パール(真珠/Pearl)の養殖について
2017/12/04
養殖真珠は、真珠貝に核(外套膜の組織片)を挿入するなど、人の手を加えてつくりだしますが、天然真珠と成分や構造は基本的に同じです。
日本を代表するアコヤ貝の真珠養殖について触れてみましょう。
アコヤ貝の養殖の主な手順は以下の通りです。
~母貝採取と育成~
真珠を作る貝である母貝を採り、真珠を育てられる大きさになるまで育てます。
母貝の採り方は大きく二つあり、一つは、天然採苗(てんねんさいびょう)といい海中で孵化した稚貝を採取します。
もう一つは人工採苗(じんこうさいびょう)といい、人工授精による採集です。
~仕立て~
真珠養殖には、核を挿入する手術が必要になるため、貝にとって刺激などによるショック死や脱核を防ぐため、ある程度の期間、神経活動や各臓器の活動が抑制させてあげないといけません。
そのため、母貝を深い冬眠状態にしてあげることを「仕立て」と呼びます。
~挿核手術(核入れ)~
養殖真珠の核(外套膜の組織片)を母貝の中に挿入する手術のことで、養殖場では「玉入れ(珠入れ)」などと呼んだりします。
この作業により真珠のその後の品質に影響を与えます。
~母貝の養生と沖出し~
急に海などの元の環境に置くと、過剰な生体防衛反応が生ずることがあるために、手術後の母貝の体力回復を意図として、養生かごに入れて塩分濃度の高い作業場でしばらく養生させます。
養生期間が終わると、「沖出し」という沖合いの筏で管理している場所で貝を成長させ、身を太らせていきます。
~浜揚げ~
養殖の完了した貝から真珠を採取する作業を浜揚げといい、通常は毎年12月~1月ぐらいの寒い時期に行います。
水温が下がると母貝の活動が低下し、照りが良い具合に現れるからです。
「越物(こしもの)」と「当年物(とうねんもの)」
たまに、「越物(こしもの)」や「当年物(とうねんもの)」などと養殖真珠を区別することがありますが、「当年物(とうねんもの)」は春に核入れして、冬の12月~1月に採集するサイクルなのに対し、「越物(こしもの)」は核入れ後に1年以上海で育った母貝から採集する真珠で、海にいる期間が長い分、巻きの厚い真珠が育つと言われていますが、現在は養殖真珠のほとんどが「当年物」と言われています。
養殖を発展させた日本のジュエラー
創業者である御木本幸吉がアコヤ貝の半円真珠の養殖生産に成功した「MIKIMOTO(ミキモト)」、幻の真珠と呼ばれたマベ貝の世界初の人口採苗技術を開発し、養殖に成功した「TASAKI(タサキ)」。
パール(真珠)の代名詞となった世界に誇るナショナルブランドとしての両者は、ネックレス、イヤリング、ピアスなど、その独自のクオリティ、技術、デザインでジュエリー業界を牽引し続けています。