オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)の歴史

2022/03/01

「世界三大時計ブランド」や「世界三大高級時計メーカー」などと称される、スイスのマニュファクチュール「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」。
創業以来4世代140年以上にわたり、一族経営を続ける稀有なブランドです。今回はそんな「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の歴史を辿っていきたいと思います。
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2人の時計師から始まったブランドの一族経営

創業から140年以上にわたり創業家一族により経営を続ける、スイスの名門マニュファクチュール(自社一貫製造する時計メーカー)「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」。ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin )、パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)と並び、「世界三大時計ブランド」や「世界三大高級時計メーカー」などと称されています。
また、創業から一度もコングロマリット(複合企業)などのグループ傘下にも入らず、創業地から本社も移転せず営業を続ける稀有なブランドでもあります。
その創業は1875年で、スイスのジュウ渓谷にあるル・ブラッシュ村からスタートします。ジュウ渓谷はスイス高級時計の発祥の地として有名で、農家が長い冬の間の農作業ができない時期に、時計の製作に勤しんだことから時計職人が生まれる土壌が培われてきたと言われています。
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そんなル・ブラッシュ村の幼馴染みであった、若き時計師ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲが、時計に対する熱い想いから立ち上げたアトリエこそが、2人の名をとった「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の始まりになります。
設立後は、主にジュールが時計製作、エドワールが営業面に力を入れ会社の繁栄に尽くします。その結果、高い品質と精度を兼ね備えた時計が次第に評判となり、1885年にはジュネーブに支店を開設、1889年のパリ万国博覧会においては、パーペチュルカレンダー・ムーンフェイズ・ミニッツリピーターなどを搭載した複雑機構の懐中時計「グランコンプリカシオン」を発表、1892年には一定の経過時間を金属音で知らせるミニッツリピーター機能が搭載された腕時計を開発、そして1915年に世界最小のファイブミニッツ・リピータームーブメントを発表するなど、世界中の時計愛好家を驚愕させ、複雑機構を備えた高級時計メーカーとしての礎を築きました。
1918年にジュール、1919年にエドワールが続けて亡くなり、その子供たちであるポール=ルイ・オーデマとポール=エドワール・ピゲがそれぞれ2代目を継承しますが、時代が第一次世界大戦や世界恐慌と重なり経営の苦しい時世が続きました。
3代目として1933年からはジャック=ルイ・オーデマ、その後ポーレット・ピゲがそれぞれ事業を引き継ぎ、第二次世界大戦後の1946年に、世界最薄1.64mmの手巻き腕時計を開発するなど経営面での復活も果たしますが、1970年代に入るとセイコー(SEIKO)によりクォーツ式腕時計が開発されたことで起こったクォーツショックにより、多くの機械式時計メーカーやブランドが経営危機に瀕することになります。

名作「ロイヤルオーク 」の誕生と卓技した技術の継承

クォーツショックにより機械式時計の需要が下がるなか「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」は、後にブランドの象徴となる名作「ロイヤルオーク」を1972年に発表します。当時の最高経営責任者の1人であったジョルジュ・ゴレイが、「今までとは違う斬新な時計を発表したい」という発想から、後に天才時計デザイナーとして知られるジェラルド・ジェンタに依頼し誕生しました。
「スポーティー・ラグジュアリー」といったコンセプトでデザインされた時計は、高級腕時計としては世界初のステンレススチール素材を用い、イングランド王チャールズ2世が追っ手から身を隠したと言われる伝説の樫の木に由来して名付けられた、イギリスの軍艦「ロイヤルオーク」の船窓をイメージした八角形のベゼルとネジの特徴的なデザインと、耐久性や防水性にも非常に優れた機能面から、ラグジュアリースポーツウォッチの先駆けとして注目を集めました。
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高級スポーツモデルの祖とも呼ばれ、現在もオーデマ・ピゲを代表する人気モデルで、中古市場においても常に高額で取引されています。
一方、「斬新」とは真逆の「伝統」を守りさらなる高みを追求する精神も、オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)の重要な要素と言えます。創業以来、世代から世代へと卓技した技術の継承が行われ、そのクラフトマンシップにより創業者2人に引けを取らないタイムピースを創造してきました。ロイヤルオークの発表以降も、1978年に世界初の自動巻きパーペチュアルカレンダー搭載の腕時計、1986年に世界最薄の自動巻きトゥールビヨン腕時計、2006年には世界初の潤滑油が不要な独自新機構「オーデマピゲ脱進機(APエスケープメント)」を開発するなど、最高峰の技術力で時計業界を席巻していきます。

時代を経ても色褪せないオーデマ・ピゲのタイムピース

現在、4代目としてジャスミン・オーデマ(取締役会会長)とオリヴィエ・オーデマ(取締役会副会長 ※苗字は異なるが初代エドワール=オーギュスト・ピゲの曽孫 )が経営を担っており、ル・ブラッシュにて今も生まれるタイムピースは世界中で愛される存在となっています。
前段の「ロイヤルオーク」はファーストモデル以降も、よりスポーティでパワフルにデザインし1993年に発表された「ロイヤルオーク オフショア」、2002年には最新のメカニクスを結集した「ロイヤルオーク コンセプト」を展開するなど、たゆまぬ進化を続けています。
また、「ロイヤルオーク」以外のコレクションとして、楕円のケースが特徴的なコンテンポラリーデザインと技術的ノウハウを融合させた「ミレネリー」(1995年発表)、クラシカルな意匠と最新のムーブメントを搭載した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(2019年発表)、そのほかにもレコードのリマスター版のようなデザインのクロノグラフ「リマスター01」、初代ジュール=ルイ・オーデマのオマージュコレクション「ジュール オーデマ」、女性向けとしてハイジュエリーモデルやロイヤルオークのレディースモデルなど、時代を経ても色褪せない高いデザイン力と機能性で、世界中の人々を魅了し続けています。
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最後に、現在「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」は、創業地にホテルやミュージアムといった施設を展開し、MARVEL(マーベル)などとのコラボ商品を発表するなど、多角的に事業を推し進めていますが、完璧な時計作りと企業哲学は創業当時から変わらずに貫き、その証拠に世界最大級の高級時計マーケットプレイス「クロノ24(Chrono24)」が発表した、2021年の価格上昇率が高かったモデルランキングにおいては、「ロイヤルオーク」が上昇率80%として見事にナンバーワンを獲得しています。
取締役会副会長のオリヴィエ・オーデマ曰く、「1875年に全てが始まったここ、ル・ブラッシュにおいて知識や技術の枠を未来の世代へと受け継いでいく責任を負っているのです」。この言葉に、ブランドの時計製作に対する真摯な姿勢と覚悟が垣間見えるような気がします。