2021年開催 東京オリンピック!金メダルの価値ってどんな感じ?

2021/08/06

コロナ禍のなか、無観客として1年延期で開催された「東京2020五輪」。オリンピックといえば、出場選手にとって最高の栄誉でもある「金メダル」を連想される方も多いはずです。ただ、オリンピックの金メダルがいったい貴金属として、どのぐらいの価値があるかはあまり知られていません。今回はそんな「金メダルの価値」について深掘りしたいと思います。
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オリンピックメダルの由来

世界中で感染が蔓延した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で、本来2020年に開催されるはずだった「2020年東京オリンピック競技大会」は開催が延期となり、2021年に賛否はあるものの無観客による開催に至りました。
世界最大級のスポーツの祭典「オリンピック」といえば、日々鍛錬を積み重ね代表の切符を手にした各国選手にとっての目標でもある、表彰式の晴れ舞台。そして、表彰式の象徴こそがメダル授与であり、その最高位が「金メダル」になります。
とはいえ、なぜ最高位のメダルが金色なのか、また貴金属としての金(GOLD)を素材として用いているのであればどのくらいの値打ちなのか、気になるところです。今回はそんな「金メダル」の価値についてお話させていただきます。

まずは、オリンピックの歴史やどのような経緯でメダル授与が生まれたのか、少し触れてみたいと思います。
私たちが「オリンピック(五輪)」と呼ぶ世界的スポーツの祭典は、別名「近代オリンピック」と言い、19世紀になり古代ギリシアにて行われていた古代オリンピックを元に復興させたものと言われています。
現在は、夏季大会と冬季大会の各大会が4年に1度行われていますが、1896年の第1回大会であるギリシャ・アテネ大会から、1920年のベルギー・アントワープ大会までは、夏季と冬季が分かれていませんでした。1924年になり、夏季大会としてフランス・パリ大会、初の冬季大会としてフランス・シャモニー・モンブラン大会に分かれての開催になりました。ちなみに、2024年に開催される予定の夏季・パリ大会は、同じ開催都市における100周年節目の大会となります。

また、現在の表彰式におけるメダル授与の序列は、競技の1位「金メダル」、2位「銀メダル」、3位「銅メダル」となっていますが、第1回ギリシャ・アテネ大会では、資金不足もあり優勝者には銀メダルとオリーブの花輪が授与されたそうです。現在のスタイルになるのは、1904年の第3回大会のアメリカ・セントルイス大会からでしたが、当初は首から掛けるものではなく、胸にリボンとともにピンで留めたものでした。
そして、メダルのデザインについても各大会でデザインが異なっていましたが、夏季大会のメダルは、1928年のオランダ・アムステルダム大会以降、メダルの片面に近代オリンピック発祥のスタジアム「パナシナイコスタジアム」に立つギリシア神話の勝利の女神「ニーケ」が描かれたデザインが採用され、現在まで続いています。
冬季大会においては、各開催都市において構成されるオリンピック競技大会組織委員会によって採択された、文化的要素および美的要素をデザインに反映させることが慣習として続いています。
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オリンピック「金メダル」の貴金属としての値打ちは

それでは、オリンピックメダルの最高位がなぜ「金」なのか。それは資源としての希少価値の序列が反映されたものであり、実際の相場においても1グラムの銅に対し、銀は約100倍、金は約数千倍の価格になります(時期により多少の変動はあります)。
ただ、オリンピックメダルの大きさや重さがそのまま相場の価値と同等なのかと言われれば、そうとは限りません。実は、近代オリンピックにおける各メダルには「オリンピック憲章」にて規格が定められており、2003年度までは、国際オリンピック委員会(IOC)によって、大きさ・厚さなどの範囲も細かく規定されていました。
2003年度版「オリンピック憲章 規則70付属細則」によると、メダルの大きさは少なくとも直径60ミリ・厚さ3ミリで、金メダルと銀メダルについては、その大半を純度92.5%以上の銀(スターリングシルバー等)で製造し、金メダルにおいては6グラム以上の金メッキを施したものと定められていました。
2004年度版以降の憲章からは、「メダルと賞状の仕様とデザインは、国際オリンピック委員会(IOC)に事前に提出し、承認を得なければならない。」という主旨のみが残され、実際に金メダルの大きさも、2012年のロンドン大会では直径85ミリ・厚さ7ミリ、2016年のリオデジャネイロ大会では直径85ミリ・厚さ8ミリと、2003年以前の大会とは変わってきています。
ではなぜ「金メダル」を金メッキではなく、純金(24金・K24)のみで製造しないのか、その理由は競技種目も増えたため、開催国によっての経済的な不利が無いようにとの配慮にあると言われています。ちなみに、1912年のスウェーデン・ストックホルム大会までは純金の金メダルが使われていたそうです。
もし、近年に開催された大会の金メダルを純金で製造した場合、デザイン意匠料を含まず貴金属として現時点の相場(2021年7月時点)で計算すると、2012年ロンドン大会は400グラムですので約280万円程度、2016年リオデジャネイロ大会は500グラムですので約350万円程度となります。また、リオ大会は306種目あり1種目一人授与として単純計算しても、金メダルの原材料だけで10億円以上もの予算が必要となります。そこから団体競技の人数分やパラリンピックの大会分、デザイン費・加工制作費を足すと、とてつもない数字となるでしょう。
そのため、各大会とも金メダルの大きさは変わっても、銀をベース素材としておおよそ6グラム以上の金をメッキしたものが一般的です。事実、2012年のロンドン大会を例に挙げると、金メダルの主な成分は、金6グラム・銀370グラム・銅24グラム、という成分割合でした。

では、実際6グラム以上の金メッキが施された「金メダル」の貴金属としての値打ちはどのくらいかと言いますと、1つ400グラムから500グラムを想定すると、おおよそ1つ数万円程度となります。
ちなみに、東京2020オリンピックの金メダル仕様は、直径85ミリ・厚さ最小部分7.7ミリ最大部分12.1ミリ、重さ約556グラム、純銀に6グラム以上の金メッキといった仕様となりますので、貴金属のみの値打ちは成分割合にもよりますが、現時点の相場(2021年7月時点)で計算すると、おおよそ1つ9万円台後半の価格といったところでしょう。もし、これが純金であれば1つ約380万円程度の価格は優に超えると思われます。
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東京2020大会と金(GOLD)

2020オリンピック・パラリンピック東京大会は、メダルに必要な金・銀・銅合わせて約5000個分の原材料となる金属類を、「都市鉱山」と呼ばれる家庭に眠る要らなくなったパソコンや携帯電話などの小型家電から抽出し、リサイクル金属を活用してメダルを製作する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を実施、その必要な金属量を100%回収することができたそうです。最終的に確保された金属量は、金が約32キログラム、銀が約3500キログラム、銅が約2200キログラムでした。鉱山で1グラムの金を採取するのに必要な鉱石は1トン以上と言われているため、約32キログラムの金を集めるのに使われるエネルギーを鑑みると、もはや世界の潮流でもある「脱炭素・カーボンニュートラル」「サスティナブル」といった環境問題に配慮した取り組みは、今後の大会への模範になると言えるでしょう。
ちなみに、リサイクル金属でメダルを作った前例は他の大会でもありましたが、国民が参加し全国各地から集めたリサイクル金属をもとにメダルを作る取り組みは初めての試みになります。
また環境省も、3R(レジ袋など無駄なゴミを出さない「リデュース」、原型が残っているモノを使う「リユース」、資源に戻して製品をつくる「リサイクル」)を推進しており、新たに「アップサイクル(捨てられるはずのものを別の新しい製品に生まれ変わらせる)」にも力を入れています。実際、東京2020大会の表彰式に使われる全ての表彰台は、ペットボトルなど不要なプラスチックをアップサイクルすることで作られています。

ふたたび金メダルに話を戻しますと、一般の方々にとってオリンピックの金メダルは、出場選手やその関係者でなければ身近に感じることはできないでしょう。しかし、私たちにとっても身近にオリンピックに因んだ金(GOLD)を感じることができるアイテムが存在します。それは、オリンピック表彰用のメダルを製造している同じ造幣局によって発行される、「記念金貨(記念メダル・記念硬貨・記念コイン・記念貨幣とも呼ぶ)」です。記念金貨は、国の大きな行事を記念して発行されることが多く、天皇陛下の御在位を記念したものから、スポーツにまつわるものまで存在します。
過去におけるスポーツ行事を記念した金貨の発行は、「長野オリンピック冬季競技大会記念10000円金貨幣」「2002 FIFAワールドカップ記念10000円金貨幣」「ラグビーワールドカップ2019日本大会記念貨幣」などで、発行枚数が限定されていることから資産価値も高く人気があります。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においても金貨は、「流鏑馬」と「心技体」(平成30年発行)、「勝利(野見宿禰像)」と「栄光(ギリシャの女神像)」と「心技体」(令和元年発行)、「聖火ランナー」と「国立競技場」と「心技体」(令和2年発行)が製造されており、オリンピックファンにとっては垂涎の的と言えるでしょう。

最後に、近年は米中貿易摩擦やコロナ禍における経済不安から、「有事の金」とも呼ばれる金の相場は高騰し高値で推移し続けており、投資目的による需要の多さから2020年においては鉱山に次ぐ主な供給源として、金のリサイクル量が急増しているという報告が、世界的な金市場開発組織であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)から発表されました。また、金価格が高止まりしているため金を売る個人も増えており、リサイクルによる金の供給増加も相まって、今後市場に溢れるであろう金の価値にも影響を及ぼしかねません。
リサイクルによる金(GOLD)で作られた東京2020大会の金メダル。それでも選手にとって「金メダルの価値」は相場価格では測りきれない重みがあるのでしょう。

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演

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