テーブルウェアの芸術品「ミントン(MINTON)」の魅力と歴史
最終更新日:2025/04/18

ミントン(MINTON)とは
「ミントン(MINTON)」は、1793年にイギリスのストーク=オン=トレントで創業された陶磁器ブランドです。創業者トーマス・ミントンは、銅版彫刻師としての技術を活かし、芸術性の高い陶磁器を生み出しました。その品質と美しさから、ヴィクトリア女王に「世界で最も美しいボーンチャイナ」と称賛され、1856年にはイギリス王室御用達の窯元となりました。現在も、その伝統と技術は多くの人々に愛されています。

大嶋 雄介
2010年にゴールドプラザに入社し、千葉店の店長として3年間で月間売上の最高記録を達成。鑑定士としてのキャリアをしっかりと積み上げました。その後、集客の戦略構想やSNSを活用したPR活動をしながら、リサイクル業界への深い理解と経験を積みました。現在は貴金属の換金業務に従事し、金融相場や市場動向の分析を通して緻密な専門知識を深化させています。BSテレ東「なないろ日和」などに出演。
◾️ 目次
ミントンの歴史と発展
創業と初期の成功
トーマス・ミントンは、1793年にミントンを創業し、中国風の絵柄「ウィローパターン(ブルーウィロー)」で人気を博しました。その後、息子のハーバード・ミントンが経営を引き継ぎ、芸術性と生産性の両面で事業を拡大しました。
技術革新と国際的評価
ハーバードは、多くの職人や芸術家を工房に招き、新しい技法を取り入れました。1851年のロンドン万国博覧会では、「マジョリカ」作品がブロンズメダルを受賞し、ヴィクトリア女王からも高い評価を受けました。その後、建築材料としての「ミントンタイル」も生産し、ウェストミンスター宮殿などの建築物に採用されました。
近代への移行とブランドの継承
1973年にロイヤルドルトンの傘下に入り、さらに2015年にはフィンランドのフィスカース社により買収されました。現在、ミントンはライセンスブランドとして、インテリア製品やテーブルウェアを中心に展開されています。
ミントンの特徴と技術
革新的な絵付け技法
ミントンは、以下のような革新的な絵付け技法を開発しました:
- アシッドゴールド:金を腐食させて模様を作る技法。
- パテ・シュール・パテ:粘土の水溶液を塗り重ねて装飾を立体的に表現する技法。
- レイズドペーストゴールド:厚みのある顔料で描いた絵柄に金彩を施し、焼成後に研磨して光沢を出す技法。
芸術的なデザインと造形
ミントンは、中国式模様の「ウィローパターン」や鮮やかな「ミントンブルー」、イタリアのマジョリカ焼を復刻した「マジョリカ釉」など、多彩なデザインを展開しました。また、らせん状の波を打つようなフォルムの「ファイフ・シェイプ」も有名で、代表作「ハドンホール」にも採用されています。
代表的なシリーズ
ハドンホール
1948年にデザイナーのジョン・ワズワースが、ハドンホール城の礼拝堂に残る壁画から着想を得て制作。パッションフラワーやバンジー、カーネーションをモチーフにしたデザインが特徴です。その後、「ハドンホール ブルー」「マジェスティック ハドンホール」「ダイヤモンド ハドンホール」などのバリエーションが展開されました。
ヴィクトリアストロベリー
1846年に発表された、野いちごをモチーフにしたシリーズ。ヴィクトリア女王がデザインに携わったとされ、「ヴィクトリアストロベリー ホワイト」「ハンドペイント」「ブルー」「クリスタル」などのバリエーションがあります。特にハンドペイント版は、すべてが手描きで希少価値が高く、コレクターに人気です。
ハードウィック
ジョン・ワズワースが、イギリス貴族の館ハードウィックから着想を得たシリーズ。青一色の染め付けによる濃淡が特徴で、ハドンホールの模様を基にしたデザインが採用されています。
その他のシリーズ
ミントンは、以下のような芸術性の高いシリーズも展開しました:
- エキゾチックバード:アシッドゴールド、パテ・シュール・パテ、レイズドペーストゴールドの技法をすべて取り入れたシリーズ。
- ダイナスティ:金彩をふんだんに施したシリーズ。
- シャリマー:オリエンタル風の絵柄と染め付けのようなブルーが印象的なシリーズ。
- シークレットガーデン:イギリスの庭園に咲く花々をモチーフにした
最後に
「ミントン(MINTON)」は現在ライセンスブランドとして展開していますが、「テーブルの貴婦人」と謳われたことからもその芸術性と高い品質は世界中から今も一目置かれています。また開窯から230年の間に生まれた作品の数々は大変貴重で、アンティーク品として「オールドミントン」の名で中古市場において高い評価を得ていることから、これから先も「ミントン(MINTON)」の陶磁器は歴史に埋もれることはないでしょう。