ダイヤモンドの原石の種類

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大嶋 雄介
著 者

大嶋 雄介

2010年にゴールドプラザに入社し、千葉店の店長として3年間で月間売上の最高記録を達成。鑑定士としてのキャリアをしっかりと積み上げました。その後、集客の戦略構想やSNSを活用したPR活動をしながら、リサイクル業界への深い理解と経験を積みました。現在は貴金属の換金業務に従事し、金融相場や市場動向の分析を通して緻密な専門知識を深化させています。BSテレ東「なないろ日和」などに出演。

ダイヤモンドの原石とは?

ダイヤモンドの美しい輝きは、実は採掘される「原石」の段階から始まっています。
ジュエリーとして目にするダイヤモンドはすでにカット・研磨されたものですが、その前段階である原石には、目に見えないほどの違いや特徴があるのです。天然のダイヤモンド原石は、単に地中から掘り出せば見つかるというものではなく、ダイヤモンドを内包する母岩(キンバーライトなど)から慎重に選別し、取り出されます。1カラット(約6.5mm)の宝石用ダイヤモンドを得るためには、数十トンもの鉱石の採掘と選別が必要とされます。そのうえで、いかに無駄なくカットし、美しい輝きを引き出せるかが、職人の技術と経験に委ねられているのです。


ダイヤモンド原石の種類

ダイヤモンドの原石は、大きく分けて以下の3種類に分類されます。

ソーヤブル(Sawable)

正八面体の理想的な原石

ソーヤブルとは、正八面体に近い結晶構造を持つ、最も理想的とされるダイヤモンド原石です。
ナミビアやロシアなどの鉱山から産出され、宝石用として使用される原石の中でもわずか20%程度しか存在しない希少なタイプです。カットロス(無駄)が少なく、1つの原石から大小2つのダイヤモンドを効率的に研磨することができるため、高品質で高価値なダイヤモンドに仕上がる可能性が高いとされています。


メイカブル(Makeable)

加工次第で変化するポテンシャルタイプ

メイカブルは不規則な形状をした原石で、その名の通り「作ることができる」=加工可能な原石です。
研磨の難易度は高いものの、熟練の職人が手がければ、ソーヤブルに匹敵する輝きを放つダイヤモンドになることもあります。インドなどで多く研磨されており、中級グレードの原石とされますが、個体によっては**高品質なダイヤモンドに化けることもある「当たり原石」とも言える存在です。


ニアージェム(Near-Gem)

工業用に近い低品質の宝石原石

ニアージェムは、見た目こそ宝石用でも、内部に大きな亀裂があったり、炭素の黒点を含むなど、透明度やクラリティに問題のある低グレードの原石です。多くは価格の安いアクセサリー用や工業用に使用されますが、近年では人工処理(クラリティエンハンスメントなど)によって、見た目の欠点をある程度カバーできるようになっています。ただし、処理されたダイヤモンドの価値は大幅に下がるため、購入時には原石の出所や処理の有無を確認することが大切です。

ダイヤモンドの原石の種類

メレーダイヤモンドに使われる原石

小粒のダイヤモンド、いわゆるメレーダイヤモンドも原石の種類によってその輝きや仕上がりに差が出ます。ただし、大粒のダイヤモンドほどクラリティやカラーが重視されるわけではなく、カットの美しさや輝き重視で評価される傾向にあります。

  • ソーヤブル原石ならカット精度が高く、高輝度の仕上がりに
  • メイカブル原石は職人の腕により輝きが左右される
  • ニアージェム原石は研磨しても輝きが劣るうえ、処理が必要になるケースが多い

ちなみに、原石から製品化されるまでに失われる重量(歩留まり)は、

  • ソーヤブル:約57%残る(43%ロス)
  • メイカブル:約25%残る(75%ロス)
  • ニアージェム:処理や加工に時間がかかるうえ、価値はソーヤブルの1/10以下の場合も

ダイヤモンドの価値は原石で決まる

いくら優れたカットや最新の技術を駆使しても、原石そのものが持つ輝きや構造の美しさを後から人工的に補うことはできません。だからこそ、原石の選定がダイヤモンドの価値を大きく左右するのです。アクセサリーを選ぶときには、カットやデザインだけでなく、「どんな原石から作られたか?」という点にも注目してみると、より本物志向のジュエリー選びができるでしょう。


まとめ:原石の違いを知ることが本物選びの第一歩!

ダイヤモンドの美しさや価値は、カットや研磨だけでなく、原石そのものの質に大きく左右されます。
ソーヤブル・メイカブル・ニアージェムといった原石の種類によって、輝きの強さや加工のしやすさが異なるため、ジュエリーとしての完成度にも明確な違いが生まれます。見た目では判断しづらい原石の違いですが、その知識を持つことで、より納得のいくダイヤモンド選びが可能になります。ダイヤモンドを購入する際は、デザインやブランドだけでなく、「どのような原石から作られたのか」という点にも着目することが、本物志向の第一歩といえるでしょう。