カット評価のチェックポイント

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ダイヤモンドの輝きに大きな影響を及ぼすのがカットです。
この善し悪しについて、G.I.A.(米国宝石学会)はもともとカット評価をしてこなかったため、日本では1994年(平成6年)に AGL(宝石鑑別団体協議会)がカット基準を定め、AGLメンバーによってカット評価が自主的に行われてきました。

そのグレーディングレポートのカット評価は旧AGL方式か、それとも新GIA方式か?

AGLとは、宝石鑑別団体協議会の略で、グレーディングレポートの鑑定期間の間にある誤差を調整したり、用語や定義、判定基準の統一を目指し、鑑定に関する消費者相談なども行っている、有限責任中間法人です。
このカット評価とは、理論値にどれだけ近いかを基準に5段階評価したもので、業者にとっても、消費者にとっても分かりやすいと好評でした。
しかし綺麗に見えるか、キラキラ輝いて見えるかといった点で、必ずしも100%正しいとは言えないという声も一部にありました。
それに答える形で、ついに2006年(平成18年)4月からGIAによるカット評価の総合評価が新しくスタートし、AGL加盟社もそれを導入する事を決定。
現在は日本の鑑定期間はGIA方式で統一されています。
AGL方式がカットの理論値にどれだけ近いか、パーセントや角度といった数値を中心に評価していたのに対し、GIA方式では、ペインティングやディギングアウトといった新しい概念が加わり、さらに主観評価の結果も加えてデータベース化するという、まったく新しい基準が導入されております。

グレーディングレポートのカットの総合評価は何か?

GIAによるカットグレード

Excellent Very Good Good   Fair   Poor  

カット評価は、最終的に5段階(Excellent=EX、Very Good=VG、Good=G、Fair=F、Poor=P)のグレード評価で行われます。
レポート上では、プロポーションの数値測定結果を図面として明記しており、見やすさが向上しております。
グレード評価の方法は、自動測定器(イスラエル・オギ社、同サリンテクノロジー社ダイヤビジョン)を使用し、各ファセットの大きさや角度を測定し、それらのデータをもとにGIA Facetware Cut Estimator Databaseにより推定し、カットグレードを求めます。
具体的には、フェースアップでの見え方(上面から見た見え方)を基準に、ブライトネス、ファイアー、シンチレーションとうい3項目から測定されます。
そして、さらに宝石専用双眼顕微鏡(10倍率)の下で目視により検査が加わり、カットグレードが決定されます。
目視評価の対象となる要素は、ファセットの大きさや形、対称性(シンメトリー)、研磨の正確さや質(ポリッシュ)、キューレットの大きさや状態、ガードル面の状態から判断されます。

グレーディングレポートの仕上げのうち、シンメトリーの評価は何か?

ダイヤモンドグレーディングのカットグレードを決める際に、目視評価の対象となる要素として、ファセット(宝石を研磨して平らにした面のこと)の大きさや形、対称性(シンメトリー)、研磨の正確さや質(ポリッシュ)、キューレット(カットダイヤモンドのパビリオンの先端のファセットのこと)の大きさと状態、ガードル面の状態などから判断されます。
カットの総合評価(Proportion Finishi)がExcellentになる条件としては、シンメトリーとポリッシュがそれぞれVery Good以上であれば十分です。

そこで、総合評価に加えて、シンメトリーとポリッシュについてもExcellentと評価されるダイヤモンドには、トリプル・エクセレント(Triple Excellent=3EX)と呼んで差別化しています。
ほとんどのトリプル・エクセレントのダイヤモンドでは、ハート・アンド・キューピッド現象(※)が見られますから、普通のExcellentよりも価格的に高い評価を受けています。

ただし、トリプル・エクセレントのグレーディングレポートを発行しているのは、現状では、中央宝石研究所だけということもあって、中宝研のグレーディングレポートを使用していない宝飾店では、「トリプル・エクセレント・カットは日本独自規格で海外では通用しない」とか「トリプル・エクセレントとエクセレントにはほとんど違いはない」と説明しているところもあります。
しかし、シンメトリーとポリッシュが、ダイヤモンドの輝きを大きく左右するポイントであることに変わりはなく、トリプル・エクセレント・カット・ダイヤモンドが、カット・グレードのいただ点であることは間違いありません。

※ハート・アンド・キューピッドとは・・・

カットを見る特殊な器具(商品名:ジェムファンタジーあるいはジェムスコープ)を使うと、プロポーションとシンメトリー(対称性)の優れているダイヤモンドには、テーブル側から見ると8つのアロー・マークがパビリオン側から見ると8つのハート・マークが見えるということが発見されています。
そこで、この現象が見られるダイヤモンドを「ハート・アンド・アロー」と呼んでいましたが、この「ハート・アロー」がある業者によって商標登録されてしまったため、代わって「ハート・アンド・キューピッド」(H&C)という名称が広く使われるようになりました。

D~Fカラーのハート&キューピッドは5%upの評価

カットの善し悪しがダイヤモンドの美しさを左右するもっとも重要なポイントであることから、カットグレードの違いは取引価格に大きな影響を与えます。
一次流通の現状を見ると、他のグレードとの関係にもよりますが、平均するとカットの1グレードの違いが20%~40%の価格差を生んでいます。
当然この現状は買取り価格にそのまま反映しますから、買取りの場面でもこの価格差となっています。
なお、D~Fカラーのハート&キューピッドは5%up、トリプルエクセレントのハート&キューピッドについては、5%~15%upの買取り価格となります。