クリスタルガラスってなに?

2018/05/16

クリスタルガラスと言われてみなさんは何を頭に思い浮かべますか?広義に捉えても、ジュエリーはじめとしたアクセサリー、シャンデリアなどの装飾品、食器、美術品や工芸品など様々です。この度はそんなクリスタルガラスについてお話ししたいと思います。

クリスタルガラスとは

クリスタルガラスと言われて、一般のガラスと何が違うのか?
中には、クリスタルガラス=スワロフスキーと思い浮かべてしまう方もおられるのではないでしょうか?

そもそもクリスタルの意味は、水晶やそれを含む鉱物の結晶を指し、クリスタルガラスは「クリスタルのように光り輝く、透明度の高い高品質なガラス」の呼称になります。また、そのようなガラスを通称として「クリスタル」と呼ぶこともあります。
ガラスの種類には、現在も窓ガラスやガラス瓶など広く利用されている「ソーダガラス」があり、一般的にクリスタルガラスと呼ばれる主なガラスは「カリガラス」と「鉛ガラス」になります。
「カリガラス」は、木の灰をアルカリ成分の原料として添加して作るガラスで、有名なものとしてボヘミア(現:チェコ共和国)のボヘミアガラスがあります。
「鉛ガラス」は、ガラスの主成分に酸化鉛等を添加して作るガラスです。鉛が含まれることで、一般のガラスよりも屈折率や透明度が高くなります。

また、日本では日本硝子製品工業会によりクリスタルガラスが定義されており
(以下、日本硝子製品工業会HPより抜粋)、
酸化鉛を主要成分として含むガラス、および酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウムなどを主要成分として含むガラスで、高い透明度を有し、かつ屈折率(nD)が1.520以上で光沢のある美しい輝き、および澄んだ音色と特徴付けられています。
このうち、
・酸化鉛を30%以上含み密度が3.00g/cm3以上のものを「フルレッドクリスタルガラス」
・酸化鉛を24%以上含み密度が2.90g/cm3以上のものを「レッドクリスタルガラス」
・酸化鉛含有量が24%未満で酸化鉛単独もしくは酸化カリウム、酸化バリウム、酸化亜鉛と併せて10%以上含むものを「セミレッドクリスタルガラス」
・酸化鉛を含まず酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウム、酸化亜鉛などを単独でまたは共に10%以上含むものを、主要成分を基にそれぞれ「カリクリスタルガラス」、「バリウムクリスタルガラス」、「チタンクリスタルガラス」
と定義しています。

ブランドやメーカーによっては、酸化鉛の含有率が最大35%になるものも存在しますが、含有率が多くなるほどガラスの製造技術が高度になります。

クリスタルガラスの特徴

クリスタルガラスは、一般的なソーダガラスと比較すると

長所として
・透明度が高い
・屈折率が高い
・加工しやすい

短所として
・軟らかい
・重い

などの点が挙げられます。

透明度と屈折率に関しては、前段でも紹介した通り酸化鉛の含有率が多くなるほど、その性質は高まります。
加工のしやすさと軟かさについては、製造工程で酸化鉛を加えることでガラスの溶解温度が低く抑えられことが理由です。
また、重いことについては、酸化鉛の比重が大きいほど、ガラス自体の打音が澄んだ音色と余韻を持つためで、クリスタルガラスのワイングラスやウイスキーグラスなど多く作られるのもこの特徴が活かされているからです。

熟練の技術により生まれるクリスタルガラスは、水晶のような高い透明度と、光沢のある美しい輝き、澄んだ音色が最大の特徴となります。

クリスタルガラスの有名ブランド

バカラ (Baccarat)

バカラ(Baccarat)ロックグラスの画像

フランスの高級クリスタルブランドであるバカラ (Baccarat)は、1764年にフランス国王ルイ15世から、ロレーヌ地方バカラ村にガラス工場設立が許可されたことから始まります。酸化鉛を30%含む高品質なクリスタルガラスを製造販売するブランドとして、世界の王室や皇族からも愛されています。
また、品質基準も厳選されており、製造されたガラスの3~4割は流通されず破棄されてしまうそうです。日本でいう人間国宝のような、フランス文化において高度な技術を持つ職人に授与されるM.O.F(国家最優秀職人賞)を50人以上輩出していることからも、その技術の高さが裏付けられます。
商品は、食器、花瓶、オブジェ、シャンデリアをはじめ、ジュエリーやアクセサリーなども手がけ、主なシリーズとして「アルクール」や「ベガ」などが有名です。

ラリック(Lalique)

フランスのハンドメイドクリスタルブランドとして、1918年に創業したラリック(Lalique)は、宝飾・ガラス工芸デザイナーとして活躍したルネ・ラリックによって設立されました。創業当初の商品は、ガラス工芸作家の作品としての色合いが強く、現在も芸術品としての評価が高く、日本でも神奈川県の箱根にある「箱根ラリック美術館」にその作品群が展示されています。
また、ラリックのガラス工芸品には、アール・ヌーヴォー期に好まれた花や樹木、動物、昆虫、女神像などをモチーフとしたものが多く、独自のガラス艶消し技法で内側からこもった光を反射させ、独特の陰影と世界観を表現しています。
現在も香水瓶、花瓶、置物、アクセサリー、食器やグラスなど芸術性の高い商品を多く取り扱っています。

スワロフスキー(SWAROVSKI)

スワロフスキー(SWAROVSKI)-クリスタルフィギュア -ディズニー-プルート画像

フオーストリアの老舗クリスタルブランドであるスワロフスキー(SWAROVSKI)は1895年に創業しました。言わずと知れた、ラインストーンやファンシーストーンの代名詞である「スワロフスキー・クリスタル」は世界中から今も愛され続けています。
その「スワロフスキー・クリスタル」がダイアモンドと並び称される理由は、1世紀以上培った製造技術と経験にあります。酸化鉛の含有率においては最低が32%以上という高基準値を設け、カッティング技術においても世界最高水準の技術を持っています。そのため、スワロフスキーのクリスタルは、高透明度であり、ダイヤモンドに近い虹色の反射加減と輝きが生まれるそうです。

そのほかにも、
アメリカのティファニー(Tiffany & Co.)や日本のカガミクリスタルなどが、今もクリスタルガラスの製品販売しているブランド・メーカーとして知られています。