オリンピックのメダルは何でできている?

2019/06/22

オリンピックの晴れ舞台である表彰式。そこでは、それぞれの競技者に授与される金・銀・銅といったメダルが首に掛けられます。はたしてオリンピックのメダルは、どのような経緯で生まれ、どんな材質で出来ているのでしょうか?今回はそんなオリンピックのメダルについて触れてみたいと思います。
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オリンピックメダルの歴史

 我々がオリンピック(五輪)と呼ぶ世界的なスポーツの祭典は、別名「近代オリンピック」と言い、19世紀にフランスの教育者であり、のちに近代オリンピックの父と呼ばれたクーベルタン男爵が、世界的なスポーツの祭典の開催を提唱し、古代ギリシアにて行われていた古代オリンピックを元に復興させたものと言われています。
現在は、夏季大会と冬季大会の各大会が4年に1度行われていますが、1896年の第1回大会であるギリシャ・アテネ大会から、1920年のベルギー・アントワープ大会までは、夏季と冬季が分かれていませんでした。
1924年になり、夏季大会としてフランス・パリ大会、初の冬季大会としてフランス・シャモニー・モンブラン大会に分かれての開催になりました。
ちなみに、日本の初参加は1912年のスウェーデン・ストックホルム大会で、のちに日本マラソンの父と呼ばれた金栗四三と、短距離の三島弥彦の二人が出場しました。日本人初のメダリスト誕生は、翌大会の1920年ベルギー・アントワープ大会で、テニス男子シングルスとダブルスの2種目において銀メダルを獲得しています。

 今でこそ、競技の1位「金メダル」、2位「銀メダル」、3位「銅メダル」と授与されることは当たり前になっていますが、第1回ギリシャ・アテネ大会では、資金不足の影響もあり優勝者には銀メダルとオリーブの花輪が授与されていたそうです。また、1900年の第2回大会のフランス・パリ大会では、大会運営側の混乱からメダルの製造が間に合わず、表彰式においてはトロフィーなどの代用品で間に合わせ、実際に選手の元には開催の2年後に届いたといわれています。
現在の金・銀・銅メダルのスタイルになるのは、1904年の第3回大会のアメリカ・セントルイス大会からでしたが、当初は首から掛けるものではなく、胸にリボンとともにピンで留めたものでした。
メダルのデザインについても、コンペ形式によりデザインを募ってみたり、有名なデザイナーや芸術家にデザインを依頼したりと各大会でデザインは異なりますが、夏季大会のメダルについては、1928年のオランダ・アムステルダム大会以降、メダルの片面に近代オリンピック発祥のスタジアム「パナシナイコスタジアム」に立つギリシア神話の勝利の女神「ニーケ」が描かれたデザインが採用され、現在まで続いています。
冬季大会においては、各開催都市において構成されるオリンピック競技大会組織委員会(OCOG)によって選択された、文化的要素および美的要素をデザインに反映させることが慣習として続いています。
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オリンピックメダルの規格について

 それでは、オリンピックのメダルにはどんな規格があるのか。国際オリンピック委員会(IOC)によって、大きさ、厚さ、重さなどの範囲が規定されており、2003年度までの「オリンピック憲章」には
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2.1
個人種目では、優勝者には銀台金張り(またはメッキ)のメダルと賞状が授与される。第2位には銀メダルと賞状、第3位には銅メダルと賞状が授与される。 メダルには、受賞の対象となった競技及び種目が明記され、競技者の首にかけられるように取り外し可能な鎖またはリボンに取り付けなければならない。 第4位、5位、6位、7位、8位の選手にも賞状は授与されるが、メダルは授与されない。1位、2位もしくは3位に同点者がでた場合、それらの選手にメダ ルと賞状が授与されるものとする。
2.2
メダルは、少なくとも直径60ミリ、厚さ3ミリでなければならない。1位及び2位のメダルは銀製で、少なくとも純度 1000 分の 925であるものでなければならない。また、1位のメダルは少なくとも6グラムの純金で金張り(またはメッキ)が施されていなければならない。
2.3
全てのメダル及び賞状のデザインは、OCOGがIOC理事会に提出して、事前に文書による承認を得なければならない。
2.4
団体競技、及びその他の競技に含まれる団体種目については、優勝チーム の全ての競技者は銀台金張り(またはメッキ)のメダルと賞状を、第2位のチームの全ての競技者は銀メダルと賞状を、第3位のチームの全ての競技者は、銅メダルと賞状を受ける資格を有するものとする。オリンピック競技大会前に、関係する IF との協議によりIOC 理事会は、オリンピック競技大会での試合または競技に一度も参加していない選手についてどこまで該当競技者の範囲として含めるかを、決定するものとする。第4位、5位、6位、7位及び 8位のチームの全ての競技者には、賞状が授与される。

(2003年度版「オリンピック憲章 規則70付属細則」抜粋)
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と言った主旨があります。
すなわち、金メダルと銀メダルについては、その大半が純度92.5%以上の銀(スターリングシルバー等)で出来ており、金メダルにおいては6グラム以上の金メッキを施したものと定められています。なぜ銀に金メッキを施すのかと言いますと、それは開催国によっての経済的な不利が無いようにとの配慮であると言われています。ちなみに、1912年のスウェーデン・ストックホルム大会までは純金の金メダルが使われていたそうです。

 しかし、2004年度版以降の憲章からは要約すると、「メダルと賞状の仕様とデザインは、国際オリンピック委員会(IOC)に事前に提出し、承認を得なければならない。」という主旨のみが残され、他の記載は見当たりません。
大きさ、厚さ、重さなどの細かい規定は無くなったかのようですが、実際は2012年のロンドン大会を例に挙げると、メダルの主な成分は、金メダルにおいては金6グラム・銀370グラム・銅24グラム、銀メダルは銀370グラム・銅30グラム、銅メダルは銅388グラム・亜鉛10グラム・すず2グラムという成分割合になるそうです。
つまり、メダルの細かい規定や審査基準はシークレットと言った感じなのではないでしょうか。

デザイン面においても、文化的な要素や美的要素を踏まえた上で、夏季大会は、表面は前述の「パナシナイコスタジアム」に立つギリシア神話の勝利の女神「ニーケ」が描かれたデザインで、裏面は大会の正式名称と競技名・大会のエンブレムが施されます。
冬季大会は、表面に大会の正式名称と大会のエンブレム、裏面に競技名は施され、地域の特性を活かしたメダルが製作される傾向があります。例えば、1998年の長野大会においては長野県の伝統工芸である木曽漆器を用い、2006年のイタリア・トリノ大会ではイタリアの伝統工芸である銀製品からインスパイアし、ドーナツ型形状のメダルが製作されました。

 また、一時メダリスト達がメダルを噛むと言う行為が選手の間で流行しましたが、これは欧米では昔から金貨の金の含有率を噛んで判別していたことに由来すると言われています。それが、「これは間違いなく金だ!」と言う表現につながったのかもしれません。
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2020年の東京オリンピックのメダルについて

 アジア地域において初めてのオリンピックとなった1964年の東京大会のメダルは、造幣局で製作され金・銀・銅メダル共に、大きさは直径60ミリ、厚さは3ミリ、重さは金メダル90グラム・銀メダル82グラム・銅メダル69グラムだったそうです。

 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会におけるメダルは、同じく造幣局で製作されますが、メダルの原材料となる金・銀・銅などの金属類を、「都市鉱山」と呼ばれる家庭に眠る要らなくなったパソコンや携帯電話などの小型家電から抽出し、リサイクル金属を活用してメダルを製作する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を実施しました。
リサイクル金属でメダルを作った前例は他の大会でもありましたが、国民が参加し全国各地から集めたリサイクル金属をもとにメダルを作る取り組みは初めての試みになります。

 以上になりますが、オリンピックのメダルと言っても材質の割合や様々な形状・デザインがあり、細かな規格が存在する事がお分かりになられたでしょうか?
また、メダルは選手達が獲得を目指すものでありますが、一般の方々が入手できるものとして「記念金貨」「記念銀貨」「記念切手」などがあります。こちらはオリンピックファンの間ではとても人気があるコレクションアイテムです。これから始まるオリンピックの記念として、入手することを考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

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