リシュモン(Richemont)グループの時計ブランドたち
2019/04/05世界3大ラグジュアリー・コングロマリット(複合企業)と称される「リシュモン(Richemont)」グループ。その顔ぶれはそうそうたるブランドが名を連ねています。なかでも傘下にある時計ブランドたちはグループの顔であり、主要事業の一つです。そんなリシュモン(Richemont)グループを代表する時計ブランドを紹介したいと思います。
ラグジュアリーブランドを束ねる「リシュモン(Richemont)」グループとは
ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton )・セリーヌ(CELINE )・ディオール(Dior)・ベルルッティ(Berluti )などを傘下に持つフランスの「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」グループ、グッチ(GUCCI)・バレンシアガ(BALENCIAGA)・ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)などを傘下に持つフランスの「ケリング(KERING)」グループと並び、「世界3大グループ企業」や「世界3大ラグジュアリー・コングロマリット(直接の関係を持たない複合企業体)」などと称される「リシュモン(Richemont)」グループ。
1988年に南アフリカの実業家ヨハン・ルパートによって設立され、現在の本部はスイス・ジュネーヴにあります。
設立当初は、カルティエ(Cartier)を中心に構成されていましたが、その後100年以上続く老舗メゾンや、世界的に有名な名門ブランドが続々と傘下に入り巨大化しています。
「グランサンク」「パリ5大宝飾店」が有名なパリの観光地ヴァンドーム広場には、グループ傘下のメゾンが軒を連ねているのがその勢いの証と言っても過言ではありません。
また、2007年にはアメリカのラルフ・ローレン(Ralph Lauren)と、ポロ・ラルフローレン・ウォッチ&ジュエリー社を設立したり、ドイツの高級筆記具ブランドのモンブラン (M0NTBLANC) などを傘下におさめています。
現在のリシュモン(Richemont)グループは、宝飾品・時計・筆記具・服飾の4部門で構成され、特に宝飾品(ジュエリー)と時計(ウォッチ)は主要事業として力を入れています。
グループ全体の売上高も日本円で1兆円を超え、その半分を占めているのが高級時計となるほどです。
今や時計部門だけ取り上げても、ブレゲ(Breguet )・ブランパン(BLANCPAIN)・オメガ(OMEGA)といった有名時計ブランドを擁する時計業界最大の時計製造グループ「スウォッチグループ(SWATCH GROUP)」としのぎを削るほど成長を遂げたリシュモン(Richemont)グループ。その代表する時計ブランドを取り上げていきたいと思います。
グループを代表する時計ブランド
カルティエ(Cartier)
言わずと知れた「王の宝石商、宝石商の王(Jeweller of kings , king of jewellers)」と称されるフランスの老舗名門ジュエラーであり、世界5大ジュエラーの一つ「カルティエ(Cartier)」。リシュモン(Richemont)グループには、1988年の設立当初から名を連ねています。
カルティエ(Cartier)を代表する時計といえば、アイコンウォッチとなる「タンク(通称:タンク・ウォッチ)」やヨーロッパの航空のパイオニアであり発明家のアルベルト・サントス=デュモンが飛行中に時刻を確認したいという要望から生まれた「サントス ドゥ カルティエ(通称:サントス・ウォッチ)」が有名です。
ピアジェ(PIAGET)
高級時計やジュエリーが世界のセレブリティ達に愛されている「ピアジェ(PIAGET)」。
1874年に創業者のジョルジュ・エドワール・ピアジェが、スイスの自身の農場内に時計工房を構えたのが始まりとされ、特に有名な薄型のムーブメントは、当時のギネスブックに登録されるほどでした。
また宝飾品にも定評があり、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディ夫人のジャクリーン・ケネディも愛用していたブランドと言われています。リシュモン(Richemont)グループには、1988年に傘下に入っています。
ピアジェ(PIAGET)といえば、個性的なデザインと宝飾品を配したジュエリーウォッチコレクションが有名ですが、定番ラインとしては「アルティプラノ」「ピアジェ・ポロ」「ポセション」「ライムライト」などが人気アイテムとして世に知れ渡っています。
オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI)
1860年にイタリア・フィレンツェにて、精密機器メーカーとして設立された「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI)」。温度計や気圧計などをイタリア海軍に提供していたことから、イタリア海軍専用のダイバーズウォッチの製作を手掛け始めます。しばらくは軍用のみを製作し、一般市場には出回りませんでしたが、経営不振やイタリア海軍との契約満了をきっかけに、1993年より一般向けに高級時計の販売を開始します。1997年にはリシュモン(Richemont)グループに入り、国際的にも名が知られ、ケースが大型で厚い腕時計の代名詞として人気を博します。オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI)のモデルは大きく分けて「ラジオミール」と「ルミノール」に分かれ、日本でも人気が高いラインナップとして「ルミノール マリーナ」「ルミノール サブマーシブル」「ルミノール ドゥエ」などが挙げられます。
ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)
1906年に創業し、世界5大ジュエラーとグランサンクの両方に名を連ねるフランスの老舗メゾン「ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」。リシュモン(Richemont)グループには、1999年に傘下に入ります。ジュエリーが世界的に有名なブランドですが、実は腕時計の実力も高く、ブランドコンセプトの「愛・夢・美」を取り入れたデザインが人気を博しています。代表作としては、四つ葉のクローバーがモチーフのレディースモデル「アルハンブラ」、同じくレディースモデルでダイヤモンドがあしらわれた「 チャーム」、創業家一族の名がついたメンズモデル「 ピエールアーペル」などが有名です。
ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)、オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)とともに世界三大腕時計ブランドと呼ばれる、1755年創業のスイスの名門時計ブランド「ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)」。250年以上続く歴史と複雑機構を持つ機械式時計作る最高峰の技術力が多くの王族や貴族に愛されてきました。リシュモン(Richemont)グループには、2000年代に傘下に入ります。シンボルマークの「マルタ十字」が有名で、文字盤にそのマークが入った多くの名品を輩出していますが、その代表的なコレクションとしては、伝統的な技術とシンプルなデザインの「パトリモニー」、1755年の創業から歴代の名作にアレンジを加えた「ヒストリーク」、スポーツウォッチ「オーヴァーシーズ」、腕時計全体にダイヤモンドが施された「キャラ」などが挙げられます。
ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)
1833年の創業以来1200を超えるキャリバー(ムーブメントの型番)を開発し、その技術力の高さから「時計業界の技術屋」の異名を持つスイスの老舗時計ブランド「ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)」。リシュモン(Richemont)グループには、2000年に傘下に入ります。ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)の代表的なコレクションは、南極大陸の研究する人たちのために耐磁性・耐衝撃性・防水性を重視した時計を開発したことがきっかけに生まれた「ジオフィジック」コレクション、ブランドの技術の結晶「マスター」コレクションなどがブランドの代名詞として今日に至ります。
インターナショナルウォッチカンパニー(IWC)
「インターナショナル」や「インター」の略称で日本でも知られる、1868年創業のスイスの時計ブランド「インターナショナルウォッチカンパニー(IWC)」。創業者の一人がアメリカ人ということもあり、英語表記のブランド名で、その特徴はスイスの伝統的な時計技術とアメリカの製造工程における機械自動化の融合から成り立つマニュファクチュール(一貫製造する時計メーカー)であることです。リシュモン(Richemont)グループには、2000年に傘下に入りました。代表的な人気モデルは、懐中時計用の薄型キャリバー(ムーブメントの型番)を駆使して誕生した「ポルトギーゼ」、イギリスの空軍用に開発された「パイロット・ウォッチ」、イタリアの港町が名前の由来となった「ポートフィノ」などが有名です。
A.ランゲ & ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)
1845年創業のドイツの名門時計ブランド「A.ランゲ & ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)」。第二次世界大戦の折、工房が軍需工場とされ、空襲により焼失し、さらにドイツは東西に分断されたため、1990年に東西ドイツが統一されるまでの期間ブランドはいったんなくなります。統一後、前述のインターナショナルウォッチカンパニー(IWC)が、A.ランゲ & ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)の再興を図り、創業者から4代目となるヴァルター・ランゲを探し出しブランドは復活を果たします。2000年には支援したインターナショナルウォッチカンパニー(IWC)とともにリシュモン(Richemont)グループに入ります。復活後の代表的なラインとして、復活の記念碑的モデル「ランゲ1」、無駄を一切省いたシンプルなデザインの「サクソニア」、創業者であり宮廷時計師だったフェルディナント・アドルフ・ランゲ生誕の年を表し、伝統的な時計製造の技術をランゲ一族が継承しきた証として作られた「1815」、アドルフの息子であり工房に功績を残した時計師リヒャルト・ランゲの技術が受け継がれた「リヒャルト・ランゲ」、世界一美しいクロノグラフと称される「ダトグラフ」などがあります。
ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)
1995年にスイス・ジュネーブにて創業した高級時計マニュファクチュール「ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)」。
独創的なデザインで多くの有名人を虜にし愛用者も多く、近年では高級車ランボルギーニやタイヤメーカーのピレリなど、スポーツカーに使われる素材やテクノロジーを時計に採用したり、モータースポーツとのコラボレーションを果たしています。
リシュモン(Richemont)グループには2008年に傘下に加わります。
代表的なコレクションとしては、ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)を代表するアイコンウォッチ「エクスカリバー」、コレクション全てにダイヤモンドがあしらわれているがどこかスポーティーなデザインが印象的なレディースライン「ベルベット」、カジノのルーレットをモチーフとした「モネガスク」、スポーツテイスト溢れるクロノグラフ「パルジョン」、クラシカルなデザインの「オマージュ」などが挙げられます。
以上になりますが、時計ブランド以外にもリシュモン(Richemont)グループには、たくさんのブランドやメーカーが傘下に入っています。すなわち、ラグジュアリーブランドは今や競争が激化し単独で経営することが難しく、巨大資本の元でグループ同士の競争へと変化している証拠なのです。前向きに考えるとこれは、そのブランドのファンからすれば、安定した資本の元で商品を提供してもらえるため「良いこと」と言えるのではないでしょうか。