「陶器」とは

2023/06/07

ゴールドプラザブランド食器買取バナー人類にとって食器・花器・美術品等として親しまれてきた「陶器」。その歴史は古く世界中で作られてきましたが、特に日本をはじめとした東アジアでは、茶器など芸術的な視点からも珍重されました。この度は、そんな「陶器」についてお話しさせていただきます。

「陶器」の特徴

「陶器」と聞いて、一般的に「焼き物・やきもの」といった呼び名や「茶器・酒器」、ろくろを使った「陶芸」などを頭に思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。よく使われることが多い「陶器」や「磁器」といった名称は、原料となる土の種類や焼き方・焼成の温度などにより性質が変わるため、基本的には別モノで、「陶器」や「磁器」など土を練り固め成形し焼いて作ったモノの総称を「陶磁器」と言います。
専門家や国によっても意見が分かれますが、「陶磁器」は大きく「土器・炻器(せっき)・陶器・磁器」の四つに分かれています。「土器」は、基本的に縄文時代や弥生時代などでも有名な素焼きの焼き物(やきもの)を指すことが多く、現在でもその風合いなどを楽しむために作られています。次に「炻器(せっき)」は、英語でストーンウエアとも呼ばれ、 鉄を多く含む粘土で素地(きじ)を作り、釉薬(ゆうやく・うわぐすり)を施さず窯を用いて1100〜1300℃程度で焼きあげたモノを指し、磁器と同様に吸水性はほとんどありませんが陶器のような土の風合いを持ちます。
そして「磁器」については、粘土に長石・珪石 (けいせき) ・石英などを加えたり、陶石を原料に窯で1200〜1400℃程度で焼成し、釉薬にてガラス質のコーティングをすることで吸水性は殆どなく、陶磁器の中では最も硬く「石もの」と呼ばれることもあります。薄くて表面の凹凸や気孔が少ないため絵付けなどの装飾も繊細に施すことができ、歴史は浅いですが世界で一番作られている陶磁器です。「ボーンチャイナ」と呼ばれる食器等も「磁器」の一種で、「牛の骨灰」を混ぜて作られています。
最後に「陶器」ですが、主に粘土を原料とした素地で形成し、釉薬を上手に利用しながら刷毛目や粉引きなどの意匠を施し、窯で1000~1200°C程度(窯による)で焼成したモノを指し、土の風合いが残り全体的に厚みがあるのが特徴で、吸水性もあります。茶器などでは偶然出来た釉薬の景色を楽しむ慣習もあります。また、磁器に対して「焼き物・やきもの」と呼ばれることもあります。
産地や窯元(企業)などにより、その技法や用途・装飾方法に違いがあり、製作工程(素焼きと本焼きなど複数回に分けて焼成)・焼成温度・原料の配合などに幅があります。そして「陶器」は磁器に比べて衝撃に弱く割れやすい、造形や絵付け等も均一になりにくい特徴がありますが、歪んでいたり釉薬による景色が違っていたりと手作業による温かさ感じられ、一つ一つに個性を持つため芸術家などに愛されてきました。
日本においても「陶器」を好んだ偉人・著名人は数多おりますが、代表的な人物で言えば、茶道を極めた「千利休」、その利休の弟子であり戦国武将の「古田織部」、同じく茶人であり戦国武将で庭園作りが有名な「小堀遠州」、書画・陶芸家であり美食で有名な「北大路魯山人」などが挙げられます。
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「陶器」のお手入れ方法

前述で紹介させていただいた通り、「陶器」は気孔が多く水を吸い込む性質があり、土の風合いを活かしているため表面や高台(器の裏側)がザラザラしていることなどから、特に高価なブランド陶器や作品・美術品などは、日頃から楽しむ為にお手入れやメンテナンスが必要になります。

目止め

「陶器」は、磁器に比べると吸水性が高いため、食材の水分や油分を吸い込みやすく、汚れや臭いの原因になります。そのために、あらかじめ使用する前に「目止め」を施し水分や油分の侵入を防ぎます。やり方は、お米のとぎ汁に陶器を浸し15〜20分程度煮沸します。ただし、陶器によっては釉薬などのガラス層の表面に貫入(かんにゅう)と言われるヒビが入ることがありますので、浸けすぎ煮すぎには注意が必要です。

洗い方と乾燥

「陶器」には、釉薬による意匠や絵付け、金・銀彩が施された器が多いため、特に大切にされている器を洗う際には、柔らかめのスポンジ等で擦らないよう洗うことをお勧めします。また気孔が多い陶器は、洗った後もカビの原因ともなるため、しっかりと乾燥させましょう。

急激な温度変化について

「陶器」は急激な温度変化に弱いため、ひび割れや破損の原因ともなる電子レンジの使用は避けた方が良いでしょう。最近では電子レンジ対応の器も販売しておりますが、基本的に高価なブランド陶器やアンティーク品などは対応しておりません。またお料理の際も、急に熱い物や冷たい物を盛り付けたり注いだりすることは注意が必要です。

高台について

「陶器」の多くには、「高台」という器の裏側に台座部分が存在します。高台によってはざらつきが気になるモノもあり、テーブルに置いたりや器を重ねた際に傷つけてしまう可能性もあります。そのような陶器の配膳や保管方法には配慮が必要となります。また、どうしてもざらつきがひどいモノは紙ヤスリ等で少し表面を滑らかにする手段もあります。

シミや臭いについて

目止めを施していても、「陶器」にはシミや臭いがついてしまうことがあります。そのような場合、専用の漂白剤(必ず注意書きは読んでください)を利用してシミ抜きをしたり、レモンやお酢を混ぜた水で煮沸することで消臭することが可能です。ただし、浸けすぎ煮すぎには注意が必要です。

以上になりますが、日頃から大切に扱っていても壊れてしまうことがあります。そのような場合には、漆などで割れ目やパーツを繋げる「金継ぎ」という方法があり、専門の事業者で修理をしてくれます。骨董品の茶器などでは、「金継ぎ」したことで価値が上がることもあります。

「陶器」の有名ブランドや産地(窯場)について

私たちの日常において「陶器」に触れる機会は多く、普段使いの食器はもちろんのこと、著名な陶芸家・作家の作品や、利久好みの「天目茶碗」など歴史的価値の高いモノも存在します。また世界的に見ても「陶器」は愛好家が多く注目の高い分、中古品や骨董品であっても高値で取引されるケースが多いです。ここでは、そんな「陶器」の有名ブランドや産地について、数多ある中から代表的なものを取り上げてみたいと思います。

まずは陶磁器ブランドやメーカーですが、基本的に「陶器」「磁器」、さらには「炻器(せっき)」も併用して生産している企業や窯元が多く存在します。
イギリスですと「ウェッジウッド(WEDGWOOD)」「ミントン(MINTON)」「ロイヤルドルトン(ROYAL DOULTON)」。フランスですと「セーブル(Sèvres)」「ヴァロリス(Vallauris)」「ジアン(GIEN)」。ドイツですと「マイセン(MEISSEN)」「ビレロイ&ボッホ(Villeroy & Boch)」「ローゼンタール(Rosenthal)」「フッチェンロイター(HUTSCHENREUTHER)」。そのほかにも、オーストリアの「アウガルテン(AUGARTEN WIEN)」、イタリアのマヨリカ陶器を起源とする「リチャードジノリ(Richard Ginori)」、スウェーデンの「ロールストランド(Rörstrand)」、デンマークの「ロイヤル コペンハーゲン(ROYAL COPENHAGEN)」、ハンガリーの「ヘレンド(HEREND)」、アジアにおいてはタイの「宋胡禄(すんころく・スワンカローク・サワンカローク)」、トルコの「イズニク(イズニック)」、日本においては愛知県名古屋市の「ノリタケ(Noritake)」、京都府京都市の「たち吉(TACHIKICHI)」などが挙げられます。
それぞれ、産地や地名、創業者の名前、国営の窯や王室御用達などブランド化したルーツは違いますが、世界的に著名な陶磁器ブランドです。

次に産地ですが、中国・韓国・台湾等、お茶の文化が定着した東アジア圏における窯場が産地として有名です。特に日本における「陶磁器」の文化は顕著で、「陶器」ですと「益子焼(栃木県)」「笠間焼(茨城県)」「瀬戸焼(愛知県)」「常滑焼(愛知県)」「美濃焼(岐阜県)」「信楽焼(滋賀県)」「越前焼(福井県)」「楽焼(大樋焼:石川県など)」「丹波立杭焼(兵庫県)」「備前焼(岡山県)」「萩焼(山口県)」「唐津焼(佐賀県)」「小鹿田焼(大分県)」「薩摩焼(鹿児島県)」「壺屋焼(沖縄県)」などが陶器類(一部、炻器として分類されることも)に分類されており、産地や窯場によっては古美術品としても重宝されています。
一方「磁器」ですと、「九谷焼 (石川県)」「京焼・清水焼(京都府)」「砥部焼(愛媛県)」「伊万里焼・有田焼(佐賀県)」「波佐見焼(長崎県)」などが有名です。
また、日本では古より陶器と茶道との結びつきが強く、「一楽二萩三唐津(いちらくにはぎさんからつ)」といった、茶人における茶碗の好みや格付け(一つ目に楽焼、二つ目に萩焼、三つ目に唐津焼)、前述で紹介した茶人で戦国武将の小堀遠州が好んだ茶道具(陶器)「遠州七窯(えんしゅうしちよう・えんしゅうなながま)」などの言葉も生まれています。
さらに「陶器」の代名詞として、近畿より東では「瀬戸物(せともの)」、中国四国より西では「唐津物(からつもの)」と呼ぶ習慣があったり、中世から現代まで生産が行われている日本の伝統的な六か所の窯場を「日本六古窯 (にほんろっこよう)」として区別(瀬戸焼・常滑焼・越前焼・信楽焼・丹波立杭焼・備前焼)しており、近年では文化庁が認定する「日本遺産」にも選ばれています。

最後に、かの織田信長が茶器としての「陶器」を、恩賞として一国一城に値する価値まで高めたことは有名で、その中には現在国宝級のモノも存在しております。某人気鑑定TV番組においては、押入れや蔵に眠っていた「陶器」が重要文化財級の鑑定結果で話題を呼んだり、(本物の)良い陶磁器は時が経っても価値が下がりにくいことを証明しています。某TV番組の有名鑑定家曰く「陶器は使っているうちに、良い味わいが出て、良い景色が生まれる」と。一度、お家に眠っている陶磁器を使って楽しんでみたり、もしくは買取査定で価値を確認してみてはいかがでしょう。

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演

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