2024年におけるプラチナ価格の総括と2025年の展望
最終更新日:2025/05/02


大嶋 雄介
2010年にゴールドプラザに入社し、千葉店の店長として3年間で月間売上の最高記録を達成。鑑定士としてのキャリアをしっかりと積み上げました。その後、集客の戦略構想やSNSを活用したPR活動をしながら、リサイクル業界への深い理解と経験を積みました。現在は貴金属の換金業務に従事し、金融相場や市場動向の分析を通して緻密な専門知識を深化させています。BSテレ東「なないろ日和」などに出演。
◾️ 目次
金や銀と並び希少な貴金属であり、産業用途としても重要な役割を担う「プラチナ(白金)」。そんなプラチナの価格はリーマンショック以降、安値水準が続いており、金価格を大きく下回っています。今回は2024年のプラチナ価格を振り返るとともに、2025年の展望を考察していきたいと思います。
プラチナ価格に影響を与える要因
地球上で採掘されるレアメタルのなかでも特に稀少な「プラチナ(白金)」は、婚約指輪や結婚指輪といったブライダル用途での人気はもちろん、プラチナカード・プラチナチケットなどの特別な価値の象徴として、その名前は日常でも広く知られています。しかし、近年ではその価格が大きく変動しており、かつて金(ゴールド)よりも高価だった時代が嘘のように、2008年のリーマンショック以降は安値水準が続き、現在では金の価格を下回る状態が続いています。今回はそんなプラチナ価格・相場に影響を与える要因に加え、2024年を振り返るとともに、2025年の展望を解説させていただきます。
「プラチナ(白金)」の鉱山生産量
まずは、その希少性や多用途性から“白い黄金”とも呼ばれた「プラチナ(白金)」の鉱山生産量ですが、大手貴金属調査会社リフィニティブGFMS社における2019年のレポートによると、金(ゴールド)の鉱山生産量を100とすると、プラチナ(白金)の割合は5で、銀が791、プラチナの割り金や代用として使われるパラジウムも6といった具合で、同社発表の2018年世界全体の産出量を比べてみても、金の約3332トンに対し、プラチナは約185トンと主要貴金属の中でも群を抜いた希少性を物語っています。
「景気敏感資産」とは
ではなぜ、金より希少なプラチナの価格が逆転し価格差が広がってしまったのか、そこには同じ貴金属として分類されながらも、その性質が大きく異なる点が挙げられます。金(ゴールド)は「安全資産」として経済が不安定なときにも買われやすいのに対し、プラチナ(白金)は景気の波を受けやすい「景気敏感資産」としての性格を持っているからです。そのため好景気のときには金より高くなることもあれば、不況期には大きく値を下げることもあります。その理由として用途の違いがあり、一般人にとっては宝飾品としてのイメージが強いプラチナ(白金)ですが、世界市場においては主に工業・医療・化学用の触媒として利用されていることが多く、統計結果によると世界全体のプラチナの工業・医療・化学用途は約60%を超え、宝飾用途は約35%となっています。一方の金(ゴールド)は、工業用途が約7.5%、宝飾用途は約48%、その他は投資需要が占めるため、その性質が大きく異なります。
以上のような性質を鑑みながら、プラチナ価格・相場に影響を与える主要要因として「供給面の影響」「需要面の影響」「通貨為替レートの影響」「国際的な政治・経済情勢」などが挙げられます。
供給面の影響
プラチナの主要な鉱山生産国は上から南アフリカ・ロシア・ジンバブエの三カ国で、鉱山生産のおよそ90%を占めており、これら非常に限られた産出地域は常に政情不安・経済不振・労働問題・エネルギー不足といったさまざまな課題を抱え、供給が不安定になりやすく価格に大きく影響します。
需要面の影響
工業・医療・化学用途に多く利用されるプラチナは、特にその大半をディーゼル車の排ガス浄化装置(排ガス触媒)に使われており、2015年に発覚したフォルクスワーゲンの排気ガス不正問題や、地球温暖化問題によるヨーロッパを中心とした脱ディーゼル化の影響が需要減少の一因とされ、価格の下落が目立つようになりました。一方で宝飾品としての需要は、日本や中国を中心に根強い人気があり、景気が良ければその分だけ需要も伸びる傾向にあります。また金と同様に投資対象としての側面を持つプラチナの需要は、投資家によるETF(上場投資信託)などの売買動向を通じて、価格を押し上げたり下げたりします。
通貨為替レートの影響
プラチナは国際市場において米ドル建てで取引されているため、為替相場も価格に影響を及ぼします。たとえば円安が進行すれば、日本国内でのプラチナ価格は上昇し、円高であれば安くなるという仕組みです。加えて、アメリカの金利政策や世界的なインフレ動向など、金融面からの影響も無視できません。
国際的な政治・経済情勢
中東情勢やウクライナ侵攻などの地政学的リスクによる世界経済の成長鈍化や景気後退懸念は、プラチナ需要を減少させる可能性もあります。加えてトランプ関税の影響も見逃せません。トランプ大統領が掲げた保護貿易政策の一環として導入された関税政策は、特に中国などとの貿易関係に緊張をもたらし、世界経済の先行き不安を高め、こうした背景もまたプラチナ価格に対して中長期的に一定の影響を与えるとされています。
このようにプラチナ価格は、単一の要因によって決定されるのではなく、複数の要素が複雑に影響し合って変動しているのです。
2024年のプラチナ価格
2024年のプラチナ(白金)価格は、年初から終盤にかけて大きく変動し、投機的な売買や実質金利、ドル高、地政学的リスク、供給・需要の変化など、さまざまな要因に左右された一年となりました。特に目立ったのは投機筋の影響力が強く、実需よりも相場が投資家心理に敏感に反応した点が挙げられます。
米国の利下げと中東情勢
年初は米国の利下げ期待が高まる中、プラチナ価格は1015ドル台まで上昇。しかし、好調なアメリカの経済指標や金融政策を決定する会合FOMCのメンバーによる強行的な発言で再び実質金利が上昇し、プラチナ価格は3月には868ドルまで下落しました。4月にはイランとイスラエルの緊張関係による地政学的リスクで再び価格が上昇しましたが、反発は限定的で5月以降も乱高下が続きました。
中国の景気後退及び自動車需要の減退懸念
またプラチナは自動車の排ガス浄化触媒など産業用途が全体の約6割以上を占めますが、主要市場である中国の景気後退やディーゼル車離れ等で実需はやや低迷。一方で、金価格の高騰に伴う割安感から、投資需要や宝飾品需要が下支えとなり、特に中国・インド・アメリカでの需要が顕著でした。9月には南アフリカと並ぶプラチナ一大産地のロシアが資源禁輸を検討しているとの報道を受け再び価格が急騰。NY先物は1010ドルを上回る場面もありました。しかし12月には再び下落し920ドル台まで値を下げており、ドル高進行や中国経済の不透明感、自動車需要の減退懸念などが下押し要因となりました。
このように2024年のプラチナ価格は、需給ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)以上に、地政学・金融政策・投機動向など外的要因に大きく振り回された年だったと言えます。
2025年プラチナ価格の展望
前述でも述べたとおり、プラチナ価格の将来を考えるうえで鍵となるのは、世界の経済状況と産業構造の変化、そして政治的な影響です。新型コロナウイルスによる経済の混乱から数年が経過した現在でも、世界各国は景気の回復途上にあり、その動向がプラチナ市場にも大きな影響を与え続けています。
ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止
とりわけ自動車産業は、プラチナ需要の主要な柱の一つですが、大きな転換期を迎えています。欧州諸国を中心に、内燃機関を持つガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止が段階的に発表されており、排ガス浄化装置向けのプラチナ需要が減少していくことは避けられません。ノルウェーでは2025年から、スウェーデン・オランダ・ドイツでは2030年、英国は2035年、フランスでは2040年と、規制の波が広がっています。
次世代自動車、需要の柱
一方で、燃料電池車(FCV)などの次世代自動車では、プラチナが必要不可欠な触媒として再び注目されています。燃料電池は、従来のガソリン車やディーゼル車よりもはるかに多くのプラチナを必要とし、例えばディーゼル車の約10倍にも達する場合があります。このため、世界的な脱炭素化の流れが本格化すれば、新たな需要の柱としての役割を担う可能性もあります。
宝飾市場の変化
宝飾品としてのプラチナ需要についても、コロナ禍や景気低迷、少子化にともなう婚姻数の減少などの影響が継続しており、中国や日本を中心に市場は縮小傾向にあります。ただし、アメリカでは2021年以降、ブライダル市場を中心にプラチナジュエリーの需要が堅調であり、この流れが2025年以降にどう変化するかが注目されます。
プラチナの供給不足
さらに、2024年時点でのプラチナ市場では、供給が前年比で減少し需要が増加しているという“供給不足”の状況が生まれており、市場には価格上昇の圧力がかかりつつあります。この流れが続けば2025年には価格上昇の要因が生まれる可能性があります。
「第二の鉱山」
また、技術革新によって低コストなリサイクル技術が進展しており、スクラップ車や電子部品から回収されたプラチナが「第二の鉱山」として市場に供給されています。これにより、新たに採掘されるプラチナの供給が抑制される一方、地上在庫の流動化が進むことが予想されます。
「トランプ関税」の影響
こうしたなかで、見逃せない要素として挙げられるのが「トランプ関税」の影響です。2024年のアメリカ大統領選で再び注目を集めたトランプ前大統領は、再登場の動きとともに保護主義的な経済政策を再強化する姿勢を明確にしています。とくに中国や欧州などとの貿易摩擦が再燃した場合、プラチナを含む産業用金属や完成品に対する関税強化が発動され、サプライチェーン全体が混乱し、コスト増を背景に金属市場全体が不安定化するおそれもあるのです。実際に、2018〜2019年の第1次トランプ政権期には、米中貿易摩擦の激化により、希少金属をめぐる価格変動が激しくなり、投機的な資金流入が進みました。プラチナも例外ではなく、需要・供給の実需を超えた投資主導の値動きが生じる局面もありました。2025年に同様の動きが再来すれば、プラチナ相場も予測困難なボラティリティ(価格変動の度合い)に晒されることになります。
対ロシア制裁による供給
加えて、ロシアが世界のプラチナ生産量の1割以上を占めているという事実も、地政学的リスクとともに価格の変動要因として無視できません。仮に、対ロシア制裁などによって供給が制限されれば、需給バランスは一気にタイトになり、投機筋の資金流入も相まって、急激な価格高騰を招く可能性もあります。
主要国の景気減速懸念による価格変化
ただし、これらはあくまで前提条件が整った場合の話です。現実には、2025年を迎えた現在でも、米国をはじめとする主要国の景気減速懸念が根強く、金利政策や金融不安など、価格に下押し圧力を与える要因も同時に存在します。プラチナ価格は、こうした上昇・下落の両方の圧力を受けながら、しばらくは不安定な動きを続けることが予想されます。
まとめ
最後に、2025年のプラチナ価格を取り巻く環境は、エネルギー転換、自動車産業の変革、地政学的リスク、そしてトランプ関税による国際的な貿易摩擦など、実に多様な要因が絡み合っています。短期的には不透明感が強く、価格の乱高下も予想されますが、中長期的な視点では新たな需要の芽が着実に育ちつつあるとも言えるでしょう。特に燃料電池車やグリーン水素といった次世代技術が本格化すれば、プラチナ市場に大きな追い風が吹く可能性があります。日々の相場の動きや需給バランスを把握することは、こうした複雑な市場を読み解くうえで欠かせません。今後の価格動向に関心がある方は、最新の相場情報を日々チェックされることをおすすめします。
ぜひゴールドプラザの金相場・プラチナ相場推移チャートを参考にお役立てください。
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