合成ダイヤモンドとは?

2018/11/06

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いま注目を集めている「合成ダイヤモンド」、「人工ダイヤモンド」と呼ばれることもあり、産業用途での需要は有名ですが、近年ではジュエリーとしての評価も高まりつつあります。
そんな「合成ダイヤモンド」についてご紹介したいと思います。

合成ダイヤモンドとは何か?

ダイヤモンドは大きく分けて「天然」「合成(人工)」「模造」の3つが存在します。
模造ダイヤモンドは、名前の通りガラスやプラスチック等を利用しダイヤモンドに見せかけた模造品ですが、長い年月をかけて地球内部で生成された「天然ダイヤモンド」に対し、「合成ダイヤモンド」とは、端的に言いますと長年の研究や科学の発展により、人工的に生成することが可能になったダイヤモンドを指します。
また、「合成ダイヤモンド」や「人工ダイヤモンド」と聞いて、工作用の切削道具の刃や研磨器具を思い浮かべる方も多いかと思いますが、技術の向上により近年では宝石としての価値も注目されています。
では、宝石としての「合成ダイヤモンド」は偽物ではないのか?と疑問が湧くかと思いますが、偽物という言い方は適切ではありません。
なぜなら現在の「合成ダイヤモンド」は、天然のダイヤモンドとは本質的に同じ化学組成や結晶構造、物理的特性を持っているからです。つまり、自然にできたものか、人工的にできたものかの違いになります。

「合成ダイヤモンド」の生成手段は、人工的に合成することです。「合成」とは諸元素から化合物を作ることであり、簡単に言うとダイヤモンドの元である炭素を人工的に合成することで、化合物であるダイヤモンドを生成することになります。
現在、主な合成方法は、高温高圧(HPHT)法や化学気相蒸着(CVD)法が有名です。
高温高圧(HPHT)法は、天然ダイヤモンドが生成される「地中深くの高い圧力」「マグマなどの高温」など地球内部での環境を模した装置により合成される方法です。
化学気相蒸着(CVD)法は、高温低圧環境を作り出す装置を利用し、メタンガスなどの炭素を主成分とする気体状態のものから、種結晶となるダイヤモンドの結晶板上に蒸着させる合成方法です。
このような方法で合成された宝石としてのダイヤモンドは、年々技術が向上することで天然のダイヤモンドとの判別も容易ではなくなってきました。「天然ダイヤモンド」を取扱う業界にとっては、宝石市場を脅かす存在であり、判別の混乱を招き兼ねません。
そこで大手業社や学術協会では、取引市場を守るために識別装置を開発したり、合成ダイヤモンドのカットしたガードル部分にレーザーで刻印を入れてみたりと対策がなされています。
ただ「合成ダイヤモンド」が品質の向上や量産ができるまでに至った背景には、100年以上の試行錯誤の歴史があります。ここからはその歴史を振り返ってみましょう。

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合成ダイヤモンドの歴史

18世紀後半に、ダイヤモンドが炭素でできていることが発見されて以来、19世紀~20世紀にかけて世界中で炭素原子からダイヤモンドの合成が試みられました。
初めて合成に成功した記録は1879年で、その後も各方面より研究成果が発表され、多くの科学者や研究員が実験を試みますが、再現性の高い「合成ダイヤモンド」が生成された訳ではありませんでした。
1941年には、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社と他2社の合同で「合成ダイヤモンド」の研究を始めますが、第二次世界大戦の影響で研究を中断することになります。そして戦後の1951年に研究を再開し、1955年にやっと再現性の高い「合成ダイヤモンド」の生成に成功したことがGE社から発表されます。ただ、高温高圧(HPHT)法によるその合成ダイヤモンドはサイズがあまりにも小さく宝石としての価値はありませんでした。
以降その「合成ダイヤモンド」は、GE社により工業用途や医療用途向けの生産が始まります。
また、GE社より先の1953年にスウェーデンのASEA社も再現性の高い「合成ダイヤモンド」の生成に成功していましたが、砂粒より小さなダイヤモンドのため、1980年代まで公表は行わなかったそうです。
1970年には、GE社により宝石としてのファセットカットが可能な「合成ダイヤモンド」の生成に成功します。その後、ダイヤモンド商社大手のデビアス(De Beers)社により、GE社より大きい高品質の「合成ダイヤモンド」の生成に成功します。

化学気相蒸着(CVD)法での合成の試みは、1950年代に旧ソ連とイギリスの合同研究によりスタートし、1968年に本格的な合成の成功をおさめます。

1980年代に入ると、「合成ダイヤモンド」は宝石として品質面や商業的側面で量産が可能になり、年々その合成技術が向上することで、前段でお話しした通り、「天然ダイヤモンド」との判別も難しくなり、天然のダイヤモンドを取扱う業界にとっては、宝石市場を脅かす存在となりました

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合成ダイヤモンドの現在と将来性

現在の「合成ダイヤモンド」の品質は取り扱う会社によって幅はありますが、有名なブランドやメーカーが取り扱う高品質なものは、既に「天然ダイヤモンド」と容易に判別はできないレベルまで来ています。米国宝石学会(GIA)においても「光学的、物理的特性は天然ダイヤモンドとほぼ同じであるため、合成ダイヤモンドを見分けるのは容易ではない」と言っています。
また、生産のコストを安く抑えられる合成の技術も日々進化しています。アメリカの老舗メーカーによると、生産コストは「天然ダイヤモンド」の約半分にまで抑えることが可能で、天然のダイヤモンドが生成されるのが数百万年かかるのに比べ、人工生成は2週間程度とのことです。

すでに「合成ダイヤモンド」の市場はアメリカを中心に確立されはじめています。
かつて「合成ダイヤモンド」に否定的だったデビアス(De Beers)社も、2018年5月には合成ダイヤモンドジュエリーを販売する新ブランド「Lightbox(ライトボックス)」の設立を発表し、ハリウッドの俳優レオナルド・ディカプリオをはじめとした投資家らが、人工ダイヤモンド開発会社「Diamond Foundry」の設立に、巨額の投資をしたとことでも話題となりました。
また開発技術面においても、人間の頭髪や遺骨からダイヤモンドを生成する合成方法が研究されはじめています。

では、「天然ダイヤモンドとの違いは?」と言いますと、「希少性」という点に限ります。
これからのダイヤモンド市場でのニーズは、その「希少性」か、「安さ・気軽さ」か、消費者の価値観で決める時代はもうそこまで来ているのではないでしょうか。