2022年 ダイヤモンド国内相場の上昇について
2022/07/13昨今、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた世界のダイヤモンド(Diamond)市場が復調傾向となり、日本国内の相場おいては2022年に入り急上昇しております。今回はそんなダイヤモンド(Diamond)国内相場上昇の背景について解説します。
国内外におけるダイヤモンド(Diamond)市場の近況
ここ数年のコロナ禍において、金相場は世界的に高騰を続けていましたが、ダイヤモンド(Diamond)相場においては、ロックダウンによる外出禁止や鉱山の閉鎖などの影響を受け、需要と供給という両側面から急速にしぼみ世界的に下落傾向にありました。しかし、ワクチン接種率や行動制限の緩和が進み需要も膨らんだことで、2021年の終盤より回復基調を強めています。
一方、2022年に入り国内におけるダイヤモンド(Diamond)相場は急上昇をしており、その背景にはロシアによるウクライナ侵攻を発端とする経済制裁、世界的なインフレ傾向に加え約20年ぶり円安ドル高水準など複数の要因が重なった結果と言われています。今回は、そんなダイヤモンド(Diamond)国内相場の急上昇要因について詳しく解説させていただきます。
最初にダイヤモンド(Diamond)相場の国際市場における変動要因には、大きく二つが挙げられます。一つに「世界におけるダイヤモンドの需要と供給のバランス」、そしてもう一つに「外国為替相場による価格変動」です。これらは、今回の国内相場急上昇の要因にも密接に関わっています。
まずは「世界におけるダイヤモンドの需要と供給のバランス」ですが、需要と供給の基本原理として市場における需要量が多ければ価格(相場)は上昇し、逆に供給量が多ければ価格(相場)は下がりますが、ダイヤモンドの国際相場の場合、そのバランスが激しく変動しないようコントロールしていると言われており、その相場に影響を及ぼす企業こそがグループ全体として世界の約35%のダイヤモンドの原石を分類・評価・販売する世界最大手「デビアス(De Beers)」になります。
そんなダイヤモンド国際相場ですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響で大打撃を受け、当時のデビアス(De Beers)のCEOも報道機関に対し「これまでの生涯で経験したことがない」と語るほど、需要と供給のコントロールが難しい状況にあったことが伺えます。しかし、2021年の後半より需要が回復するのに伴い、デビアス(De Beers)はこの好機を生かし、2022年1月にダイヤモンド原石の大幅な値上げを実施します。そして、同年2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を行なったことで、ダイヤモンド相場はさらに上昇することになります。なぜならば、ロシアは天然ダイヤモンド原石の世界有数の産出国であり、情勢悪化による供給網の混乱や抑制といった懸念が相場を引き上げたからです。
ロシアのダイヤモンド(Diamond)と経済制裁
ロシアは天然資源の宝庫であり、原油・天然ガス・レアメタル(希少金属)などは世界的に高いシェアを持っています。特に自動車の排ガス浄化触媒、ジュエリー用プラチナの割り金、銀歯(鋳造用金銀パラジウム合金)、半導体用メッキなどに利用される貴金属のパラジウムは、ロシアが世界産出量の約40%を占めています。
そして本題のダイヤモンド(Diamond)においても、世界のダイヤモンド原石の約30%がロシア産になります。さらに、そのうちの約90%をロシアのダイヤ採掘企業である「アルロサ」が採掘していると言われています。この「アルロサ」という企業は、株式の33%をロシア政府が保有しており、実質的に国営企業のような側面を持ち、ロシア政府の外貨獲得手段となっています。
2022年3月にアメリカのバイデン大統領は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシア産ダイヤモンドの輸入禁止を発表し、その後ロシア軍の潜水艦開発に資金を提供していると噂される「アルロサ」に対しても追加制裁を科し、軍事資金源に打撃を与える狙いとして政策を敢行しました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領はベルギー連邦議会でのオンラインによる演説で、「ロシアとのダイヤモンド取引より、平和の方が価値がある」と訴え、世界有数のダイヤモンド市場であるベルギー・アントワープで、ロシア産ダイヤモンドの取引を断ち切るよう説きました。
一方、日本おいては現在(2022年7月時点)ロシア産ダイヤモンドの輸入は禁じてはいませんが、今後さらに情勢が悪化することで高い関税を課したり、輸入禁止に至るケースも考えられます。
逆に先進国によるロシアへの経済制裁に対し、ロシアの報復措置により供給遮断が起こった場合には、「世界におけるダイヤモンドの需要と供給のバランス」が大きく崩れていくため、相場高騰の危惧は高まるでしょう。
2022年に入りダイヤモンドの国内相場が上昇した要因も、業界内でこのような懸念が広まっていることが一つに挙げられます。
円安とインフレが相場上昇を後押し
前述でダイヤモンド(Diamond)相場変動要因のもう一つに、「外国為替相場による価格変動」を挙げさせていただきましたが、ダイヤモンドは産出国以外はほぼすべてが輸入になるため、外国為替相場による取引になります。したがって、日本国内において言えば、円高になればダイヤモンドは安くなり、円安になれば高くなります。
昨今、世界経済がコロナウイルスによるパンデミックからまだ完全に回復していない中で、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を行なったことで世界的にインフレが進行し、いち早くアメリカは金融緩和から引き締めに舵を切り、日本は引き続き金融緩和を続けたことで、2022年4月外国為替の対米ドル円相場は1ドル=126円台に下落し、約20年ぶりの安値となり、その後も円安ドル高基調が続いています。それゆえに国内市場においては、基調通貨である対米ドルのダイヤモンド価格(相場)は上昇傾向に至りました。
さらに、ウクライナ情勢不安の長期化や中国におけるロックダウンなどの影響でサプライチェーン(供給連鎖)の混乱により、世界的に物価は高騰し続けており、その影響を受け世界的にみても日本国内においてもダイヤモンド(Diamond)を取り扱うジュエリーメーカー・ブランドの価格改定や値上げが相次いでいます。
つまり、2022年に入りダイヤモンド(Diamond)国内相場が急上昇した背景には、前段の要因を踏まえ記録的な円安と世界的なインフレ(物価高騰)が同時に重なり、後押しした結果と言えるではないでしょうか。
最後に、先行きの見えない世界経済においては何が起こるかわかりませんが、ダイヤモンド(Diamond)の国内相場がいつまでも上昇を続けるとは考えにくく、今後世界的にインフレの影響を受けて需要も下がる傾向にあるとの見解もアナリストの間では示されています。もしダイヤモンドの売却をご検討の方は、需要が高まっているうちに買取ってもらうことをおすすめします。
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