合成ダイヤモンドはどう作られるのか?
2018/11/15
天然のダイヤモンドに対し、人工的に作られたダイヤモンドである「合成ダイヤモンド」。その製造方法や用途、ジュエリーとしての特徴について取り上げたいと思います
合成ダイヤモンドの製法
「合成ダイヤモンド」とは、「人工ダイヤモンド」とも呼ばれ、人口的に生成されたダイヤモンドです。
「天然ダイヤモンド」は、地球内部で数百万年かけて生成されるのに対し、「合成ダイヤモンド」は大きさや製法によって違いがありますが、おおよそ数週間の短期間で生成することができます。
また、長年の研究開発により、天然のダイヤモンドとは結晶構造・物理的特性等においても、ほぼ同じものが生成できるようになりました。
かつては、工業用や医療用途としての利用が多かった「合成ダイヤモンド」ですが、近年では宝石としての評価も高く、ダイヤモンド商社大手のデビアス(De Beers)社が合成ダイヤモンド専門のジュエリーブランドを立ち上げるなど、マーケットも広がりを見せています。
それでは、その「合成ダイヤモンド」はどうやって製造されるのかご存知でしょうか?
まず始めに「合成ダイヤモンド」の「合成」についてですが、諸元素から化合物を作ることを「合成」と呼び、端的に言いますとダイヤモンドの元である炭素を人工的に合成することで、化合物である人口のダイヤモンドが生成されます。
現在多く取り入れられている、主な製造手段である合成方法は、高温高圧(HPHT)法や化学気相蒸着(CVD)法が挙げられます。
高温高圧(HPHT)法は、天然ダイヤモンドが地球内部で生成される環境を再現した装置で合成される方法です。地中深くの非常に高い温度と圧力によって炭素がダイヤモンドとして結晶化する現象を人工的に作り出しています。アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が、1955年に初めて再現性の高い「合成ダイヤモンド」の生成に成功した際に、用いられていた方法がこの高温高圧(HPHT)法によるものだと言われています。
化学気相蒸着(CVD)法は、天然のダイヤモンドが生成する過程とは全く異なった方法で合成します。高温で低圧の環境を作り出す真空の装置を利用し、メタンガスなどの炭素を主成分とするガスを分解し、種結晶となるダイヤモンドの結晶板に炭素原子を蒸着させる合成方法です。一度の作業工程で結晶板を複数並べて蒸着できるため、量産に向いていると言われています。1950年代に旧ソ連とイギリスの合同研究によりスタートし、1968年に本格的な合成の成功を果たします。
その他にも、爆発による圧力で合成する方法や、超音波による合成方法などがありますが、商業的な生産までには至っていません。
合成ダイヤモンドの主な用途
前述のゼネラル・エレクトリック(GE)社が「合成ダイヤモンド」の商業化に成功して以来、合成方法も進化し様々な用途で利用されるダイヤモンドが開発されています。
「工作・切削」用途としてのダイヤモンド
ダイヤモンドが地球上で最も硬い物質であることを利用し、ダイヤモンド工具としてドリルやカッターの刃・研磨用の砥石などに用いられ、産業用途や医療用途向けに生産されています。また、「切断・切削・研磨・摩減」などの目的により、単結晶や多結晶のダイヤモンドが使い分けられており、結晶が割れた鋭利な面(切れ刃)が単体なものを単結晶(一つの結晶)、多数の方向に複数存在するものを多結晶(小さい結晶の集合体)といい、ダイヤモンドの微粒子を金属に付着して作られた刃は多結晶になります。
「放熱・吸熱」効果を利用したダイヤモンド
熱伝導率が高いが、電気はわずかしか通さないダイヤモンドの性質を利用し、半導体などの精密機器のヒートシンク(放熱・吸熱する装置)に利用されています。熱伝導率が高く電気も通す金属の熱を吸収し、電気を通さず放熱するダイヤモンドは、半導体などのオーバーヒートによる損傷を防ぐ効果があるため多く用いられています。
「宝石」としての合成ダイヤモンド
1970年に、GE社により宝石用のカット(ファセットカット)が可能な大きさの「合成ダイヤモンド」の生成が成功したのをきっかけに、その後デビアス(De Beers)社が、より高品質の「合成ダイヤモンド」の生成に成功します。1980年代に入ると、「合成ダイヤモンド」は宝石としての量産が可能になり、年々その合成技術が向上することで、性質上「天然ダイヤモンド」と同じものの生成が可能となりました。その分、天然のものとの鑑識も難しくなり、「天然ダイヤモンド」を取り扱う市場関係者たちにより、分析する機械の開発や判別する手段(鑑定書の発行)などの対策がなされています。
そのほかにもダイヤモンドの特性を活かし、エレクトロニクスの分野や光学的利用も注目されています。
ジュエリーとしての合成ダイヤモンド
「合成ダイヤモンド」の品質は、用途や合成方法によって変わってきますが、一般的には「天然ダイヤモンド」と比べ結晶構造の違いが品質を左右します。多結晶のものは、輝きの吸収と散乱があるため、宝石用には向いていません。
また、天然のダイヤモンドの場合「ブルーダイヤモンド」「ピンクダイヤモンド」のように色がつくと、その希少性の高さから高額になりますが、「合成ダイヤモンド」の場合は、あらゆる色の生成が人工的に可能となるため、価格面においても大幅に下がります。
「クラリティ(透明度)」や「大きさ」についても天然のものと同じ物理的及び光学的特性を持っているため、合成過程において生成された際に、低いものから高いもの、大きいものや小さいものと様々ものが生まれます。
そのほか、模造ダイヤモンドやキュービックジルコニアといった名前を良く聞きますが、こちらについては「合成ダイヤモンド」とは全くの別物になります。
模造ダイヤモンドは、名前の通りガラスやプラスチック等で作られた模造品であり、「ダイヤモンドに近い」とされるキュービックジルコニアは「天然ダイヤモンド」を模倣した人造石・模造石で、天然や合成のダイヤモンドと同じ化学組成や結晶構造、物理的特性は有していません。
最後に、採取することが難しい「天然ダイヤモンド」と人工的に作られた「合成ダイヤモンド」両者の違いは、希少性に裏付けられた価値にあります。この違いを理解してこそ、「合成ダイヤモンド」や「人工ダイヤモンド」がいかに秀逸なものであるかを実感できるのではないでしょうか。