新型コロナウイルス流行による金(GOLD)の高騰について

2020/04/10

ここ数年、世界が「有事の金」とも呼ばれる安全資産「金(GOLD)」の買いに殺到し、金相場が上昇しています。その背景には、2019年の米中貿易摩擦や世界的な気候変動による自然災害の数々、2020年早々には、アメリカとイランの緊張関係と言った先行きの見えない不安定要素にあると言われています。そして、新型コロナウイルスの流行。今回はそんな戦後最大の危機と金相場の関係についてお話したいと思います。
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金相場のキホンと高騰する理由

近年、米中貿易摩擦やアメリカとイランの緊張関係、地球規模の気候変動による自然災害など、世界は不安定な情勢が続いています。
そして、2019年11月に中国の武漢で最初の発生が確認され、翌2020年に入ると急激に世界中に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界情勢に深刻なダメージを与え続けています。
このパンデミック(感染症や伝染病の世界的な大流行)は、世界各国で「戦後最大の危機」と警鐘を鳴らしたことから、世界共通の価値であり、有事の際の安全資産とも言われる「金(GOLD)」に注目が集まり、2019年から続く「金相場」の高騰は、さらなる高値で推移しています。

ここで金相場や金投資について簡単に説明しておきますと、金相場とは、世界の金市場で取引される際の値段であり、国際日付変更線に近い国から時差を追って、シドニー、東京、香港、シンガポール、チューリッヒ、パリ、ロンドン、ニューヨークなど各市場に受け継がれ、為替などと同じように休むことなく常に変動しています。
その中で、ロンドン市場は毎日午前と午後の2回、金現物の価格「現物取引」の値決めが行われ、ニューヨーク市場では国際経済の指標としても用いられる、価格の決まっていない未来の金を取引する「先物取引」が決められています。

金は通常、貴金属や宝石の計量に使用される単位「トロイオンス(日本での記号はoz)」、もしくは「グラム」で取引単位が決められていて、国際的には1トロイオンスあたりの米ドル建で取り引きされており、日本国内での店頭表示価格は、その米ドル建の価格をもとに、1グラムあたりの円建価格に換算され公開されています。

また、個人が多く手掛ける金の投資には、インゴット(金塊)などの「金地金」や世界各国の政府が発行する投資用の「金貨」を購入して自身で保管するもの、貴金属商・商社・銀行などの運営会社から毎月決まった金額の金を購入し保管してもらう「純金積立」、金地金そのものを有価証券化して証券取引所に上場し証券会社や銀行などに投資の運用をお任せする「金上場投資信託(ETF)」などが、代表的なものとしてあります。

では、そんな毎日動いている金の相場が高騰する理由は、一般的にはどんな要因があげられるでしょう。

様々な要因はありますが、大きく二つ挙げられます。
一つに、アメリカや日本などの経済主要国における世界的な超低金利策の代替投資先として、利息はつかないが価値がゼロにならない金の価値を相対的に高めていると言われています。

そしてもう一つに、世界経済のリスクや景気懸念と、地政学的リスクが高まると金価格が高騰すると言われています。
地政学的リスクとは、世界のある特定の地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりによって、その地域の経済や世界経済全体の先行きを不透明にするリスクを指します。

つまり、前者は経済主要国の超低金利政策によりマイナス金利になる国家も増えており、金利は生まないが価値がマイナスにはならないこと、後者では株式などの金融商品のように価値がゼロにならないため、情勢不安などによる有事の際の備えにはリスクヘッジが効くこと、などの理由で金に注目が集まり高騰するのです。

各国の中央銀行や国家機関、投資家にとって金の投資とは、株式・債券などと違い配当金や利息は生まないため、有事の際の安全資産としてあくまでも「もうける」というよりは「ためておく」というスタンスが強い傾向にあります。

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「有事の金」と「コロナショック」

世界情勢や経済の先行きが不透明になったときに安全資産として買われ価格が高騰する「有事の金」ですが、過去の有事を振り返っても、1973年に勃発した第四次中東戦争では、日本は原油が高騰し第一次オイルショックが発生し経済的打撃を受け、翌年の1974年には世界的に金価格が急騰しました。
その後も、1979年の旧ソ連軍によるアフガニスタン侵攻、1990年の湾岸戦争、2001年のアメリカ同時多発テロ、2003年のイラク戦争などの有事において、いずれも世界的に金価格が急騰しています。

近年では、2019年には米中貿易摩擦により、日本国内の円建て価格は約40年ぶりの高値をつけ、2020年に入るとアメリカとイランの緊張関係が悪化し、「第三次世界大戦」につながりかねないとの懸念から、「有事」に備える資産防衛として買いが集中し金価格が高騰しました。

また近年、地球温暖化などによる気候変動の影響を受け、地球規模の大規模な自然災害が多発し世界経済にも多大な影響が出始めると、投資家を中心に安全資産である金が高騰する傾向にあります。
そして、2019年11月に中国の武漢から広まり、2020年にはパンデミック(感染症や伝染病の世界的な大流行)となった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界経済に深刻な影響を及ぼし始め、自然災害同様に投資家の不安心理が強まるなか「有事の金買い」が続き、金市場は一時的な下落はあるものの記録的な高値で推移しています(2020年3月時点)。

一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響でニューヨーク株式市場は、世界的株価大暴落となった「ブラックマンデー」や「リーマン・ショック」を彷彿とさせる大幅下落、いわゆる「コロナショック」により、金融市場を荒らし深刻なダメージを受けています。
また、このコロナショックは、ウイルスの世界的な感染が広がるとともに、不安の高まりから投資家が手元に現金を置くために、一時的に金までもが換金売りされ金価格が下落し、「有事の下落」とも言われました。

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「安全資産」と呼ばれてきた金の今後

前述の通り、新型コロナウイルス感染拡大を戦争に例え世界各国の緊迫感が増すなか世界同時株安が起こり、投資家に大きな不安や懸念が生じたことで、2008年のリーマン・ショック時と同じような、現金確保を目的とした「金のパニック売り」と言った動きが見られました。

このように、「安全資産」の金までもが投げ売りされる事態でしたが、その後の金相場は短期的に下げる場面はあっても、一貫して上昇傾向を維持しています(2020年3月時点)。
一般的に金相場と株価には、逆相関性があると言われており、株価が下がれば金の相場が上がるという原理が働いています。
コロナショックのケースであれば、市場の混乱を来したアメリカ株価の大幅下落により、一過性の金の換金売りは起こりはしましたが、また「安全資産」が買われ始め金価格が上昇したことになります。

ただ興味深いのは、2000年以降に世界的に流行した感染症で、2002年のSARS、2012年のMERS、2013年の鳥インフルエンザ(H7N9亜型)などにおいては、一時的に株式市場にダメージを与えたものの、感染症の有効な治療法が見出されないまま、その後の株価は上昇傾向に戻ったことです。
つまり通常のセオリー通りであれば、今後中長期的に見れば新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かうと、株価が上昇し始め金相場が下がり始めるという傾向が考えられるということです。

専門家いわく、今後コロナウイルス感染症拡大の影響で世界経済の減速停滞が強まれば、金融市場も今まで以上にパニックに陥ることも考えられると警鐘を鳴らしています。
アメリカの大手金融会社ゴールドマン・サックスが金を「最後の安全資産」と呼んでいましたが、この先行きの見えない経済活動の停滞で世界景気の不透明さが残る限り、市場の不安定な動きとともに人々の心理が悪化し、「安全資産」といえども投げ売りされる状況がまた起こるかもしれません。

この度のコロナショックは我々に「大事な教え」を説いてくれたような気もしています。

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