【金相場】2024年下半期の変動と2025年の展望

2025/02/04

2024年、金(ゴールド)の相場は乱高下を繰り返しつつも基調は上昇傾向で、市場の構造変化により史上最高値を何度も更新しました。今回は2024年下半期の金価格変動を中心に振り返りながら、2025年における金相場の展望についてお話しさせていただきます。

2024年上半期における金相場の値動き

“有事の金”と呼ばれる世界共通の安全資産「金(ゴールド)」。2024年、世界の市場で取引される金の値段である「金相場」は、現物取引・先物取引ともに史上最高値更新が続き世間を賑わせました。もちろん日本においても国内小売価格や買取り価格が歴史的な高騰を記録し、改めて現物資産としての「金(ゴールド)」に注目が集まっております。このたびは2024年の金相場の値動きを振り返りながら、2025年における展望を解説させていただきます。

まずは2024年上半期における金相場の値動きですが、2023年8月に1グラムあたりの国内小売価格が初めて1万円台となり、翌24年4月に入ると国内小売価格は1万3千円台を越え、5月には5営業日連続で史上最高値を更新するなど、歴史的高騰が続きました。

基本的に金相場は、国際情勢が不安定なときほど相場は上がり、安定するほど下がる傾向にあり、2024年上半期の世界における金相場急騰も、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化・イスラエルによる中東情勢の悪化・台湾有事の懸念などを発端とする「地政学的リスク」、基軸通貨米ドルを担うアメリカを中心とした「世界的なインフレへの懸念」や「米ドル・米国債に対する信用の低下」、経済主要国における金融政策に対する「世界経済・金融のリスク回避」、「需要と供給のバランス崩壊」などが挙げられ、これら要因が複合的に重なった結果と考えられています。

また2024年上半期の歴史的な相場高騰は、従来のセオリーに反した値動きをしていることも特徴的でした。

2022年3月から米連邦準備理事会(FRB)は利上げに舵を切りアメリカの金利は上昇しており、従来の教科書的なセオリーで言えば基軸通貨である米ドルの金利が高い時には、利息の付かない金(ゴールド)の相場は人気がなく下がる傾向にあります。しかし、アメリカの金利が高い(上がっている)のにも関わらず金相場が上昇し、しかも金上場投資信託(ETF)においては投資家により金(ゴールド)が売られており、高値を維持する従来の理屈では説明しにくい「ミステリアスラリー」と呼ばれる値動きを見せたのも初めてでした。その背景には投資家以外に“金利と関係なく金(ゴールド)を買っている者がいる”ということで、一つにBRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)を中心とした新興国の中央銀行による金保有増加(金購入)が挙げられます。金(ゴールド)の調査研究や世界各国の公的機関へ支援等の活動を行う非営利組織「ワールドゴールドカウンシル」よると、2004年〜2024年における各国中央銀行の金保有増加量トップ5は、1位ロシア・2位中国・3位トルコ・4位インド・5位ポーランドと発表されており、ここ数年においてはロシアと中国の2カ国が突出しています。

そしてもう一つに、中国やインドといった新興国の国民による金(ゴールド)の購入が加熱したことが挙げられます。その要因として基軸通貨の米ドル離れが新興国を中心に広がり、特に中国においては株や不動産などバブルが弾け市況が悪化し、投資対象が限られているため金(ゴールド)に投資が集中しました。中国やインドはそれぞれ14億人規模の人口を抱えており、その国民たちが各々買い始めれば、金(ゴールド)が足りなくなり相場が上昇するのは当然の結果と言えるでしょう。

2024年上半期における日本国内の金相場もまた、国際価格よりも値上がりが大きく、その要因として34年ぶりの円安水準と、対ドル高のダブル効果で円建の金価格が大きく上昇しました。

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2024年下半期における金相場の値動きとその背景

2024年下半期の金相場は、乱高下を繰り返しながらも基調は上昇傾向で、安全資産としての金(ゴールド)への需要は、世界情勢や経済状況、金融政策、そして為替レートなど、多岐にわたる要因によって大きく左右されました。特に、中東情勢の緊迫化やアメリカ大統領選、円安などが金相場に大きな影響を与えたことが分かります。

24年9月米連邦準備理事会(FRB)は4年半ぶりの利下げを実施し、11月にも追加利下げを行い金利が下がることで利息のつかない金(ゴールド)への魅力が増し買いが進み、日本国内においてはドル円為替の影響を受け乱高下を繰り返しながらも、下半期を通して円安傾向が続いたことが金相場高騰を維持する要因となりました。

また24年10月には、イスラエルとハマスの衝突が激化し中東情勢が一気に緊迫化しており、地政学的リスクから“有事の金買い”として金(ゴールド)への需要が急増し、金相場は大幅に上昇しました。日本においても10月31日に国内小売価格が1グラム1万5000円台を突破し、過去最高値を更新しております。

最高値更新直後、11月5日にはアメリカ大統領選でトランプ氏が勝利し、金相場は一転して下落基調に転じます。その要因にはトランプ氏の経済政策に対する期待感から、リスク資産への投資が増加し、安全資産としての金(ゴールド)への投資妙味が薄れ需要が減少したと考えられます。またアメリカがウクライナへの長距離ミサイル供与が決まり、ロシアの報復攻撃が激化したことで11月中旬以降一時的に急騰しますが、日本時間の11月27日にバイデン大統領がイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派ヒズボラとの13カ月にわたる戦闘の停戦合意が間近であると発表し、その直後合意が発効されたことで中東情勢の終息にめどが見え始め金相場が下落傾向となりました。さらに中国においては高騰する金(ゴールド)の現物需要の減退が目立ち始め、国際相場より割安に転じ一時的な金相場の下押し要因となりました。

12月に入ると金相場は再び上昇傾向の動きを見せ始め、その背景としてアメリカCIA長官も参加しイスラエルとイスラム組織ハマスのガザ地区での停戦に向けた協議が本格化するとみられていたものの、イスラエル軍はガザ地区での攻撃を依然続けており先行きの見えない不透明感から、金価格を押し上げる要因となりました。そのほかにも世界的なインフレ懸念・トランプ氏の大統領就任による政策不安・金(ゴールド)の需給バランスなど、様々な要因が複合的に作用した結果としてリスク回避姿勢を強め、金相場は上昇傾向のまま2025年を迎えました。

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2025年における金相場の展望

2025年の金相場は、第2次トランプ政権の政策とアメリカの金利動向・中東やウクライナ情勢などの地政学的リスク、一方国内においては石破内閣の金融政策など複数の要因によって変動するとみられています。ここからは多角的な視点で短期的・中長期的な展望を解説させていただきます。

まずは第2次トランプ政権の政策とアメリカの金利動向についてですが、その政策が金相場を大きく左右すると考えられています。1月20日のアメリカ大統領就任式を受け、21日時点で関税の引き上げを即時運用しないことが判明し下落をしていた金相場は、一転22日にEUと中国に10%の関税引き上げを課すことを表明し急騰。また就任直後から大統領令を連発するなど、突発的な情報発信が市場を悩ませる結果となっています。金相場に影響を及ぼすトランプ大統領による政策については、「米経済と円高」「米中関係」「世界情勢の安定化」といった大きく3つのポイントが想定でき、これらの情報を複合的に分析することで値動きの判断材料となるでしょう。

「米経済と円高」は、円安を嫌うトランプ大統領の政策が米経済を刺激し、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が進展すれば、米ドル安・円高が進む可能性があります。世界の金価格はドル建てで取引されるため、ドル安は金相場の下落要因となります。とはいえ1月30日FRBは4会合ぶりに利下げを見送り、対する大統領はインフレ再燃を警戒し利下げ圧力強めており、まだまだ米経済の金利政策の見通しは読めません。

「米中関係」は、中国を始めメキシコ・カナダへの関税引き上げを明言しているトランプ大統領が中国との対立姿勢を強めれば、世界経済の不確実性が高まり、安全資産としての金需要が増加し、金相場は上昇する可能性があります。

「世界情勢の安定化」は、大統領が中東やウクライナ情勢などの安定化に尽力すれば、地政学的リスクが緩和され、安全資産としての金需要が減少し、金相場は大きく下落する可能性があります。そのほかにも、トランプ大統領は大幅な減税政策を掲げており、財政赤字の拡大や米ドルの信用低下が金相場を押し上げる要因となりかねません。

また、中東やウクライナ情勢などの地政学的リスクについては、前述でも述べたとおり終息が進めば金相場は大幅下落、情勢悪化で高騰する可能性を秘めています。ウクライナ情勢で言えば、2024年12月に就任前のトランプ氏が早期収拾に向け、ロシア・プーチン大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領と一緒に停戦を協議する意向を示しました。中東情勢では、1月18日にイスラエル政府がイスラム組織ハマスと19日より6週間の一時的な停戦を承認したと正式に発表しています。

一方で日本国内に目を向けると、2024年10月に就任後初めて金融政策正常化に前向きだとみられていた石破首相が日銀の植田総裁と面会し、“追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない”との認識を示しましたが、2025年1月24日の日銀・金融政策決定会合において政策金利の追加引き上げが決まりました。このまま石破内閣の利上げ方針が続けば、円高が進み円建ての金相場も下落する可能性があります。

上記の要因を総合的に考慮すると2025年の金相場は、短期的には乱高下を繰り返すなど下落傾向にあるものの、中長期的には上昇傾向に向かう可能性が考えられます。ただし、これらの予測はあくまで現時点での情報に基づいたものであり、今後の世界情勢や経済状況、金融政策の変更などによって大きく変動する要因を含んでいます。実際に2025年1月の金相場は堅調に上昇し続けており、31日にはアメリカの政策リスクへの警戒感から金の需要が高まり、国内外で最高値を更新し、国内小売価格は1グラム1万5133円となりました。

世界の市場で日々取引され変動する金相場(金価格)の予測には、変動する要因についての知識を深めることが大切です。世界経済のリスクを敏感にキャッチし、広い視野での分析とリスク管理が金相場の展望を探る最大のカギとなるでしょう。ぜひゴールドプラザの金相場推移チャートを参考にお役立てください。