「金券」の歴史と種類について
2021/09/13
「金券」と聞いて、商品券やギフト券などを思い浮かべる方は多いでしょう。実は、一言で「金券」と言っても、法律上の括りによる様々な種類、発行元も多岐にわたり、おつりが出るもの出ないものも存在します。今回はそんな「金券」についての定義や種類、その由来について触れてみたいと思います。
「金券」の定義とは
「金券」といえば、いわゆる百貨店やスーパー等で使える商品券・ギフト券・ギフトカード、または金券ショップなどで売られているプリペイドカード・新幹線の回数券・映画やスポーツのチケットなどを連想される方が多いかと思われます。
「金券」とは、紙幣や硬貨などの金銭ではないものの、金銭の代わりに通用するモノ(券・カード類)の総称になります。実は、法律上の定義や概念により「金券」という言葉は広義に解釈されており、収入印紙・小切手・国債証券なども、商法の有価証券法や小切手法など、それぞれの意味合いによって「金券」として括られることがあります。
それでは、今回解説させていただく「金券」とは。一般的に私たちが思い浮かべる「金券」は、古物営業法上の「金券」を指すことが多いです。
古物営業法では「金券類」として定義されており、そのほとんどが「資金決済に関する法律」により規定され運用しています。
ここで言う「金券」の代表的なものとして、商品券・ギフト券・ギフトカード・プリペイドカード等が挙げられます。
ちなみに、「商品券」と「ギフト券・ギフトカード」の違いはご存知でしょうか。
「商品券」とは「商品切手」とも呼ばれ、券面に表記されている金額や商品・サービスと引き換える義務があり、それを発行した企業・商店や加盟店が取り扱う物品切手を指します。百貨店などの全国共通の商品券が、その代表例です。そして「金券」は、通貨に似た性質を持ちますが、1回利用してしまうとその効力は無くなり通貨のように再び流通はしません。ただし、プリペイドカードのように残額が減少するものや、リチャージ可能なものも近年では登場しています。
「ギフト券・ギフトカード」とは、名前の通り一般的には「贈答用の商品券」を指しますが、クレジットカード会社が発行する「金券」には、券ではなく「ギフトカード」や「ギフトクーポン」などの名称がつけられていることが多いです。アメリカにおいては、代表的なギフトアイテムとして普及していますが、日本においては、マナーとして特に目上の人に贈る場合、ご祝儀など金銭を贈るときと同様に「施されている」などの感情を抱かれないよう注意が必要になります。また、補足として「商品券」や「ギフト券・ギフトカード」などを贈り物として渡す場合には、こちらも金銭と同様に手渡しすることが基本的な行儀作法となります。
ところで、「商品券」や「ギフト券・ギフトカード」を実際にご利用された方で、おつりが返ってくるものと返ってこないものを経験されたことはありませんか。
実は、日本における「商品券」や「ギフト券・ギフトカード」は、前述の「資金決済に関する法律」に規定する「前払式支払手段」により運用されており、前払いで支払われたその証書として発行された券という扱いになります。ですので、原則として現金による払い戻しは認められていません。もし、株券などのように払い戻しが出来てしまうと、発行のハードルが低い「金券」が世の中に出回り、現金の代わりに利用されるなど、日本経済や金融業界に大きな混乱を及ぼしかねません。ただし、法律上で発行額の20%程度なら、釣銭として払い戻しが認められているため、おつりが返ってくる「商品券」や「ギフト券・ギフトカード」が存在するのです。
おつりの返ってくる主な金券の代表例としては、デパートやスーパーが発行する商品券、旅行会社が発行する旅行券、グルメ系の食事券、全国共通のおこめ券やビール券などが挙げられます。
逆に、おつりの返ってこない金券の代表例として、クレジットカード会社の発行するギフトカード類、上場企業が発行する株主優待券などが挙げられます。
日本における「金券」の歴史
歴史の資料に残されている日本の「金券」の始まりは、諸説ありますが「商品券」だったと言われています。
国税庁の租税史料室が所蔵している租税に関する史料によると、商品券の発祥は江戸時代中期頃で、仙台地方で発行された「御厄介豆腐切手」が、現代につながる商品券の起源と言われているそうです。仙台地方では、懇意にする人へ日頃の感謝のしるしに豆腐を贈る慣例があったそうで、行事などで一時的に豆腐の購入が集中するのを避けるために、当時は保存手段もないこともあり、必要時に豆腐を受け取ることができる商品券が発行されたそうです。
江戸時代後期になると、老中田沼意次の政策で全国の金貨(小判)や銀貨などの貨幣価値が統一され、貨幣経済が発達したこともあり、当時経済の中心地であった大坂(大阪)において、1793年に高麗橋の菓子店「虎屋」(現在の和菓子店「鶴屋八幡」)の「饅頭切手」を皮切りに、「菓子手形」「酒切手」「煉羊羹切手」「寿し切手」「蒲鉾切手」など多種多様な商品券が発行され、通貨のように利用されるとともに冠婚葬祭などの贈答用としても多く用いられたそうで、現在の「ギフト券・ギフトカード」にも似ている用途であることが受け取れます。
また、将軍のお膝元の江戸(東京)では、天保年間(1830年~1844年)に日本橋で鰹節の商いをしていた「にんべん」の六代目高津佐兵衛により発行された、銀製の商品券「イ(にんべん)の切手」が、木や紙ではなく銀で価値を担保したことで、市井に広く流通させることに成功したそうです。その他にも明治期にはなりますが、日本橋「三越」の「呉服物切手」等が有名です。
ちなみに、「商品券」という名称は明治20年代に生まれたそうですが、それ以前は「切手」や「手形」と呼ばれることが一般的でした。
また、「金券」といえば「金券ショップ」のイメージは、切っても切り離せないでしょう。
今でこそ、大都市のビジネス街や駅前にお店が集中しているイメージですが、そのルーツは大阪梅田の地下鉄の切符売り場だったと言われています。その後、古銭や切手収集ブーム、電電公社(現:NTT)によるテレホンカードの発売などを経て、全国的に広がり、多岐にわたる商品を取り扱うようになったそうです。
「金券」の種類について
古物営業法上の「金券」という定義において、商品券・ギフト券・ギフトカード・プリペイドカードなどは、様々な種類や発行元が多く存在します。
例えば「金券」の形態ひとつとっても、「印刷物(紙)」「デジタル(コードなど)」「電子マネー」などが主たるものとして、購入手段においても、店舗やインターネットなどで購入できる買い切りタイプや、チャージ式などが存在します。
ここでは発行主体による分類で、代表的な「金券」の種類や具体的な券名を紹介したいと思います。
信販・クレジットカード会社が発行するもの
・JCBギフトカード
・VJAギフトカード
・三菱UFJニコスギフトカード
・UCギフトカード
・VJAトラベルギフトカード
旅行会社・交通機関が発行するもの
・JTBナイスギフト
・びゅう商品券
・JTB旅行券ナイストリップ
・ツーリスト旅行券
・JR東海ツアーズ旅行券
スーパーなどの小売店・百貨店が発行するもの
・全国百貨店共通商品券
・CGCグループ共通商品券
・イオン商品券
・セブン&アイ共通商品券
業界団体が発行し商品を限定したもの
・全国共通おこめ券(全国米穀販売事業共済協同組合)
・全国共通おこめギフト券(全国農業協同組合連合会)
・ビール共通券(全国酒販協同組合連合会)
情報通信企業が発行するもの
・日本郵便が発売する切手や通常はがき
その他企業が発行するもの
・全国共通お食事券ジェフグルメカード(全国約35000店舗の加盟店)
・QUOカード
・株主優待券(企業の事業サービス内容によって商品・サービスは異なる)
以上が主に有名な「金券」になりますが、ついでながらに、毎年10月9日は「金券の日」と2016年に制定され、なぜその日付なのかは、語呂合わせで10と9で「トク(得)」という意味からきているそうです。
最後に、近年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大の影響で外出自粛が続き、観光・飲食・交通・レジャー施設などの「金券」は利用する機会が著しく減少したと言われています。また、使用範囲が限定されていたり、おつりがでない上にクレジットカードと併用できないものなどは、たとえ外出ぜずにインターネットで購入を検討したとしても、勝手が悪いため「金券」を使用せずに家で眠らせてしまうこともあるかと思われます。使う予定がなく眠っている「金券」は、家計の足しとして専門事業者に買い取ってもらうことも、人によってはある意味「得(10・9)」かもしれません。
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