オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)の歴史
最終更新日:2025/05/15


大嶋 雄介
2010年にゴールドプラザに入社し、千葉店の店長として3年間で月間売上の最高記録を達成。鑑定士としてのキャリアをしっかりと積み上げました。その後、集客の戦略構想やSNSを活用したPR活動をしながら、リサイクル業界への深い理解と経験を積みました。現在は貴金属の換金業務に従事し、金融相場や市場動向の分析を通して緻密な専門知識を深化させています。BSテレ東「なないろ日和」などに出演。
◾️ 目次
「世界三大時計ブランド」に数えられるスイスの名門

「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」は、パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)、ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)と並ぶ世界三大高級時計ブランドの一つとして広く知られています。
1875年の創業以来、140年以上にわたり一族経営を守り続けている、極めて稀有なスイスのマニュファクチュール(自社一貫製造の時計メーカー)です。
また、グループ企業に属さず、本社も創業地であるル・ブラッシュ村から移転せずに営業を続けるなど、ブランドとしての一貫性と独立性を堅持しています。
創業は2人の若き時計師から
スイス・ジュウ渓谷から始まった挑戦
ブランドの始まりは1875年、スイスの時計産業の中心地ともいえるジュウ渓谷のル・ブラッシュ村。この地で育った幼なじみのジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲの2人の若き時計師が、情熱を注いで設立した小さなアトリエが、オーデマ・ピゲの原点です。
ジュールは製造部門、エドワールは営業・経営部門を担当し、それぞれの役割を全うすることでブランドは急成長を遂げました。

複雑機構で世界を魅了した初期の挑戦
1885年にジュネーブ支店を開設、1889年のパリ万国博覧会では複雑機構を備えた懐中時計「グランコンプリカシオン」を発表し、世界的な評価を獲得しました。
さらに1892年には世界初のミニッツリピーター搭載腕時計を開発、1915年には世界最小のファイブミニッツ・リピーターを発表するなど、創業当初から卓越した技術力を武器に存在感を示してきました。
困難を乗り越えた一族経営の継承
世界大戦と大恐慌の影響を受けて
1918年と1919年に創業者2人が他界した後、それぞれの子であるポール=ルイ・オーデマとポール=エドワール・ピゲが2代目を継承。しかし第一次世界大戦や世界恐慌の影響により、経営は困難を極めました。
その後、3代目のジャック=ルイ・オーデマやポーレット・ピゲが会社を引き継ぎ、1946年には世界最薄の手巻き時計(厚さ1.64mm)を開発するなど、復活の兆しを見せ始めます。

クォーツショックとロイヤルオークの誕生
革新の象徴「ロイヤルオーク」
1970年代、セイコーによるクォーツ時計の登場(クォーツショック)で、多くの高級時計メーカーが苦境に立たされるなか、オーデマ・ピゲは起死回生の一手として1972年に「ロイヤルオーク」を発表します。
デザインを手がけたのは、天才デザイナージェラルド・ジェンタ。
八角形ベゼル、ビス留めのベゼル、ステンレススチール製ケースなど、当時としては画期的なデザインを採用し、高級スポーツウォッチという新ジャンルを築き上げました。
卓越した技術の継承と進化
ロイヤルオーク以降の革新モデル
オーデマ・ピゲは、「ロイヤルオーク」以降も革新を続けます。
- 1978年:世界初の自動巻きパーペチュアルカレンダー搭載腕時計を発表
- 1986年:世界最薄の自動巻きトゥールビヨン腕時計を開発
- 2006年:潤滑油不要の独自機構「APエスケープメント」を発表
これらはすべて、代々受け継がれてきたクラフトマンシップと技術力の賜物といえるでしょう。

現在も変わらぬ哲学と魅力的なコレクション
継続する一族経営と進化するラインナップ
現在、4代目のジャスミン・オーデマ(取締役会会長)とオリヴィエ・オーデマ(取締役会副会長)がブランドを率いており、本社は今もル・ブラッシュにあります。
ロイヤルオークは、よりスポーティに進化した「ロイヤルオーク オフショア(1993年)」や、ハイテク機構を融合した「ロイヤルオーク コンセプト(2002年)」へと発展。
そのほかにも以下のようなコレクションが展開されています。
- ミレネリー(1995年):楕円形ケースが特徴的なデザイン性と技術の融合
- CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ(2019年):クラシカルな意匠と革新的ムーブメント
- リマスター01:歴史的モデルを現代に蘇らせたクロノグラフ
- ジュール オーデマ:創業者へのオマージュとしてのコレクション
- レディースラインやハイジュエリーウォッチ:女性向け高級モデルの展開も豊富
未来へ受け継がれる理念とクラフトマンシップ
ブランドが追求するのは「完璧な時計作り」
オーデマ・ピゲは、現在も創業地にホテルやミュージアムを展開するなど、ブランド価値を高める施策を多角的に展開。また、MARVELとのコラボレーションモデルも話題を集めています。
高級時計マーケットプレイス「Chrono24」が発表した2021年の価格上昇率ランキングでは、ロイヤルオークが80%の上昇率で堂々の1位を記録。これは、同ブランドのタイムピースが今なお高い評価を受けている証拠です。
副会長のオリヴィエ・オーデマはこう語ります。
「1875年にすべてが始まったル・ブラッシュにおいて、知識や技術を未来へ継承していく責任が私たちにはあるのです。」
この言葉にこそ、伝統と革新を両立し続けるオーデマ・ピゲの矜持が込められているのです。