「金(GOLD)」の価格が高騰する理由
2019/10/01近頃、世界の情勢不安や貿易摩擦・金融緩和などの影響から世界の経済が混沌とし、「有事の金」とも呼ばれる「金(GOLD)」の相場が上がり続けています。今回はそんな高騰する金の価格事情について触れてみたいと思います。
「金」の市場と相場について
世界共通の価値であり、有事の際の安全資産とも言われる「金(GOLD)」。世界の金市場で取引される際の値段である「相場」は、為替などと同じように休むことなく常に変動しています。
金の相場は、国際日付変更線に近い国から時差を追って各市場に受け継がれ、世界の主な取引市場を順に並べるとシドニー、東京、香港、シンガポール、チューリッヒ、パリ、ロンドン、ニューヨークとなります。
その中で、金現物の価格「現物取引」を決定するのがロンドン市場で、毎日午前と午後の2回、値決めが行われています。また、価格の決まっていない未来の金を取引する「先物取引」は、ニューヨーク市場で決められています。特にニューヨーク市場で公開された相場は、国際経済の指標として用いられることがあります。
金は通常、貴金属や宝石の計量に使用される単位「トロイオンス(日本での記号はoz)」、もしくは「グラム」で取引単位が決められていて、国際的には1トロイオンスあたりの米ドル建で取り引きされており、日本国内での店頭表示価格は、その米ドル建の価格をもとに、1グラムあたりの円建価格に換算され公開されています
投資としての「金」と株価との関係性
さて、皆さんが資産形成をする上で代表的な金融商品の投資というと、株式・債券・投資信託・FXなどが思い当たるのではないでしょうか。
利益が少ない金(GOLD)の投資はあくまで脇役で、「もうける」というよりは「ためておく」というイメージが一般的です。
しかし、金の投資にもちゃんとした魅力があります。一番の魅力は、金自体に価値があり、他の投資と違い価値がゼロになることはないということです。
個人が多く手掛ける金の投資には、代表的なものとして「金地金」「金貨」「純金積立」「金上場投資信託(ETF)」があります。
「金地金」はインゴット(金塊)などを購入して自身で保管するもので、「金貨」も世界各国の政府が発行する投資用の金貨を購入し自身で保管します。「純金積立」は貴金属商・商社・銀行などから毎月決まった金額の金を購入し、保管は運営会社で行います。「金上場投資信託(ETF)」は金地金そのものを有価証券化して証券取引所に上場したもので、証券会社や銀行などに投資の運用をお任せするもので、現物の金は引き出せないことが多いですが、少額からの投資が可能になります。
では、資産運用面では投資のリスク分散やヘッジ効果から、主役の株と組み合わせて金を保有する人が多い傾向ですが、どういうことなのでしょうか。
それは一般的に金の相場と株価には、逆相関性があると言われているからです。つまり簡単に言えば、株価が上がれば金の相場は下がり、株価が下がれば金の相場が上がるということです。
近年でも、中国が貿易のために通貨を操作しているとして「為替操作国」に認定するとアメリカが発表したことで、金融市場はリスク回避一色に振れ、世界同時株安となり金の相場が高騰しました。
ただ、金の投資は持っていても利子や配当を生まないため、いざという時や相場が急騰し利益確定した際に売却する、という投資家が多い傾向にあります。
「金」の価格が上昇している理由
では、金価格の上昇が止まらない理由はどこにあるのでしょう。
一つに、金(GOLD)は世界経済のリスクが高まると価格が上昇する傾向がある資産だからです。最近では、前述で述べた米中貿易摩擦やホルムズ海峡の緊張・香港のデモなど、また国内に目を向けると、増税や公的年金に頼った老後の生活不安など、未知への不安が理由であり、この経済の不透明感こそが金利は生まないが、価値がゼロにならない安全資産である金を買い求める人が増え、価格を上昇させているのです。
また、個人投資だけでなく世界各国の中央銀行もまた、世界の基軸通貨である米ドルに対する信頼の揺らぎから、万が一のリスクに備えて大量の金を積極的に購入・保有をし始めています。これは、経済主要国の国債の利回りが超低位で推移しているため、金利は生まないが価値はゼロにならない金を購入する方が安全と見ているからです。
このため、全世界の金の需要量が供給量を上回り、価格の高騰が続いているのです。
最後に、国内の金価格が1980年以来、約40年ぶりの高値(2019年9月時点)とあって、価格が高いうちに利益確定を狙って売りを出す動きが相次いでいるというメディアの報道にもあります。
また、2019年10月からの消費増税を控え、消費税が8%のときに購入した金を10%になってから売却すれば、その差が得になるという理由から、そこを売却のタイミングと考える人もいるようです。
世界経済に不透明感が増す中、安全資産としての金の価格から、ますます目が離せません。