2023年「金相場」の変動と今後の予測に関して(後編)

2023/11/08


前編では、これまでの過去の出来事を振り返りながら「金相場」についてお話しさせて頂きましたが、後編では短期的・長期的といった両者の視点からの予測と、「金相場」においてこれからチェックしておきたいポイントについて解説させて頂きます。

世界情勢を見据えた「金相場」の短期的予測

2023年、世界は原油や天然ガスの価格高騰、ウクライナ情勢による穀物の価格上昇などコスト増を背景に世界的なインフレが続いており、中国バブル崩壊危機や北朝鮮問題・台湾有事と言った先行きの見えない不確定要素もあり、「金相場」上昇に拍車がかかりました。同年8月には国内小売価格1グラムあたりの金相場が史上初めて1万円台を超え、その後も歴史的な高騰が続きました。同年9月後半以降は下降傾向に落ち着きましたが、10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を境に、情勢の緊迫化から再び最高値を更新しています。また国内に目を向けてみると、円安ドル高傾向が依然続き、今後の金相場の動向は円相場の動向にも左右される可能性があり、将来の振れ幅が注目されています。

前編でも触れたように、金相場の上昇要因として「需要が増え供給が減少」「世界経済・金融リスクの懸念」「米ドルに対する信用不安」「日本など経済主要国における低金利政策」「情勢不安による地政学的リスク」など不確実性の高まりが影響を及ぼしております。
このようなことを総合的に鑑みても専門家や市場関係者も予測は難しいのが事実です。とはいえ金の価格上昇は世界経済の不安心理を反映しているため、短期的な展望で見ればウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢の悪化する事態になれば上昇が予想されます。一方で、世界の経済活動が短期的に再び活発化して金相場が急落するリスクが無いとは言い切れませんが、短期的スパンで予測すると可能性は低いと見立てる方が多数派ではないでしょうか。
金相場フリー画像

安全資産と呼ばれてきた「金(GOLD)」の長期予測

結論から先に言いますと長期的な展望で「金相場」を見通した場合、上昇と下落を繰り返しながらも上昇トレンドは続くと考えられています。その要因は様々な理由が絡み合っておりますが、ここでいくつか挙げておきます。
一つに、国際経済の指標として用いられるニューヨーク市場において、ここ数年先物の金相場が堅調に推移している事です。アメリカの中央銀行にあたるFRBが、物価上昇抑制のために利上げ政策を2022年から続けているにも関わらず、普通ならば逆風となるはずの金利がつかない「金(GOLD)」に買いが集まっていることがその所以です。また世界情勢への不安が高まりから、基軸通貨である米ドルや経済主要国の自国通貨の信用が低下し、その不信感から各国の中央銀行による世界共通の安全資産「金(GOLD)」に買いが進んでいることも、その原因とも言えるでしょう。一方国内は依然として円安傾向にあり、円建ての小売価格おいてもニューヨーク市場のドル建て金相場が堅調に推移しているため、今後も上昇トレンドは続くと言われています。
そしてもう一つに、「金(GOLD)」の供給に関する限界と新興国の経済成長による需要増加などが、長期的に金相場の上昇を後押しすると考えられています。前編でも述べたように2019年に金の産出量が11年ぶりの減少となったことや、金の埋蔵量があと10数年で枯渇すると言われる「ピークゴールド説」など供給に限界があること、そしてインドや中国といった人口が多い新興国の経済成長に伴い産業分野における金需要が増加していることが、将来的に見ても相場上昇の影響を与える要因として挙げられています。
最後の一つ、地政学的リスクにおける安全資産「金(GOLD)」の過去の相場傾向として、情勢不安が起こる度に一時的に上昇し、しばらくすると一定期間留まり、また軍事的緊張が高まると上昇するといった流れの繰り返しでした。つまり世界情勢への不安がある程度解消しない限り上昇トレンドは続く可能性は高いと言えます。
そのほかにも様々な方による見解の違いなどございますが、世界共通の安全資産は過去20年間年々上昇傾向にあり、将来的にも緩やかな上昇が見込まれており、弊社においても投資目的で保有されていたインゴット等を売りに来る方が増える一方で、購入目的としてのお問い合わせも多く、国内のマーケットにおいてもそのニーズの高さから高値の状況はしばらく続くと実感しております。
世界地図と上昇バナー

今後の「金相場」でチェックするポイント

基本的に近年の「金相場」の上昇は、利益は多く見込めないがゼロにはならない「金(GOLD)」が投資対象として魅力的だからと言えるでしょう。では「金(GOLD)」を購入・売却・保有する上で、今後チェックしておくべきポイントはどこか、ここからお話しさせて頂きます。

「需要と供給のバランス」

金(GOLD)の相場は需要と供給のバランスによって変動します。需要が供給を上回れば相場は上昇し、逆に需要が供給を下回れば相場は下落します。金の需要は主に宝飾品や産業用途、そして投資需要にあります。一方、金の供給は鉱山生産とリサイクルが主なものです。金の産出量は年々減少しており、将来的に枯渇する可能性も指摘されています。そのため、需要と供給のバランスが今後重要な金相場の変動要因のポイントと言われています。

「世界経済・金融のリスク」

インフレが進むと通貨価値が低下し、金(GOLD)がインフレ対策としてリスク回避を果たすと言われています。また、中国やインドといった新興国の経済成長に伴う金の需要の増加や世界経済・金融の混乱が金相場に影響することも知られています。このような要因から世界経済の動向を常に知っておくことが大切になります。

「米ドルに対する信用」

世界の金相場の基本通貨単位は米ドルであり、米ドルの価値や信用が上昇すると金相場は下落し、逆に米ドルの価値や信用が下落すると金相場が上昇します。アメリカ・トランプ政権下では自国主義の考えが高まり、米中貿易摩擦・中東問題・コロナウイルス感染症の世界的な感染蔓延・ロシアによるウクライナ侵攻などアメリカにも強く影響を及ぼす世界情勢への不安から米ドルも信用が低下し、金相場を押し上げています。今後はアメリカの政治にも目を向けてみましょう。

「経済主要国における金利政策」

一般に各国の金利政策における金利が低い、つまり「通貨が溢れている(価値が低い)」と世界共通の安全資産「金(GOLD)」以外の魅力的な投資先が見当たらず金相場が上昇する傾向にあります。現在もアメリカ以外の経済主要国における金利政策は低金利が続いています。日本おいてはマイナス金利政策が続いていましたが、2023年10月31日に日銀はこれまで0.5%程度を長期金利の上限の目処としていましたが1%に引き上げました。また翌日にはアメリカFRBもインフレは収束していないが、政策金利の誘導目標を5.25~5.5%に据え置くと決め利上げを見送る判断をしました。このようにアメリカの金融引き締め(利上げ)が終わりに近づいているという見方が専門家の間で示されており、金相場を予測する上で重要な視点となります。

「地政学的リスク」

地政学的リスクは特定地域の政治的・軍事的な問題が地域および世界経済に影響を与えるリスクを指し、金相場にも影響します。2023年時点でのロシアウクライナ問題や台湾有事などの軍事的緊張は金価格を高値で推移させており、北朝鮮や中東、中国の軍事動向も目が離せません。過去には北朝鮮の安定化が金相場を下落させた例があり、逆にイスラエル・パレスチナ情勢の緊迫化により金の需要が高まり、国内の金の小売価格が最高値を更新しました。金相場の展望において地政学的リスクもまた重要な要素が多数含まれています。
そのほかにも地球温暖化問題、食糧資源枯渇問題など色々と世界的な不安要素はあります。

最後に金相場は常に変動しており、最適な売却のタイミングを見極めるためにはポイントを押さえた定期的な確認や分析が必要です。金(GOLD)の需要は高く、金相場もしばらく高値を維持する見通しです。過去の歴史的な事例からも、金(GOLD)の価値は安定していることが示唆されています。
弊社ホームページ内にもご好評いただいている毎日更新の「レート表や相場推移グラフ」を掲載しております。ご興味のある方はぜひご覧ください。

Written by 上田勝太

上田 勝太

ゴールドプラザ 主任鑑定士
1985年生まれ 鑑定士歴15年
月次の最高買取金額10億円 各ニュースに出演

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