ハンガリーの名窯「ヘレンド(HEREND)」とは
最終更新日:2025/04/18

ドイツの「マイセン(MEISSEN)」やイギリスの「ウェッジウッド(WEDGWOOD)」などと並ぶ、ヨーロッパを代表する陶磁器ブランド「ヘレンド(HEREND)」。190年以上の歴史を持ち、ハンガリーの帝室・王室御用達でありながら、ヨーロッパ各地の王侯貴族からも愛されてきた名窯です。今回はそんなブランドの歴史や特徴、代表作(シリーズ)について紹介させていただきます。

大嶋 雄介
2010年にゴールドプラザに入社し、千葉店の店長として3年間で月間売上の最高記録を達成。鑑定士としてのキャリアをしっかりと積み上げ、その後、営業企画部に進出し、集客の戦略構想やSNSを活用したPR活動をしながら、リサイクル業界への深い理解と経験を積みました。現在は貴金属の換金業務に従事し、金融相場や市場動向の分析をじっくりと、緻密な専門知識を深化させています。
◾️ 目次
ヘレンド(HEREND)の歴史
ヨーロッパを代表する高級磁器ブランド「ヘレンド(HEREND)」。創業以来、手づくり・手描きの伝統を守り、王室や貴族たちに愛されてきました。
ヘレンド村での創業と発展
1826年、現ハンガリーのヘレンド村にて創業。2代目モール・フィッシャーの手により工房の規模が拡大し、名声を高めていきます。
王室御用達ブランドへの飛躍
1842年にハンガリー産業博覧会で高評価を獲得。1851年のロンドン万国博覧会でヴィクトリア女王の注文を受け、ブランドの知名度が一気に広がりました。
ハプスブルグ家やフランス貴族との関係
「ウィーンの薔薇」や「インドの華」など、貴族たちの要望から生まれたシリーズは、今でもブランドの象徴です。
20世紀以降の挑戦と復活
戦争の影響で国有化されるも、1948年以降に再民営化。2011年の英国王室婚礼で贈られた「ロイヤル・ガーデン」など、現代においても注目を集めています。
ヘレンド(HEREND)の特徴
マスター制度によるクラフトマンシップ
ヘレンドでは、高い技術力を持つ職人のみが製作を担う「マスター制度」を導入。造形・絵付けの両面で厳格な技術試験に合格した職人が製品を仕上げます。
ポター(陶工)と造形技法
- ヌードルワーク:紐状の粘土を使った立体的装飾
- 手ひねり:蓋や持ち手、花などを手で成形
- 透かし彫り:刃物で模様を削る精巧な技法
ペインターと絵付け技法
ヘレンドの絵付けは4つの大分類があります。
- 写実画(ヨーロッパ的写実)
- シノワズリ(東洋画・東洋趣味)
- 細密画(ペルシャにルーツ)
- フィギュリン(うろこ模様を含む人物・動物画)
中でも「シノワズリ」は最も代表的な絵柄で、取っ手やつまみに中国官僚を描いた「マンダリン」はブランドの象徴です。
ヘレンド(HEREND)を代表するシリーズ
ヴィクトリア
万国博覧会でヴィクトリア女王が注文した作品。鳥や花が描かれたエレガントなデザイン。
ウィーンの薔薇
ハプスブルグ家由来の絵柄。ピンクや緑の薔薇が特徴的なロングセラーシリーズ。
パセリ
門外不出だったデザインで、パセリの葉をモチーフにした上品なシリーズ。
インドの華
皇后ウジェニーの使用で注目された東洋風デザイン。緑、ピンク、ブルーなどの展開があります。
アポニー
「インドの華」を基に誕生した人気シリーズ。代表作「アポニー・グリーン」は世界中のコレクターに愛されています。
エリザベートの薔薇
皇后エリザベートを讃えて制作されたシリーズ。ピンクの薔薇と金彩が高貴な印象を与えます。
ロスチャイルド・バード
ロスチャイルド家のために制作されたシリーズ。「異郷の鳥」をモチーフにした美しい装飾が魅力です。
その他の人気シリーズ
- メモリアルローズ:開窯190周年記念で発表された華やかなピンク
- バイオレット:皇后エリザベートが愛したすみれをモチーフにしたシリーズ
- トゥッピーニの角笛:角笛の形状を生かしたデザイン
- ミルフルール:可憐な小花柄が特徴
まとめ:ヘレンド(HEREND)が世界中で愛される理由
ハンガリーという東西文化が交差する国で生まれた「ヘレンド(HEREND)」。その多様性と職人技の結晶ともいえる作品群は、時代を超えて今もなお、世界中の人々の心をつかみ続けています。