最高級の金属 「金」の性質
2015/06/24元素記号Au、原子番号79である金は、元素の周期表で見ると、第11族元素のグループに含まれます。
第11族元素は、銅や銀、レントゲニウムなども含まれ、貨幣金属などとも呼ばれています。
今回は、金の特徴や性質についてご紹介しましょう。
加工しやすい性質を持っている
金の性質の一つとして、展延性(てんえんせい)に優れている、つまり加工しやすいという性質を持っているという点が挙げられます。
1グラム程度の金で約3000メートルの金糸を作ることもできますし、1/10000ミリの薄さ、大きさにすると畳半畳ほどまで引き伸ばすことも可能です。
貴重な金から作る金箔が工芸品だけでなく、料理やスイーツ、美容用品といった消耗品にも使うことができるのは、この展延性と耐腐食性のおかげだと言えるでしょう。
耐腐食性に優れている
金の性質のひとつに耐腐食性に優れている点が挙げられます。金は錆びることや腐ることがなく、塩酸や硫酸などの劇薬でも溶かすことができません。
ですから、金メッキを施した製品には、ただ金に似せたものを作って見た目を美しくするというだけでなく、長持ちさせるための加工を施しているという意味もあるのです。
また、金はシャンパンやお吸い物、バレンタインのチョコレートまで、様々な食品の装飾にも利用されています。
金属を食べても大丈夫なの?と心配される方もいるかと思いますが、これも金の安定性と腐食しにくいという性質のおかげで、体内に入ってもそのまま排出されるだけなので無害なのです。
火事で溶けても価値が変わらない
金を加工する時も他の金属同様に、熱で溶かして加工しています。
金の融点(溶け出す温度)は約1064℃で、融点が約1084℃の銅とほぼ同じ温度で加工することが可能です。
しかし、大規模な火災などに見舞われてしまった場合、金は溶けてしまう可能性があります。
ここで火災現場の温度について考えてみましょう。
消防士などが着る防火服の耐熱性能は、1,000℃の熱を受けた場合に内側の温度が24℃上昇するのに13秒以上確保できなければいけないとされています。
つまり、非常に大きな火災で耐熱性能の基準となっている、1,000℃くらいの温度になっていると考えられます。
金の融点は約1,064℃ですので、天井が焼け落ちてしまうほどの火災に見舞われてしまった場合、金は溶けて変形してしまうでしょう。
しかし、金は一度溶かしたうえで再加工して使用するため、仮に溶けて変形していたとしても、重量が変わらない限りその価値が失われる事はありません。
希少金属であることに加えて変形しても価値が変わらないことが、金の資産価値を高める特徴になっています。
鉄よりも重みのある比重
全ての物質にはそれぞれ固有の比重値というのがあります。
この比重というのは、同じ体積である4℃の水に対する質量の比を表したもので、金の比重は19.3で銀や胴よりも重く、鉄と比べると2.5倍比重があります。
このように、とても重量感のある金属なので、金を手に取ったときに感じる重みが、金の輝きとともに高級感を味わえる魅力の1つになっています。
ちなみにこの比重を貴金属テスタ―などを使って測定することで、その金が本物かどうかを判定できます。
身近で活躍する電気伝導性
金なんて自分には縁遠いもの……と思っている方もいるかもしれませんが、実は日本人の多くが知らず知らずのうちに金を所有しています。
なぜなら、携帯電話の部品として金が使われているからです。
金は、信号をクリアに伝えてくれる電気伝導率が高いという性質があり、その加工しやすい性質もあいまって、精密機械などのさまざまな部品に使用されています。
最近では、使わなくなった携帯電話を回収し、部品として使われている金などの金属をリサイクルするといったことも一般的になっています。
そのほかにも、ヘッドホンのピンプラグなどに使用されており、その高い電気伝導率からクリアな音質を実現しています。
このように金にはその美しさで私たちを楽しませてくれるだけでなく、身近なものにも利用しやすいという性質、重量が変わらなければ価値が変わることがないという特徴があります。