましたが、近年においては、クレジットカードの普及や服装の多様化により、個々の好みや用途に応じた財布へと進化しています。例えば、デザインや形においては、ポケットに収まるミニサイズの財布や、複数のカードを収納できる二つ折りの財布など。素材や機能においては、クロコダイルなどの革製品やナイロン製のもの、ファスナーやマジックテープを使ったものなど多種多様です。
財布の歴史-ロエベ財布画像
また、このような財布の進化の一因には、ファッションブランドの台頭が挙げられます。
世界的なブランドの財布の一例を挙げますと、
「LV」のモノグラムが有名で、耐久性に優れた素材を使用し、落ち着いた色合いで、服装やシーンを選ばないルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)の財布。
「柔らかく肌触りが良く、持つ者の体にフィットする感覚を与えてくれる」と言われる上質な革を使った財布が特徴で、デザインはシンプルでシックなものが多く男性に人気がある、スペイン王室の御用達のブランドのロエベ(Loewe)。
素材に特徴があり、皮の型押しの模様がキャビアに似ている理由から名付けられた「キャビアスキン」という人気ラインのシャネル(Chanel)の財布。
高級馬具を扱っていたことから、最高級の革皮使用し、その技術の高さで有名なエルメス(Hermès)の中でも、定番の財布として愛され続けている「ベアン(bearn)」。
野球のグラブのように丈夫でしなやかな美しいレザーを再現した「グラブタンレザー 」や「シグネチャー・コレクション」で人気の財布を輩出しているコーチ(Coach)。
ダブルGのモノグラムのデザインで、男女・年齢を問わず世界中で愛される、グッチ(Gucci)の財布。
また逆に、多くのデザインに、さり気なくロゴが施されているカルティエ(Cartier)の財布。
など魅力的なラインナップがあります。

そして日本のブランドにおいても、
ポーター(PORTER)、コム・デ・ギャルソン(COMME des GARÇONS)、サマンサタバサ(Samantha Thavasa)などの財布のラインナップが人気を博しております。

私たちにとって日常の色々なシーンで登場する財布というアイテムは、ただお金を携行するためのものだけでなく、そのファンション性や機能、風合いや素材の質感など、持っている楽しみを味わう嗜好性も持ち合わせています。
財布の歴史-エルメス財布画像

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演
ゴールドプラザのコラム・ブログ・SNSにて情報を発信中