2023年大幅下落!ダイヤモンド相場に関して
2023/12/29宝石の代名詞であり、今やジュエリーには欠かせない宝石の王様「ダイヤモンド(Diamond)」。そんなダイヤモンドの需要が2023年に入り急速に落ち込み、相場が大幅下落しました。今回はダイヤモンド(Diamond)の評価基準や市場の仕組み、下降傾向にある要因や将来について解説させて頂きます。
ダイヤモンド(Diamond)の価値
「ティファニー(TIFFANY & Co.)」「ハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)」「ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」「グラフ(GRAFF)」といったハイブランドのジュエリーやエンゲージリングなど宝石の代名詞として、また宝飾用以外にも工業・医療機器・半導体などにも重宝されてきた「ダイヤモンド(Diamond)」。その種類は鉱山から採掘される“天然ダイヤモンド”と人工的に作られた“人工ダイヤモンド”に大別されており、近年は合成ダイヤモンドとも呼ばれる人工ダイヤモンドの台頭で、天然ダイヤモンドの相場が左右され将来の振れ幅に注目が集まっております。ここ数年、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた世界のダイヤモンド市場が感染の収束化により復調傾向となりましたが、2023年に入り相場が大幅に下落しました。今回はそんなダイヤモンド(Diamond)の評価基準や市場原理、下降傾向にある要因や将来についてお話しさせて頂きます。
まず最初に、宝飾用を中心に天然ダイヤモンド(Diamond)には評価基準が存在しており、その基準により価値が決まっております。地球の約150km以上の地下に存在するマントル内において超高温・高圧のマグマの中で炭素が結晶化した天然ダイヤモンドの原石はラフダイヤモンド(Rough Diamond)と呼び、宝飾用として使われる原石は「ソーヤブル」「メイカブル」「ニアジェム(ニアージェム)」「メレダイヤモンド(「メレーダイヤモンド)」等にランク付けされ、専門業者による研磨やカットなどが施されまだ指輪などの枠や台にはまっていない状態「ルース(裸石)」として流通し、そこで初めて米国宝石学会(GIA)が考案した「品質評価国際基準」により宝石としての品質評価がなされています。
品質評価国際基準とは、大きく分けてカラット(Carat)・カラー(Color)・クラリティ(Clarity)・カット(Cat)の頭文字をとった「4C」のことを指し、これらの項目において総合的な評価が下され鑑定書(グレーディングレポート)が発行されています。
カラット(Carat)とは、ダイヤモンドの重さであり単位は「ct」で表し、数値が高いほど希少で高価です。カラー(Color)は、ダイヤモンドの色でカラーダイヤモンド以外では、無色透明なほど価値が高いとされています。クラリティ(Clarity)は、ダイヤモンドの透明度でキズ・内包物・ひび割れ等を判断します。カット(Cut)は、カッティングされたダイヤモンドの形状や仕上がりのグレードによる輝きを表し、上から「Excellent」「Very Good」「Good」「Fair」「Poor」の順に等級が設けられております。また輝きかたが変わるカットの種類も多岐に渡ります。
このような基準に則り相場が決まり、世界中のダイヤモンド市場において日々取引が行われます。また中古ダイヤモンドの買取価格なども、この価値基準をベースに査定しているケースも多いため非常に重要な指標となります。
デビアス(De Beers)による価格調整とは
“ダイヤモンドは永遠の輝き(A Diamond is Forever)”のキャッチコピーや“婚約指輪は給料の3ヶ月分”といったマーケティング戦略で有名なデビアス(De Beers)は、イギリスに本社を置き、採掘・加工・流通・卸売などを一手に担うダイヤモンド総合商社として知られています。1880年南アフリカの英国領で産声をあげたデビアス(De Beers)は、合併や販売網の確立などを経て一時はダイヤモンド生産の世界シェア約90%を握る企業へと成長を遂げます。また世界各国には同社グループの販売部門から原石を直接購入する権利が持てる「サイトホルダー」といった制度を設け、その顔ぶれには名だたるジュエリーブランドが名を連ねております。そんなデビアス(De Beers)グループですが、ダイヤモンド(Diamond)の国際市場においても大きな影響を与えてきました。
金(GOLD)やプラチナ等と同様に、国際市場において日々変動する価格で取引される天然ダイヤモンド(Diamond)。その相場変動の要因として大きく二つ「世界におけるダイヤモンドの需要と供給のバランス」と「外国為替相場による価格変動」が挙げられます。後者の外国為替については世界各国の経済政策や地政学的なリスク等が影響を及ぼしますが、需要と供給のバランスについては、長年世界のマーケットに多大な影響力を持ってきたデビアス(De Beers)により調整が行われ、価格をコントロールしてきました。このことは独占的と批判を浴びることもありますが、言い換えれば価格調整することで相場が激しく変動せず、ダイヤモンド(Diamond)の価値や品質を守っていることにも繋がります。
そんなデビアス(De Beers)ですが、依然1カラット以上の市場で主要なシェアを占めてはおりますが、近年同社の手が及ばないロシア・オーストラリア・カナダ・中国などにおいて天然ダイヤモンドの採掘が多く行われていることから、コントロールがうまく出来ず価格の急落や需要の軟化により販売不振に陥り、業界での影響力にも翳りが見えてきました。さらに技術発展により品質の良い「合成(人口)ダイヤモンド」が台頭してきたことで、天然ダイヤモンドの需要もまた下がってきており、デビアス(De Beers)が市場原理に屈しつつあります。
合成ダイヤモンドの台頭
人工的に作られたダイヤモンド(Diamond)である「合成ダイヤモンド」。ラボグロウンダイヤモンド ・ラボラトリーグロウンダイヤモンド・ラボダイヤモンドなどと呼ばれることもあり、世界的に注目されているダイヤモンドです。ガラスやプラスチック等を使った模造ダイヤモンドとは違い、合成ダイヤモンドは、天然のダイヤモンドと同様に本質的に同じ化学組成や結晶構造、物理的特性を持っています。100年以上の試行錯誤の研究を積み重ね炭素を人工的に合成する、有名な高温高圧(HPHT)法や化学気相蒸着(CVD)法を開発。従来は産業用途での需要が大きかったこともあり注目されていませんでしたが、技術の発展に伴い品質の向上や宝石として10カラット以上の大粒ダイヤモンドの量産も可能となり、ますます評価が高まりつつあります。
メリットは、なんといっても短期的な生成・加工のしやすさ・手頃なコストで、ここ数年は不純物を含まない合成ダイヤモンドの方が透明度も高く、美しさと言った面でも天然に迫る輝きを持ち合わせており、米国宝石学会(GIA)においても容易に判別はできないレベルまできています。天然ダイヤモンドとの違いは“希少価値”のみで、2018年には合成ダイヤモンドに否定的であったデビアス(De Beers)が合成ダイヤモンドジュエリーを販売するブランド「Lightbox(ライトボックス)」の設立を発表するなど、天然ダイヤモンドの需要やニーズは下がる一方で、品質の良い「合成(人口)ダイヤモンド」市場が確立され台頭しはじめています。
2023年ダイヤモンド相場の下落
デビアス(De Beers)による需要と供給をコントロールの恩恵で、近年天然ダイヤモンドの相場は比較的変動が少なく安定基調でした。2020年に世界的に感染が蔓延した新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に急落はしたものの、2021年の終盤には回復傾向となり、2022年には世界のダイヤモンド原石の約30%を占めるロシアがウクライナへの侵攻を開始し、西側諸国を中心に経済制裁を発動しロシア産ダイヤモンドの輸入禁止。その影響から天然ダイヤモンドの需要が高まり、世界的なインフレ傾向も相まって相場は急上昇しました。
しかし2023年に入り、ダイヤモンド相場の下落は止まらない状況となり、その原因として複数のマイナス要因を多くの専門家が挙げています。
その一つに、天然資源のコスト増を背景にした世界的なインフレなど先行きの見えない世界経済の行方や物価高。もう一つにロシア・ウクライナ、イスラエル・パレスチナ情勢の緊迫化よる地政学的リスクが、贅沢品への支出を圧迫させダイヤモンド市場を混乱させていると考えられております。
そして最大の要因として、前述の合成ダイヤモンド台頭による市場におけるダイヤモンド供給過剰が挙げられております。アフターコロナとして消費者の購買意欲も上昇傾向にあるものの、天然のダイヤモンドは贅沢品としてのイメージが払拭できず、逆に短期的に安価で生成できる合成ダイヤモンドが、人気・品質・供給面においても需要が勝り、供給過剰と相まって天然の相場が必然的に下落しております。
デビアス(De Beers)が2023年10月に発表した売上は前年同月比61%減と、確実に合成ダイヤモンドのシェアが浸透したことは明らかです。
2024年以降のダイヤモンド相場は、技術向上により新規参入の障壁が低い普及品「合成ダイヤモンド」のさらなる勢力拡大か、希少な高級品として「天然ダイヤモンド」の恒久的な価値の維持やブランディングにより、下落か上昇の振れ幅が変わってくると思われます。
最後に、今回ご紹介できなかったダイヤモンドについて、内容別に詳しく解説したコラムを色々とご用意しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。なお弊社ではお持ちのダイヤモンドの4C評価を入力することで簡単に買取相場の目安がわかる「ダイヤモンドの買取相場(レート)」もございますので、お気軽にご活用ください。