「グランサンク」とは
2018/01/05
ティファニー、カルティエなどの世界5大ジュエラーに対し、パリの老舗宝飾で形成される「グランサンク」をご存知でしょうか?
今回はこの「グランサンク」についてお話いたします。
パリ・ヴァンドーム広場の偉大なる高級宝飾店「グランサンク」
パリの観光地として有名なヴァンドーム広場。
1900年代中頃、そのヴァンドーム広場界隈の高級宝飾店で結成された「フランス高級宝飾店協会」。
その協会員である5つのジュエラーの総称のことを、「グランサンク」や「パリ5大宝飾店」と呼んでいます。
フランス語の「グランサンク(Les Grand Cinq)」を直訳すると、
グラン(Grand) 偉大な、素晴らしい
サンク(Cinq) 5、五つ
つまり、「ビッグファイブ・偉大な5つ」のような意味になります。
その結成された偉大なる高級宝飾店を創業順に挙げますと、
メレリオ・ディ・メレー(Mellerio dits Meller)1613年
ショーメ(CHAUMET)1780年
モーブッサン(MAUBOUSSIN)1827年
ブシュロン(BOUCHERON)1858年
ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)1906年
になります。
「フランス高級宝飾店協会」は1900年代中頃の結成から数十年間は、老舗ジュエラー同士が新作発表会を開催するなど合同で活動をしてきましたが、現在ではメレリオ・ディ・メレーをのぞく4ブランドの創業一族が離れてしまったことから、活動はほぼ行われなくなりました。
そのため、「グランサンク」という言葉自体が本国フランスでは使われなくなりました。
しかし「グランサンク」という呼称は、遠い日本において「パリ5大高級ジュエラー」を差す言葉として使われています。
ちなみに、グランサンクのあるパリのヴァンドーム広場は上から見ると、縦長の八角形に見えます。
かつて、ココ・シャネルはこの広場を眺め、シャネル(CHANEL)を代表するラグジュアリーウォッチ「プルミエール」のデザインモチーフにしたと言われています。
パリの5大名門老舗ジュエラー
それでは、「グランサンク」を形成した老舗ジュエラーについてご説明します。
メレリオ・ディ・メレー(Mellerio dits Meller)
1613年創業以来400年以上の歴史を誇る老舗ジュエラーで、「フランス高級宝飾店協会」の中でも最も歴史があり、かのマリー・アントワネットをはじめとする多くの貴族たちに愛されてきました。
フランス王室の紋章であるユリの花をモチーフにデザインされたリング「エモーション」や、ルイ9世が王妃に贈った愛のメッセージを刻印したリング「アネル」などのコレクションが有名です。
また、「メレリオカット」と呼ばれる独自のダイヤモンドカッティング技法の開発や、全仏オープンの勝者に贈られる「ムスクテール・カップ(銃士の杯)」、サッカー欧州年間最優秀選手に贈られる「ゴールデンボール(バロンドール)」のデザインや制作にも携わっています。
ショーメ(CHAUMET)
1780年創業のショーメは、ナポレオンの御用達ジュエラーに始まり、現在ではヨーロッパ各国の王室を顧客に持ち王族のティアラなども手がけています。
また、ヴァンドーム広場にある本店には、1927年にフランスで歴史的建造物に指定された「ル・グラン・サロン」という今でいうVIPルームがあります。
ここは音楽家フレデリック・ショパンが晩年過ごした場所として有名です。
花や植物などのモチーフのハイジュエリーが得意であり、パリの香りが漂う現代的なデザインの「リアン ドゥ ショーメ」「トルサード」「プリュム」「ビー マイ ラブ」などのコレクションは人気が高いです。
日本では近年店舗も増えてきていて、認知度も上がってきています。
モーブッサン(MAUBOUSSIN)
1827年に創業したモーブッサンは、革新的で芸術性の高いジュエリーを数多く世に送り出してきました。
ウィーンやパリで開催された万国博覧会においては、フランスのジュエリー産業を広く認知させることに貢献し、1878年のパリ万博ではメダルを受賞しています。
その後も3つの石(エメラルド・ルビー・ダイヤモンド)をテーマにした展覧会を開催し、これらの展覧会を通じて、モーブッサンはカラーストーンを得意とするジュエラーとして世の中に認知されはじめました。
特にカラーストーンを使った大ぶりな個性的なデザインが有名で、日本ではあまり支持されていませんでしたが、2009年6月に日本初となる銀座店オープンの際には、先着5000人に0.1カラットのダイヤモンドを無料で配るなど大きな話題をつくり認知されはじめました。
また、世相に敏感なモーブッサンの代表作となった「チャンス・オブ・ラブ」シリーズは独立した女性をコンセプトに、幸福のモチーフである四葉のクローバーをイメージしてデザインされ人気を博しています。
ブシュロン(BOUCHERON)
1858年創業のブシュロンは、現在こそ宝飾店が立ち並ぶヴァンドーム広場に、いち早くアトリエを構えたジュエラーです。
ブシュロンの時計の針がヴァンドーム広場の円柱をモチーフにしている点からもその名残を感じられます。
大胆で独創性あふれるデザインと、「ブシュロンゴールド」と呼ばれている独特のゴールドが有名で、ヴァンドーム広場の石畳をモチーフにした「クル ド パリ」、個性豊かな4つのデザインが美しくまとまった「 キャトル」、ダイヤモンドのファセットカットをイメージしたデザインの「ファセット」といった人気のコレクションにも多く用いられています。
ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)
1906年に創業されたヴァンクリーフ&アーペルは、グランサンクの中では最も若いブランドですが、「世界五大ジュエラー」と「グランサンク」両方に名を連ねる世界的に稀にみるジュエラーです。
宝石商の娘であったエステル・アーペルと、宝石細工職人のアルフレッド・ヴァン クリーフの出会いから、その後ブランドは築かれていきました。
愛し合う2人のブランドコンセプトは「愛・夢・美」。そのコンセプトからはフェミニンでエレガントな世界観が広がるデザインが生まれています。
人気の「アルハンブラ」コレクションは、幸運のシンボルである四つ葉のクローバーをモチーフとしたデザインです。
また「ミステリーセッティング」と呼ばれる、宝石の留め金が見えない独自の石留めの技術を考案し、高い技術力で世界を魅了しています。
パリのヴァンドーム広場という一つの場所に、これだけ優れたジュエラーがそろっているということ自体が、奇跡と言っても過言ではないでしょう。
Written by 上田勝太
上田 勝太
ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演