テーブルの貴婦人「ミントン(MINTON)」とは

2023/05/08

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英国ヴィクトリア女王に「世界で最も美しいボーンチャイナ」と言わしめた、イギリスの陶磁器ブランド「ミントン(MINTON)」。イギリス王室御用達の名窯として、古くからテーブルウェアやタイルが世界的に知られています。今回はそんなブランドの歴史や特徴、代表作(シリーズ)について紹介させていただきます。

ミントン(MINTON)の歴史

イギリス王室御用達の陶磁器ブランド「ミントン(MINTON)」。大英帝国の象徴であるヴィクトリア女王が愛用したテーブルウェアの数々は「テーブルの貴婦人」の呼び名に相応しく、世界中の人々から愛されてきました。また、磁器製造技術で作られた「ミントン(MINTON)」のタイルは、そのデザイン性の高さから最高峰の建築材料として世界中の歴史的建造物に採用されました。
そんなミントン(MINTON)の始まりは、ロイヤルドルトン(ROYAL DOULTON)やウェッジウッド(WEDGWOOD)を生んだイギリスの陶磁器の里として知られるストーク=オン=トレントにて、1793年に開窯します。その後180年(1973年まで)一族経営を続け、イギリスを代表するボーンチャイナ・ブランドとして成長を遂げます。
銅版彫刻師であった創業者のトーマス・ミントンは、陶磁器に絵柄を転写する銅版を彫る職人でしたが、今までの磁器とは違う芸術性を求めた作品が評判となり、中でも中国風の絵柄・図案で、柳が描かれた「ウィローパターン(ブルーウィロー)」は人気を博し、以降ボーンチャイナの草分け的な存在として君臨します。
トーマスの次男であるハーバード・ミントンが2代目として経営を継ぐと、芸術性と生産性の両輪で事業を展開していきます。芸術面で言いますと、多くの職人や芸術家を工房に集め、新しい技法を取り入れて作品に反映していきます。代表的なもので、金を使ったエッチング技術や、イタリア古来の焼き物を復刻させたマジョリカ釉などをボーンチャイナに採用し、1851年に開催されたロンドン万国博覧会において作品「マジョリカ」がイギリス企業で唯一ブロンズメダルを授与されます。その際に、英国ヴィクトリア女王から「世界で最も美しいボーンチャイナ」と賞讃され、それをきっかけに1856年にはイギリス王室御用達の窯元となり、「ミントン(MINTON)」の名声は一躍世界に広がっていきます。一方、生産面で言いますと建築材料のタイル「ミントンタイル(施釉タイル・無釉タイル)」の生産を開始し、その芸術性の高さから国を代表する建築物などに採用され、代表的なものでも現イギリス国会議事堂のウェストミンスター宮殿、イギリス王室の離宮オズボーン・ハウス、三菱財閥の旧岩崎邸などが挙げられます。
1858年ハーバードが亡くなると、甥にあたるコリン・ミントン・キャンベルが3代目として経営を引き継ぎます。1863年、金彩師であるジェームズ・リー・ヒューズが、金を腐食させて模様を作る画期的な装飾技法「アシッドゴールド」を開発し特許を取得します。1871年には、芸術家マルク=ルイ・ソロンを雇い入れ、粘土の水溶液を何度も塗り重ねることで装飾を立体的に表現する技法「パテ・シュール・パテ」を作品に採用し高い評価を得ます。
コリンの死後も、「ミントン(MINTON)」は一族によって経営が続き、1948年にはデザイナーのジョン・ワズワースにより、のちに世界的なベストセラーとなる「ハドンホール」を発表しますが、1973年にロイヤルドルトン(ROYAL DOULTON)の傘下に入ることで一族経営は終わり、その後WWRDホールディングス・リミテッド(「ウォーターフォード(WATERFORD)」「ウェッジウッド(WEDGWOOD)」「ロイヤルドルトン(ROYAL DOULTON)」「ロイヤルアルバート(ROYAL ALBERT)」などが傘下)グループの一員として続きましたが、2015年ロイヤル コペンハーゲン(ROYAL COPENHAGEN)やイッタラ(IITTALA)などを傘下に持つ、フィンランドのフィスカース(FISKARS)社によりグループは買収され、事実上「ミントン(MINTON)」ブランドは廃止されました。現在はフィスカース社のライセンスブランドとして、インテリア製品やテーブルウェアを中心に販売を展開しております。
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ミントン(MINTON)の特徴

「ミントン(MINTON)」の最大の特徴は、革新的な絵付け(ペイント)技法や絵柄・図案の芸術的なデザインと言えます。また、企業風土として数多くの優れた芸術家や職人を雇い入れることに、資金を惜しみませんでした。そのため230年の歴史の中で、数多の技法やデザインを誕生させています。
絵付け技法で言えば、前述でも紹介した金を腐食させ吸着することで複雑なゴールド模様を施すことができる「アシッドゴールド」技法、粘土の水溶液を何度も塗り重ね下地の透け具合から絵柄を立体的に表現する「パテ・シュール・パテ」技法、厚みが出る顔料でフリーハンドにより描かれた絵柄や図案に、焼成後エナメル部分に金彩を施し再度焼成し研磨することで澄んだゴールドの光沢感を出す「レイズドペーストゴールド」技法、など陶芸史に残る技術を開発しています。
一方、絵柄・図案・意匠などの代表的なデザインで言えば、白磁のボーンチャイナを美しく際立たせる中国式模様の「ウィローパターン(柳模様)」や、1800年代に人気を博した鮮やかなターコイズブルーでデザインされた「ミントンブルー」、明るい色合いの鉛釉を開発しイタリアのマジョリカ焼を復刻させた色釉「マジョリカ釉」などが挙げられ、後世に発表されるベストセラーや定番シリーズへ継承されていきます。
そのほか造形においても、らせん状に波を打つようなフォルムの「ファイフ・シェイプ」が有名で、のちに名作「ハドンホール」にも採用された造形デザインです。
また、建築材料として中世のタイルの美しさを近代技術で蘇らせることに成功し、そのデザイン性の高さから当時は最高級タイル「ミントンタイル」として、国を代表するような建築物に採用されてきました。

ミントン(MINTON)を代表するシリーズ

「ミントン(MINTON)」のボーンチャイナは、高い芸術性と頑丈で高品質なことから、イギリス王室を始め、ヨーロッパの王侯貴族や日本の皇室に至るまで、顧客リストに名を連ねました。創業から長い歴史においてその作品群は多岐に渡りますが、その中でも特に有名な代表作(シリーズ)を紹介させていただきます。

ハドンホール

ミントン(MINTON)を代表するシリーズで、デザイナーのジョン・ワズワースにより、イギリス中世のハドンホール城の礼拝堂に残る壁画から創案され、オリエンタルな趣向とパッションフラワー・バンジー・カーネーションをモチーフに図案化されたデザインが世界中で人気を博しています。最初の発表は1948年でその後、青を基調とする「ハドンホール ブルー」、2006年には王室御用達150周年を記念して「マジェスティック ハドンホール」、2008年ハドンホール誕生60周年を記念して「ダイヤモンド ハドンホール」を発表するなど、様々なデザインバリエーションを展開しています。

ヴィクトリアストロベリー

1846年発表された、名前の通り野いちごをモチーフとした絵柄が特徴で、ハドンホールと並ぶ代表シリーズです。ヴィクトリア女王、自らがデザインに携わったと言われており、シリーズとして「ヴィクトリアストロベリー ホワイト」「ヴィクトリアストロベリー ハンドペイント」「ヴィクトリアストロベリー ブルー」「ヴィクトリアストロベリー クリスタル」などのデザインバリエーションを展開しています。特に「ヴィクトリアストロベリー ハンドペイント」については、名前の通り絵柄は手書きで全てがハンドメイドのため同じものが一つもなく、また流通数も少ないため、コレクター垂涎の的として知られています。

ハードウィック

ハドンホールを手がけたデザイナーのジョン・ワズワースが、イギリス貴族の館ハードウィックにて着想を得たシリーズです。古伊万里のような青一色の染め付けによる濃淡が特徴で、図柄は基本的にハドンホールの模様が採用されており、新たなハドンホールシリーズとして脚光を浴びています。

その他にも、前述の「アシッドゴールド」「パテ・シュール・パテ」「レイズドペーストゴールド」3つ技法を全て取り入れた、ミントンの中でも最も芸術性が高いと言われるシリーズ「エキゾチックバード」、ふんだんに金彩を施したシリーズ「ダイナスティ」、オリエンタル風の絵柄と染め付けのようなブルーが印象的で、サンスクリット語で“愛の神殿”を意味する「シャリマー」、イギリスの庭園に咲き乱れる花々をモチーフに鮮やかな色合いで表現した「シークレットガーデン」、日本の四季を絵柄で表現した日本市場限定の「フォーシーズンコレクション」など、芸術性の高い作品を多く世に贈り出してきました。
最後に、「ミントン(MINTON)」は現在ライセンスブランドとして展開していますが、「テーブルの貴婦人」と謳われたことからもその芸術性と高い品質は世界中から今も一目置かれています。また開窯から230年の間に生まれた作品の数々は大変貴重で、アンティーク品として「オールドミントン」の名で中古市場において高い評価を得ていることから、これから先も「ミントン(MINTON)」の陶磁器は歴史に埋もれることはないでしょう。

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演

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