皇室関連の記念金貨について

2021/11/04

日本で発行される金貨の中で「記念金貨」は、国の大きな行事を記念して発行されることが多く、スポーツの祭典・国際的なイベント・歴史の節目を記念したものなどが存在します。中でも天皇陛下およびその御一族である「皇室」に関連した「記念金貨」は、国内外において人気が高いことで有名です。今回は、そんな「皇室」にまつわる「記念金貨」について解説させていただきます。
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国内で発行される「記念金貨」とは

日本における「記念金貨」とは、総称として記念メダル・記念硬貨・記念コイン・記念貨幣などと呼ばれることもあり、一般的には国家を挙げてのお祝い事や大きな行事を記念して、内閣の閣議決定を経て発行される金(GOLD)を素材として作られた貨幣を指します。また、民間企業や施設等による記念を祝した金製のコイン・メダルなども存在しますが、貨幣ではありませんので「金貨」とは区別されることが多いです。

これまで発行された「記念金貨」には、オリンピックやワールドカップなどのスポーツの祭典、万国博覧会(日本国際博覧会)など国際的なイベント、郵便制度150周年や近代通貨制度150周年など歴史の節目を記念したもの、東日本大震災の復興に向けて発行されたもの、そして今回取り上げる皇室関連のものなどが存在します。
一方、記念貨幣という括りでいうと、その素材は金(GOLD)以外にも、銀・白銅(銅を主体としたニッケルを含む合金。100円硬貨等は白銅製)などが用いられています。また、日本でこれまで発行された記念貨幣は、すべて硬貨であり記念紙幣は発行されたことがありません。

国内初の記念貨幣は、1964年(昭和39年)のオリンピック東京大会を記念したもので、1000円銀貨と100円銀貨が発行されました。そして日本で最初の「記念金貨」は、昭和天皇の御在位60年を記念して、1986年(昭和61年)と1987年(昭和62年)に発行された10万円金貨になります。
ちなみに、1964年オリンピック東京大会の記念貨幣の販売は、当時人気の高まりによって高い収益が得られ、大会運営費に充てがわれたそうです。以降、オリンピック大会における記念貨幣の発行は、大会運営費充当の目的として慣例化することになったと言われています。

話を元に戻しますと、現在日本で発行された「記念貨幣」は、全て法定通貨(通常の貨幣)として利用することは可能です。しかし、額面における金額と販売価格に大きな差があるため、通常の通貨として利用される方は非常に少ないと言われています。
例えば「記念金貨」で言いますと、先の東京2020オリンピック競技大会記念貨幣(第一次発行分)の1万円金貨は、販売価格は12万円でした。額面上では1万円ですので、その差額を考えれば通常の通貨1万円として利用される方は稀であるという理屈です。また、販売価格の設定については、発行時の素材の原価と加工・意匠料によって決められていると言われています。特に金(GOLD)を使った金貨などは、現在(2021年11月時点)高騰を続けているため、同じグラム数の金貨を製造したとしても発行のタイミングにより販売価格も変わってきます。
なぜこのような価格設定になったのかと言いますと、日本で最初の金貨である昭和天皇の御在位60年を記念した10万円金貨の販売時期に、大量の偽造金貨が出回ったことに端を発しています。この記念金貨は、素材となる金(GOLD)の発行時の原価よりも額面価格を高く設定(額面価格10万円に対し、当時の金価格と製造コストを合わせても半分以下の原価率だったと言われています)したことで、額面よりも低コストで作れてしまうため、その差分を利益にできるカラクリから、大量の金貨が偽造されてしまいました。そのため販売価格とは別に以降は、金(GOLD)など貴金属を含む記念貨幣に設定される額面は、素材となる貴金属の重量を調整するなど、発行時の素材の原価よりも低く設定されることが通例となりました。
一方、加工・意匠に関しても、偽造防止などを目的に高度な技術加工が施された「プルーフ貨幣」として、またシリアルナンバーが振られていたり、専用のケースやブリスターパックに納めて販売するなど、工夫が施されています。
現在では、このように額面以上の価格で販売される「プレミアム型」が、記念貨幣としては主流となっています。

そして、「記念金貨」などの記念貨幣の製造・販売は、内閣の閣議決定を経て財務省が所管し発行され、造幣局が製造し販売します。金貨や銀貨など貴金属を含む記念貨幣で、製造コストが額面を超えるものは、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」によって、造幣局が販売することが定められています。ただし、購入には事前に造幣局に申し込む必要があり、購入希望者が多い場合などは抽選となります。
特に人気高騰が予想されるテーマの「記念金貨」などは、抽選倍率も数十倍にのぼると言われています。
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今までに発行された皇室関連の「記念金貨」

日本において、天皇陛下およびその御一族である「皇室」に関連した「記念金貨」は、現在まで7種類発行されました(2021年11月時点)。
テーマとしては「天皇陛下の御即位を記念したもの」「天皇陛下の御在位を記念したもの」「御成婚を記念したもの」に分けられ、昭和天皇から今上天皇に至る国家的な慶事として発行されており、その美しい図柄や加工技術は芸術性の高い「記念金貨」として、国内外の収集家・コレクターから人気を博しています。

発行年の古い順からご紹介いたしますと

天皇陛下御在位60年記念 100,000円金貨幣

図柄(表)鳩と水(鳩は平和 水は日本の自然と稲作文化を表現)
図柄(裏)菊花紋章
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 20グラム
直径 30mm
発行年 昭和61年・昭和62年
昭和天皇の御在位60年を記念して2回発行された、日本初の「記念金貨」になります。発行枚数は、昭和61年1000万枚、昭和62年100万枚。参考として当時の販売価格は、11万7300円(昭和62年度)、プルーフ金貨12万6500円(昭和62年度)。

天皇陛下御即位記念 100,000円金貨幣

図柄(表)鳳凰と瑞雲
図柄(裏)菊花紋章と桐と唐草
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 30グラム
直径 33mm
発行年 平成2年
現上皇陛下(明仁上皇)が、天皇として御即位されたことを記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、200万枚。参考として当時の販売価格は、プルーフ金貨11万3300円。

皇太子殿下御成婚記念 50,000円金貨幣

図柄(表)瑞鳥の鶴2羽と波
図柄(裏)菊花紋章と梓
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 18グラム
直径 27mm
発行年 平成5年
今上天皇(徳仁天皇)の皇太子時代の御成婚を記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、200万枚。参考として当時の販売価格は、プルーフ貨幣3点セット(5万円金貨・5千円銀貨・5百円白銅貨)7万円。

天皇陛下御在位10年記念 10,000円金貨幣

図柄(表)鳳凰と桐と白樺
図柄(裏)菊花紋章と橘と桜
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 20グラム
直径 28mm
発行年 平成11年
現上皇陛下(明仁上皇)が、天皇として御在位10年を記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、20万枚。参考として当時の販売価格は、4万1000円。

天皇陛下御在位20年記念 10,000円金貨幣 

図柄(表)鳳凰と瑞雲と皇居・二重橋
図柄(裏)菊花紋章
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 20グラム
直径 28mm
発行年 平成21年
現上皇陛下(明仁上皇)が、天皇として御在位20年を記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、10万枚。参考として当時の販売価格は、8万円。

天皇陛下御在位30年記念 10,000円金貨幣 

図柄(表)鳳凰と桐と白樺
図柄(裏)菊花紋章
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 20グラム
直径 28mm
発行年 平成31年
現上皇陛下(明仁上皇)が、天皇として御在位30年を記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、5万枚。参考として当時の販売価格は、プルーフ貨幣セット13万8000円。

天皇陛下御即位記念 10,000円金貨幣 

図柄(表)鳳凰と瑞雲
図柄(裏)菊花紋章と梓とハマナス
素材・品位 純金(K24・24金)
量目 20グラム
直径 28mm
発行年 令和元年
今上天皇(徳仁天皇)が御即位されたことを記念して発行された「記念金貨」です。発行枚数は、5万枚。参考として当時の販売価格は、プルーフ貨幣セット14万0555円。

以上の7種類になります。
また、金貨ではありませんが国内では1976年(昭和51年)に、昭和天皇の御在位50年を記念して「天皇陛下御在位50年記念100円白銅貨幣」なども皇室関連の記念貨幣として発行されており、海外においては、1989年に西アフリカのリベリア共和国にて、各国元首記念シリーズとして昭和天皇の肖像が描かれた10ドル記念銀貨が発行されています。

「記念金貨」の価値とは

今回紹介させていただいた「記念貨幣」や「記念金貨」は、流通させる目的で発行されたものではなく、価値の高い記念品としてコレクション(収集目的)の意味合いが強いものです。ですので、基本的には「愛蔵品」として楽しむことが趣旨となります。
もし、購入後に何らかの事情により手放すことになった場合、当然ながら通常の貨幣として使用することは可能ではありますが、特に「記念金貨」に関しては、素材が純金(K24・24金)ということもあり、金相場が高騰すれば購入時の金額より高く取引されるケースも少なくありません。もちろん、貨幣を鋳潰したり形を変形させることは法律で認められていませんが、金貨をそのまま換金することは可能です。
主な換金方法としては、「両替」と「買取」が代表的な手段となります。
「両替」は、銀行や郵便局等の金融機関にて、額面価格で換金する手段です。一方の「買取」は、古物営業法の古物商許可を取得した買取専門事業者に買い取ってもらう手段で、こちらは額面の価格ではなく金相場を考慮しながらも、その「記念金貨」の持つ人気・需要により買取金額の査定が行われます。
もともと「記念金貨」は、発行枚数が限定されており金(GOLD)という素材の希少性から、高い価値を有していますが、特に国民に愛される皇室関連の「記念金貨」となれば、更なる付加価値も加わり人気・需要が高いものが多く存在します。

世界最長の歴史を誇り、世界中で深い敬意を向けられる日本の皇室。そして、国内においても国民の皇室への尊敬の念は尽きません。菊の御紋章が象徴的な皇室にまつわる「記念金貨」が気品に満ち溢れ、コレクションアイテムとしての価値が上がる本質的な所以は、まさにその「想い」にあるのではないでしょうか。

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演

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