高級腕時計の投資について
2021/07/05
昨今のコロナ禍において、実物資産による投資が話題にあがっていますが、その中で注目を浴びている投機の一つに「高級腕時計」の投資があります。今回は、そんな「高級腕時計」の嗜好的な側面からではなく、投資対象としての側面から解説させていただきます。
「腕時計投資」のメリットとは
近年、世界中で感染が蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済不況の影響で、株式などの金融資産とは別に、実物資産による投資に注目が集まっています。実物資産の投資といえば「不動産」や「金(GOLD)」が有名ですが、話題の投資対象としては、ジャパニーズウイスキーやヴィンテージワインなどの「お酒」、クラシックカーなどの「高級中古車」、有名バスケットボール選手が使用していたモデル(シグネチャーモデル)など特別仕様・限定生産の「スニーカー」等、多種多様に存在します。そして、その中でも今注目される実物資産の投資対象が「高級腕時計」になります。
これら投資対象には共通点があり、リセールバリュー(再販価値)が高い点が挙げられます。「腕時計投資」で言えば、自身で将来価値が上がる可能性の高い「高級腕時計」を購入し、買値以上に相場が上がった際に売却し売却益を得るといった投機的な要素も強い投資方法であり、世界的に見てもリセールバリューが高いため、中古腕時計のマーケットが成り立っているのです。
そんな実物資産として注目を浴びる「腕時計投資」ですが、他の投資とは違うメリットとして
・車や不動産に比べ維持費が安く、劣化しにくく保管がしやすい
・不動産などに比べ換金性や流動性が高い
・常に安定した需要があるため中古市場もしっかりしており、資産として価値が下がりにくく値持ちが良い
・他の投資対象とは異なり、普段は身につけて楽しむことができる
などが挙げられます。
いくつか補足しますと、「劣化しにくく保管がしやすい」点で言えば、高級腕時計には機械式のものが多く、これらは繰り返し修理可能で、断続的なオーバーホールを行えば永続して使用できます。「換金性や流動性」で言えば、すぐに現金化しやすいため経営者などに好まれる傾向にあります。「安定した需要」ですと、コロナ禍においては多くの人気ブランドの供給が滞り、世界的に需要が加速しました。
逆に「腕時計投資」のデメリットとしては、将来価値が上がる可能性が予測できるモデルについては入手が困難であり、ブランドの正規店に買いに行ってもモノがないことがほとんどで、モデルによっては購入の順番待ちや予約もできません。また、世界的なマーケットのため「外貨建て資産」の側面が強く、外国通貨の相場変動により損益が発生する「為替リスク」などの影響を受けることがあります。
投資向けリセールバリューが期待できる有名な腕時計
一概に「腕時計投資」と言っても、資産価値が下がりにくく、リセールバリュー(再販価値)の高い腕時計がどんなものなのか、わからない方もおられるはずです。また、多くの高級腕時計ブランドがひしめくなか、その恩恵を受ける腕時計は一部のモデルに限られてきます。そこで、まずは資産価値の高い腕時計の特徴をいくつか説明させていただきます。
ブランドの信頼性
人気や知名度はもちろんのこと、長きに渡る歴史や伝統に裏付けされた技術力にて製作された機械式腕時計は壊れにくく、オーバーホールや修理を行う体制も万全で、永続的に使用できることから、ブランドとしての信頼も高まり、製品への評価につながっています。
希少性
資産価値の高くなる傾向の腕時計は機械式のものが多く、それらは職人による手作業にて作られているため、必然的に生産量も限られてしまい、市場への供給量も少なくなります。また、記念モデルや限定モデルも同様で、流通量・供給量が少ない分、その希少性から資産価値が高まります。
万人受けのデザイン
ブランドのアイコンとなるようなロングセラーの定番モデルは、時代を経ても需要がなくならない証であり、そのため資産価値も安定しています。また、このような定番モデルや人気シリーズは、モデルチェンジしていることも多々あり、生産中止となった旧モデルは資産価値も高まる傾向にあります。
以上が、傾向として資産価値が高くなる腕時計の共通点になります。ただし、腕時計も他の投資と同じようにトレンドに左右されることがありますので、人気俳優が映画でつけていた時計がブームになるなど、一時的に急騰するモデルも存在します。
それでは、ここからは「腕時計投資」向けのリセールバリューが期待できる有名な腕時計のモデルを、一部紹介させていただきます。
ロレックス(ROLEX)
「高級腕時計」といえば、誰もが知る高級時計ブランド「ロレックス(ROLEX)」の名前を思い浮かべる方は多いと思われますが、実はロレックス(ROLEX)でも投資向けのモデルと、それ以外のモデル(現状はやや向いていない)が存在します。特に近年高騰を続けているモデルが、スチール製のスポーツモデルになります。とりわけ「コスモグラフ デイトナ」などは、新品として正規店で購入することは難しく、何店舗も回って見つけることを「デイトナマラソン」「ロレックスマラソン」などと言われるほどで、中古市場においても取引が活発で、数年で数百万円以上も値上がりしている型番が存在します。
◆コスモグラフ デイトナ
・Ref.116500LN(現行モデル)白文字盤・黒文字盤
・Ref.116520(旧モデル)白文字盤・黒文字盤
◆サブマリーナ
・Ref.126610LN(現行モデル)
・Ref.116610LN(旧モデル)
・Ref.126610LV(現行モデル)グリーンベゼル ※通称:グリーンサブ
・Ref.116610LV(旧モデル)グリーンベゼル ※通称:グリーンサブ
◆GMTマスターII
・Ref.126710BLNR 青黒ベゼル
・Ref.126710BLRO 赤青ベゼル ※通称:ペプシ
・Ref.126711CHNR エバーローズロレゾール ※ステンレススチールと18金を使用したモデル
◆シードゥエラー
・Ref.126600 ※通称:赤シード
◆エクスプローラーI
・Ref.214270
◆エクスプローラーII
・Ref.216570
このほかにも、ドレスウォッチの代名詞「デイトジャスト」などリセールバリューが期待できるでしょう。
そして、ロレックス(ROLEX)以外で、有名な投資向け腕時計で言いますと、やはり世界三大高級時計メーカーとして知られる「パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)」「オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)」のモデルが有名です。
パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)
創業から約180年の永い伝統と歴史を誇り、世界最高峰のマニュファクチュール(自社一貫製造する時計メーカー)と称される老舗ブランドです。特にスポーツモデルとして人気の高い「ノーチラス」「アクアノート」は、資産価値が下がりにくいモデルと言われており世界的にみても入手困難で、中古市場においても数百万円単位で取引されています。
◆ノーチラス(5711/1A系)
・ref.5711/1A-010
◆アクアノート(5167/1A系)
・ref.5167/1A-001
オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)
1875年の創業以来、一族経営を続ける稀有なブランドとしても有名で、天才時計デザイナーとして知られるジェラルド・ジェンタにより手がけられたスポーツモデル「ロイヤルオーク」は、中古市場においても常に数百万円単位で取引されています。
◆ロイヤルオーク (15400ST系)
・ref.15400ST.OO.1220ST.01 黒文字盤
・ref.15400ST.OO.1220ST.02 銀文字盤
・ref.15400ST.OO.1220ST.03 青文字盤
◆ロイヤルオーク・エクストラシン (15202ST系)
・ref.15202ST.OO.1240ST.01
ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
1755年創業のスイスの名門時計ブランドとして、250年以上続く伝統から培われた最高峰の技術力が、多くの王族や貴族に愛されてきました。そんなメゾンの腕時計は圧倒的に供給量が少なく希少価値も高いことから、中古市場でも数百万円単位はもとより、型番によっては1千万円以上で取引されるケースもあります。スポーツモデルの「オーヴァーシーズ」は、常にリセールバリューが高いモデルとして知られています。
◆オーヴァーシーズ(4500V系)
・ref.4500V/110A-B128
・ref.4500V/110A-B126
以上になりますが、このほかにも「ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)」「インターナショナルウォッチカンパニー(IWC)」「ブランパン(BLANCPAIN)」「オメガ(OMEGA)」などの高級腕時計ブランドの人気モデルも、投資対象として期待できるでしょう。
予想される高級腕時計の相場
高級腕時計の相場は、他の投資対象と同様に社会情勢や経済に大きく影響を受けます。2008年リーマンショックの時には、高級腕時計の平均相場は大きく下落し、一定水準の回復までに長い年月を要しました。一方、2020年の初頭から世界的に感染が拡大した新型コロナウィルスによる経済不安においては、一時的に高級腕時計の平均相場は下落したものの、すぐに急回復し現在も上昇傾向にあります(2021年7月時点)。このように同じ経済不安が要因でも、相場の傾向は変わってきます。リーマンショック時の下落は、高級時計の買い控えが主な要因と言われていますが、コロナ禍においては高級時計の生産拠点が置かれているヨーロッパ各国のロックダウンにより、ブランド各社は生産ラインを停止したために一時的な下落は見せたものの、流通量・供給量が激減したことで、需要が急速に伸び上昇傾向に転じたと言われています。
そして日本においては、多くの専門家やメディアが、前述で紹介させていただいた主要ブランドを中心に、高級腕時計の平均相場は今後もしばらく上昇傾向にあると見解を示しています。
その理由として、コロナウィルスの変異株なども踏まえ、ある程度の収束まで旅行など外出できない分そのお金で、嗜好品として、また将来の経済的不安から投資目的の実物資産として、高級腕時計を購入する人がコロナ前に比べ大幅に増えたことを挙げています。
最後に、投資の基本は「安いときに買い、高いときに売る」です。高級腕時計の投資もまた、買い時や売り時のタイミングを見極めることが重要になります。例えば、流行しているモデルは価格が高騰しているため、買うにはリスクはありますが売るにはチャンスといえます。特に高級腕時計の中古市場は、取引が活性化し市場としても注目されています。そのため相場やトレンドなどに精通する買取・販売事業者も多く存在します。
高級腕時計の投資をこれから始められる方、すでに投資をされている方、メンターとしてこのような買取・販売事業者に相談することも投資を成功させる秘訣と言えるでしょう。
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